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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一章 氷の国のロマン姫
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キャプテン・ピグレット

イクオが前回できるようになった事まとめ。

・魔力の値を調べる事ができるようになった。

・攻撃を予測する未来予知じみた事ができるようになった。


物語序盤に手に入れる能力じゃないね。どんどんこれからもイクオは強くなります。

前回のあらすじ!!

イクオは次なる成長の為【集中】のスキルを手に入れようと走り出す。すると路地裏で転がっていた豚に襲いかかられたのだ!

前回のあらすじ終わり!!



  ー路地裏ー



「今度は貴様かぁ!ワシを快楽へと導いてくれるご主人はぁ!!」


「ヒィッ!寄るな気持ち悪い!!」


「うふんっ!!」


「罵倒したら一々悦ぶのやめてくれませんかねぇえ!!」



VS謎の豚野郎 キャプテン・ピグレット


こいつは特に速い訳では無いがとにかくしつこい。イクオはかれこれ一時間以上走り続けているが、相手は疲れるような素振りを見せずひたすら追いかけてくる。しかも・・・・・


「ブヒィーヒヒヒヒヒ!!」


「うわぁああ高速でジグザグしながら追いかけてくるのやめろぉ!キモイ ウザイ キモイィイイ!!」


この豚、積極的にキモくなるように動くのだ。町中をゴキブリの如くカサカサ這い回り追ってくるその姿はまごうことなき変態。


「もっとじゃ!!もっとワシに罵倒を

もっと もっと も っ と も っ と ぉ お(ねっとりした重低音)


キモイ。ただひたすらにキモイ。思いもよらぬ精神攻撃にイクオは泣きたくなる。トロ顔の豚が罵倒しろとカサカサ這い寄ってくるのがこんなに生理的に受け付けれないとはイクオは予想外だった。



「しっつけぇんだよこの豚野郎が!そんなに痛いのが好きならこれでも食らってろ!   ふんぬ!!」


背後から飛びかかってきたピグレットに飛び後ろ回し蹴りをぶちかます。


「ブキィィイ!」


「ぉぉおおお代わりはいかがですかぁぁああ!!?」


蹴った足にピグレットを引っ掛けて前方に吹き飛ばす。イクオはそのまま【跳躍】で相手に追いつき蹴りを連発。


「オラオラオラオラオラオラオラァーァアア!!!」


「ぶぎっ ぶぎょ ぶぐっ ぶげっ ぶひ 」


蹴りを一発ずついれる事にピグレットは一々反応する。イクオの攻撃力は低いがそれでも細かい連撃を繰り返せば相手を動かせなくする事が可能だ。しかし、


「ぶひっ ぶふん ぶひひ ぶふひひひ!! 」


次第に笑い声が混じってきて、どんどん余裕を取り戻しているようだ。それだけでは無い。こちらに向かって手を伸ばしじわりじわりと近づいてくるのだ。


(なんだコイツ、ダメージへの適応能力が高すぎる!連撃はダメだ。すぐ対応されて反撃を誘ってしまう)


「もっと来いやぁぁああ♡!!」


「来んなバカヤロォォオオオ!!!」


イクオ、渾身のかかと落としが炸裂。まともに食らったピグレットは地面に叩きつけられる。否、意図的に叩きつけられるようにバウンドし、そのままスーパーボールさながら再び弾ける。イクオの連打をくぐり抜け、顎に向かってダイブ!!


「ほぐぇっ!!」


くらりとよろめく。しかし隙を見せている暇はない。再び走り出し逃げ回る。着地したあとのピグレットもまた走り出し、鬼ごっこ続行。


(いや、続行させねぇ。俺ァ腹たってきてんだよ!これ以上好きにさせるか!!)


イクオのストレスは限界値に達していた。度重なるストーキングがイクオには一種のトラウマとして記憶にこびり付いているからだ。嫌な記憶をさっきから思い出し続けているイクオは、怒りの堪忍袋の緒をついにぶっちぎった。


「てんめぇぇえええ・・・・・」


走行中に小さくクルリと跳躍し、ガリガリと地面をすってブレーキをかける。ピタリと止まると再びピグレットの方へ走り出す。


「えー加減に・・・・せいやぁぁあぁあああ!!!」


イクオ得意の【跳躍】を利用した飛び蹴り。うねうね動き回っていたら避けれたものを、ピグレットは当然のように蹴りの範囲に飛び込んでいく。


hit!


