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〜異世メン〜  作者: マルージ
第二章 誇りの風が贈る[前編]
56/74

裁判・・・?

投稿遅れて申し訳ないです。

失踪じゃないです。



「そういえばヨン。貴方のフルネームを聞いていませんでしたね」

「はい?」


ヨンは呆けたような声を出す。ヨンとはいい関係を築くことができた。アリアはどうせならフルネームで名前を覚えたかった。


「レン ヨンです」

「レン、へぇぇー」

『レン・・・レン・・・』


アリアはにっこりと笑っている。サラはその性に非常に聞き覚えがあるみたいだ。首をひねって何処で聞いた性だったか思い出そうとしている。

しかしただ一人、アヤメだけがその名前の正体を知っていた。



「・・・・・・レンって・・」



扉が勢いよく開いた。

いち早く気配を察知したアヤメは身を隠した。サラとヨンは完全に呆けていた。アリアは何の焦りもなく入室してきた男を待ち構えた。



「血濡れの怪物の娘はいるか?」



その男『レン ズァオス』

魔王四天王の末席にして、魔王を除けば東の大陸では実力の序列四位に位置する強者。怪力のインヤン、巧みのシェンマオとするならば、さしずめ頑強のズァオスと呼べるであろう。獣人族一の実力者にして華の民最強の盾。

そして・・・ヨンのお父ちゃんである。



   -・・・-



「済まないな『血濡れの娘』。ズァオスが一度は見てみたいと言ったものでな。此度は魔王四天王会議に呼ばせてもらった」

「その呼び方やめてくださいって何度言ったら・・・もういいです」


魔王四天王会議に呼び出されたアリア一行。サラは付き添い。ヨンは給仕の仕事に戻った。アヤメは正体がバレたらヤバいので別行動をとっている。

ズァオスはアリアの向かいに位置する席で腕を組んで静かにアリアを睨んでいた。


(コイツからはミヤガワ アヤメの匂いがする。貴様とアヤメが影でつながっている可能性がある以上、不安の種は取り除かなくては。獣人族の嗅覚を誤魔化せると思うなよ)


ズァオスはアリアの体に残ったアヤメの匂いを確かにかぎ取った。獣人族の嗅覚は鍛えば鍛えるほどよく鼻が利くようになる。獣人族一のズァオスであれば、これくらいの匂いをかぎ分けるのは造作もない。


(少しでもボロを出してみろ。喉を噛みちぎってやる・・・!)


警戒心丸出しのズァオスにアリアは苦笑する。まるで「ガルル」とでも唸っているかのような露骨な警戒。瞑想をしていた落ち着きのある華の民象が早速崩れそうなポーカーフェイスの下手さ。


(うーん・・・疑われてるなぁ。獣人族の嗅覚でバレたのかな?何とかして誤魔化さないと・・・)


顔には出さず思考を巡らせる。アリアはこれでも貴族間の内ゲバの中心にいた人物だ。こういったは腹の探り合いはできないわけではない。


「俺たちは転生者を追っている。貴様は転生者と行動を共にしているな?」

「してない。ただ会ったことはある」


ザワリと場の雰囲気がざわめきだす。周囲の警戒心が高まる。

ズァオスは思考する。目の前の娘についた匂いは紛れもなくアヤメ本人のモノ。匂いによりアリアを追い詰めようと思っていたが、疑われた経緯をアリアは既に感づいていた。


(フフフ。ヨンがこびり付けてくれた鼻水の匂いで阻害されているな?アヤメちゃんと滞在した時間の長さによるアヤメちゃんの匂いの濃さは、鼻水の匂いで邪魔されてるのよ!)


鼻水の匂いを戦略に持ち込むこの人。実はこの作品のヒロインなんです。


「会って何を話したというんだ?仮に言っていることが事実だとして、貴様と転生者が協力関係にない証拠にはならないぞ」

「交戦したわ(数週間前に)。取り逃がしたけど彼女には能力は封印することに成功したの」


あながち間違いではない。アヤメの恩寵スキルはイクオとアリアの手によって封印されている。多少の魔力リソースとして利用することはできるが、無条件即死の効果は現在使用できない状況にある。


(彼女か・・・なかなかアヤメと言う名を言わないな。貴様とアヤメが行動を共にしていることはもう確定しているのだ。白状すれば「何故名前を知っている?」と質問して証拠を集められると言うのに)

(なーんて思っていそうね。私は二人の転生者と行動を共にしているのよ。イクオのことを言って嘘と本当の情報を混ぜ合わせる。貴族社会の腹の黒さを嘗めない事ね)


嘘と本当の情報を会話に混ぜるのは、何も真偽で相手を混乱させ、情報を飽和させることだけが目的ではない。曲解させた真実を混ぜるだけで、その会話は喋る本人に自信を持たせる。それだけで自身の中の動揺はなりを潜め、嘘がバレにくくなる。

アリアとて、元北の神聖王国の公爵令嬢を務めた者。腹の探り合い、狸と狐の化かし合いと言った具合のやり取りは得意分野であった。


「日本と言う国から来たそうじゃないか」(アヤメが)

「あーそうらしいね」(イクオが)

(少なくともイクオはそうだったらしいけど、あれ?アヤメちゃんも日本と言う国からやってきたのかな?それは知らないなぁ)


ちょっとだけ情報の交差があった。

アリアはちょっと迂闊に嘘を突いちゃったかな?と思った。しかし、姓と名が逆であることは同じ国出身だった可能性は確かにあるので、さしてこの嘘は問題じゃないと思っていた。

しかし、この嘘が後々面倒な状況を巻き起こすようになる。


「体を布で包んでいるそうだな?」(黒い外套で)

「そうだね」(全身タイツで)

(ん?まぁアヤメちゃんもそうとも言えるかな?)


「何やら怪しい組織にいるそうじゃないか」(鷹の目)

「まぁ・・・言うなれば怪しいね」(仮面とパンツと豚の色物軍団)

(アヤメちゃんって怪しげな組織にいるんだ。知らなかったなぁ)


「陰でコソコソ動くのが得意と聞くがそれは本当か?」(密偵)

「あぁ~上手だね」(万引き)

(何で高々万引きにあれだけ本気になれるんだろうね。本気すぎてどんどん技術上がってきてるし)


(ってあれぇ~~?)


アリアは困惑していた。アヤメのことを聞くと思っていたのにさっきからイクオのことばかり聞いてくるのだ。

嘘情報を混ぜて話をややこしくするつもりが、イクオにも当てはまることばかりで肯定ばかりしてしまっていた。これではアヤメと行動していることを認めてしまう。

そこにアリア、天啓が走る。 


(あ、そうかぁ~イクオのこと聞いてたんだぁ~!)※違います


思ってみれば新しく現れた転生者についての対策を話し合う為に、今回の魔王四天王会議が開催されたのだ。アヤメのことじゃなくてイクオのことについての情報を集める、と聞けば確かにつじつまの合う話なのである。

イクオのことについての情報を話すのなら何の問題もなかった。イクオは何より恩寵スキルを振り回す気がないことを話してもこの人たちには信じてもらえそうだし、情報が漏洩してイクオが窮地に陥ろうがイクオは喜んで窮地を満喫しそうだからである。

そうとわかればアリアはイクオに対する情報を話し出した。


「えっとねぇ、北の大陸でも話題になってるよ」

「・・・何?」

(あのアヤメが北の大陸でも問題を起こしたというのか・・・!)


「恩寵スキルで大陸中の人々の恋を奪ったの。国家転覆まで起きたんだよ?」

「そんなバカな!?」

(アヤメの奴にそんな力が!?いや、未知なる恩寵スキルを携えたイレギュラーな存在だ。もしかしたらそういったことができるのかもしれない・・・!それにしても恋を奪う?そんな馬鹿らしいことをアヤメがっ)


「あとは・・・」


ズァオスは混乱の最中にいた。突然アリアが饒舌になりだしたと思えば、急に妙な噂を話し出したのだ。

と言うのもこの男。確かに厳格な魔王四天王の一角ではあるモノの、忘れてはならないのはヨンの父親であると言うことだ。思い込みが激しいことはヨンと一緒であり、その激しい思い込みによる想像力が、アヤメへの誤解をさらに加速させていた。


「挙動が変なのよ。壊れたおもちゃみたいな挙動するの」

(あのアヤメがそんな気持ち悪い動きを!?)

「奴の逃亡技術は突飛な動きからくるものなのかっ!」


「壁を張り付くように走り回るの」

「壁を張り付くように!?」

(どんな動きなんだ!?四つ足で壁に張り付き動くのか!?まるで虫ではないかっ!)


「あと全身タイツだから見てくれも変態的なのよね」

(全身タイツ!?アヤメは黒い外套の裏には全身タイツを着込んでいたのか!奴にそんな趣味が!)


「何を馬鹿なことを!奴はそんなに愉快な存在ではない!何人もの強者が殺されたんだぞ!」

「え!?(イクオが)人を殺したの!?」

「あぁ大陸に名をはせた者が一瞥で(命を)落されたのだぞ」

「(恋に)落とされた?」(なんだアンジェか)


何故か止まらない誤解に次ぐ誤解。

インヤンは察しがついているのかため息をついている。シェンマオは腹を抱えてヒーヒーと大爆笑していた。


「ハァ・・・」

「キヒヒヒッ!!キヒヒッ!キヒヒヒヒヒッ!!」


「もういい。ズァオス」

「あぁ?」

「ヌシのその妄想癖は悪い癖だ。多少鼻が利くだけで尋問は務まらん」


ズァオスは舌打ちをする。

彼は四天王の中で一番の新参者であり、この中で最も実力が低いとされている。それでもあの時戦ったレチタティーヴォよりかは強いのだが、この地では四天王を名乗るにはやや実力が足らない。彼は焦っているのだ。