「ブギュウゥ・・・・・」


「まだまだぁあ!!」



空中で跳躍するように相手を蹴り上げると相手は空高くぶっ飛ぶ。跳躍し、今地面に足がついていないイクオはピグレットに向かって渾身の力で跳躍した。


「ふっ  飛べぇえ!!」


「ブヒイイィイィィ・・ィィ・・・ィ・・・・・ィ」



  キラーン



空高くぶっ飛んだ豚野郎をしっかり確認した後、イクオは一息ついた。


「ふぅ 酷い目に会った。まさかあんな生物が存在したとは・・・。異世界は広い」


(厄介な相手だった。機動力にギャグ時空が混じってたのは真面目にヤバかったし、スタミナと根性のえげつなさが異次元の領域だ。攻撃力がそこまでなかったのが幸いか・・・・・おや?)


自分の立っている道路のタイルに例の豚の豚足が引っ付いていた。その前足はピグレットを吹っ飛ばしたはるか彼方に繋がっていたのだ。


「おいおいマジかよ・・・・・」



「・・・・・・ィ・・・・・・ィィ・・・ィ・・・」



(あの豚野郎、どこまで身体が延びるんだ!ゴムみたいにはね回るとは思ってたがまさかゴムみたいに身体が延びるとは!)



「ィ・・・・ィイ・・・イィイ・・ィィイィイイイ」



ピグレットの執念は凄まじい。奴は故郷である西の大陸でも名を馳せた厄介者だった。一度ターゲットに決めた者を地の果てまで追いかけて、罵倒や非難の言葉を相手の限界が来るまで聞こうとする異常者。相手が疲れ果ててへたり込むまで奴のストーキングは続く。



「ィィイィィイイィイイイィイイイイイ!!!!!」


「くっそ!もう視認できる距離に・・・。もっ発返り討ちに・・・・・」


(いや・・・ダメだな。こいつ、明らかに罵倒やダメージを食らう度に動きのキレが良くなっている。下手に刺激を与え続けると手がつけられなくなる!)


「【演算魔法】!!」


イクオはピグレットの魔力量を測定にかかる。演算魔法で魔力量を測定した際の値は全て目分量だ。しかし精度が高く、レベルが上がる度にその測れる数値は細かくなっていく。


「【不思議(マジック・オ) の天秤(ペレーション)】!!!」


(平常時魔力量  8,500

 現在     12,000・・・)


「キモーイ!!!」


「ブヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」


(現在魔力量  12,200!!

間違いない!こいつは罵倒を受ける度強くなっている!返り討ちにしても強くなって帰ってくるだけだ!!)


「ならば!!【演算魔法 死を指す羅針盤アタック・プロジェクション】!!」


アンラック・ゲイズは相手の攻撃を予知する。レチタティーヴォ戦に比べ、計算する有余があるから前回より正確に割り出すことができるだろう。



「ブヒィイ!!!」


「そこだァ!!!」



まるまる太った豚が往来のど真ん中に激突。クレーターの如く道に穴を開けて煙を巻き上げる。破壊とともに起こされた風圧は凍てつく風となり住民たちに襲いかかる。辺りが騒然としている中、ピグレットはクレーターの数メートル先に着地した。



「・・・よく避けたのぅ。ワシの【弾ける情熱(パッション・ゴム)】は着弾した後に任意の方向に跳ねて追尾する。事前に避けてたら当たってたじゃろう」



瓦礫を掻き分けて中からイクオが少しよろめき咳き込みながら出てきた。


「うぐっ・・・耳がキーンってする。直前の直前まで待ちすぎたな。

俺が事前に避けることを狙ってるような感じがしておかしいなとは思ったんだ。バウンドしてからの二発目が本命だったってわけだ」


ピグレットが何か企んでいるのをイクオは魔力から感知。後は目線や魔力の微細な動き、そして相手のゴム質の身体からどんな攻撃が来るか予測。イクオは演算魔法の使い方を熟知した戦い方を身に付けてきていた。


「ブヒヒッ。途中から攻撃してきたから喧嘩するつもりでかかったがしてやられたわい。今回は引くかのう」


「・・・・・引いてくれんのか?助かる」


遊んでるつもりだったのかよ、と言いそうになったが面倒くさくなりそうなのでその言葉は飲み込んだ。出来ればちゃっちゃと帰って欲しいので刺激しないように対応する。


「また厄介になるかものう。何せ貴様の蹴り、見事じゃったからの。突く、貫くより押し出す事に特化した蹴りじゃった。押し出された先が壁じゃったらと思うとゾクゾクするわい。ブヒヒッ」


「ふーん、なるほど」


(俺は攻撃がてんでダメだからなー。このコメントは真面目に助かるな。押し出すか・・・。考えてみりゃあの蹴りは蹴るよりか跳ぶだからな。跳ぶ事を意識して蹴った方が俺の場合威力が出るわけだ)



  〜・・・〜



「っだーー!!ついてくんな!!」


「そう言うな。ヌシとともにスキルを探してやろうと言うとるのじゃ」


呼び方が貴様からヌシに変わっていた。


(まだついてくるか、この豚野郎め。変態枠はサラだけで充分だってのに!こいつの目的は旅することだから俺の旅についてくるんじゃないだろうな・・・)


イクオの予想は正しい。ピグレットはついてくる気満々だった。ピグレットの野生の勘が、「こやつについて行けば波乱万丈の旅になる」と言っていた。


ピグレットは平穏が苦手で苦難を良しとしていた。その点、イクオについて行くのはこれ以上に無い正解なのだ。イクオがこれからも世界の荒波に下衆な笑いをかましながら揉まれていく事は予測するに容易い。


  ー魔道具店ー


イクオがスキルスクロールを万引きした店だ。何事も無かったかのように働いているの店長と店員を見て、無かったことにしてくれたんだなと思いイクオは安心のため息をつく。


「んで?【集中】のスクロールはどれが良い奴なんだ?」


「待った 待ったぁ。ここは魔道具店じゃ。魔法スキルのスクロールが専門だから【集中】のスキル探しても良いもんないじゃろう」


とりあえずイクオとピグレットは手当り次第に【集中】と書いたスクロールを手に取っては並べてみる。さて、ここからがピグレット腕の見せどころだ。ピグレットは引っ張り出した大量のスクロールを良いヤツと悪いヤツに分別していく。


「これは使えん。これは使える。これは・・・」


「凄いスピードで見極めていくな。ホントに信用していいのか?」


あまりの手際の良さにイクオは少し疑う。何度もやってきたような手際だ。テキパキと仕事していくピグレットは少し考えて口を開く。


「・・・・・ワシは商人の男の手によって育てられた。その際に売っとったもんの中にスキルスクロールも含まれとる。そこは信用して欲しい。信用は商人の命じゃ」


少し歯切れの悪い言い出し方だった。旅先で相手の故郷の嫌な話を掘り下げるのは酷だ。イクオはそれ以上の詮索をやめた。


「まっ こんなとこじゃろう。思った以上に良いもんがあった。これなら他の店も回らずに済みそうじゃ」


ピグレットは三つのスクロールを最終的に選び抜いた。三つともイクオは聞いたことがない著者だった。しかし魔力探知で見てみるにどれも上等な物ばかりだ。どれもマニアックだが知る人ぞ知るファンがいる、と言ったような雰囲気だ。


「おヌシにオススメなのはこれじゃな。集中力が長時間続くタイプの強化がされる。これを鍛えれば長時間の戦闘も可能になるじゃろう」


「これは?」


「これは一点集中を強めるものじゃ。長時間持たんし、並列思考も下手になるが短時間の集中力なら一番強化が見込めるの」


「最後にこれ」


「集中力にさく物事を分散できるものじゃ。言わば並列思考が上手くなったり、状況確認しながら計算したり。まぁそんなとこじゃ」


(長時間集中 短時間超集中 並列集中 と言った感じか)


「無難に選ぶなら長時間だな」


「ま、そうなるの」


「だが 俺はあえてこれを選ぶぜ!!」


イクオが指さしたのは並列集中のスクロールだ。ピグレットは元々の目的を思い出し疑問を投げかける。


「集中力を持続させたいから来たのでは無いのか?」


「気が変わった。無難を選ぶのはポリシーに反する。俺は安全運転よりゴリ押し運転の方がロマンを感じんだ」


「大いに同感じゃな!!納得じゃわい!!」


「「買ったァ(盗んだ)!!!」」


やはりイクオとピグレットは意気投合してしまった。自ら死地に飛び込んで行くのが大好きなのはイクオもピグレットも一緒だ。その動力がロマンから来るのか苦しみから来るのかが唯一の違いだ。



【集中Lv1】


【集中力を一定時間強化する】



後日、アリアに感想を聞かせてもらったが「いいセンスね!」と一発OKされたそうですよ。

ですよね

アリア様は並列集中の著者を知っていたようです。王道な効果のスクロールは作らないけど、痒いところに手が届くようなスキルスクロールを作ってくれるから割とお世話になっているそうです。

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