ドカリと強引に椅子に腰かける。腕を組んで静観の姿勢をとった。


「ウヌの同僚が迷惑をかけたな」

「いいよー。私も話をややこしくしたし」


テーブルの上に置かれた酒瓶をそのまま鷲掴みにし、口の上でひっくり返す。ドボドボと流れ落ちる酒をその大きな口で全て受け止め、飲み込む音が豪快に響き渡る。

一気飲みしたのだろう。空になった酒瓶を机に叩きつけるように置く。ため込まれた息を一気に吐きだした。


「ヌシも知っているだろうが、ミヤガワ アヤメの起こした『魔眼事件』。他の大陸でも転生者の話題は耳に入るが、実害が最も出た大陸はここ東の大陸だ。警戒されるのは当たり前なのだ。許してやってほしい」

「へぇ?他の大陸でも転生者の被害が出たんだ」

「西の大陸では少し話題になった程度だ。四年前の話だな。二年前にアヤメが現れ、一年前にブサワ イクオたる者が北の大陸に現れた。転生者の音沙汰は無いのは南の大陸だけだな。

まあそんな話はどうでもいいのだ」


インヤンは立ち上がった。否、インヤンだけではない。シェンマオ、ズァオスも立て続けに立ち上がった。

改めて見てみれば、満漢全席だったターンテーブルの上にはもう空の食器しかない。あれだけの量を誇っていた食事はもう何も残っていなかった。

アリアにはそれが何だか嫌な予感がした。いや、これは予感ではない。アリアは身構えた。


「武器を持ってきておいて正解だった。とでも言っておこうかな?」

「クカカッ!察しがいな。イェレミエフ家の勘はしっかり受け継がれているみたいだな」


サラリと魔剣を抜いた。薄紫に透き通るアリアの相棒。

インヤンの体の筋肉はギシリと引き絞る音を立てた。

シェンマオは槍を握り、ズァオスはビリビリと服を破り捨てた。

全員が臨戦態勢に入る。誰が何という訳でもなく、彼らは戦いの目つきに変わったのだ。


「血濡れの娘・・・いや、アリア。ヌシがアヤメと繋がりがあるのを知ったのはつい最近のことでな。それを知っていたらウヌの部下には入れなかったやも知れぬ」

「裁判の真似事は実は必要なかったんだよ。まぁあっさり認めてくれればアタシらとしちゃあ下手に争わずに済んだ。礼を言うぜアリア」

「俺たちは戦いの中でこそ誇りを見出す戦士の血族。『誇りある華の民』。悪く思うな」


アリアは思考を巡らせた。

アヤメつの接点はつい最近知ったとのことだ。彼らはそれを確信している。少なくともアリア自身たちより信頼がおけるような者からの密告があったのだ。つまりは()()()()()()()と言うこと。

しかし、今それは考える必要がない事。何故かは言うまでもない。


(魔王四天王の三人・・・対、私一人。出し惜しみして何とかなる相手たちでは断じてないね。私も腹をくくって本気になろう。イクオたちと共闘するときは目を瞑ってて巻き込む可能性が高かった。

でも今なら使える。七つの【ユニークスキル】の全てを解放できる!)


「インヤン様・・・私は貴方に一度負けました」

「うむ・・・」

「ですが知っていますよね?私が貴方の誇りに準じるため、魔法を一切使わず戦っていたこと」


ただの喧嘩に混じっただけだったアリアとインヤンは、お互いにスキルや魔法を一切使わず戦っていた。アリアはそれでインヤンに負けたが、出し惜しみ抜きの全力の戦いなら、結果は分からない。

それでもアリアに勝てる道筋は針の穴より小さい。

ここは戦いに生きる者たちの国なのだ。



「【凍てつく愛の指揮棒(クリティカル・タクト)】」



アリアは第一のスキルを解放する。



勘違い系のギャグって凄く難しいね。もう二度と書きたくないぜベイべ。


ちょっとキャラが増えてきたんでここら辺でザックバランな実力紹介をしておきます。


ゲオルグ     S

アンジェリーナ  A+

クリスティアラ  Aー

カグラ      B+

レチタティーヴォ B


インヤン     A+

シェンマオ    A+

ズァオス     A-

ゼノス      B-

ヨン       Cー


ピグレット    B+

サラ       C-~A++(地域により変動)

アヤメ      B-

イクオ      C+~?(テンションで変動)


サラが北の大陸にいた頃はC-です。イクオの冒険が始まった初期もCーですね。

AとSの間ではとてつもない隔たりがあります。Aに+が五つぐらいついたらSですかね。

クリスティアラの全盛期がS。かつて東の大陸最強だった男、レイ マンユエはなんと脅威のS+。ヒェ~。


さて、現在非常に絶望的な状況ですが、アリアがイクオ並みに規格外なところを知ってもらいたいがために、これからの戦闘シーンを描写します。アリアは今後どんどん化けていきます。こうご期待です。



アリア     A~?

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