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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一章 氷の国のロマン姫
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アルハンゲルスキー邸 夜

  ーアルハンゲルスキー邸 (アリアサイド)ー



「フフフ 私がいつも通り大人しく寝てると思ったら大間違いよ!」



アリアはガッツリ起きていた。今までお転婆な所しか記述していなかったが元々まともだったんですよこの子。

やはりおかしくなってきたのは結婚話が上がってからだ。


「あぁ、イム様。我が慈悲深き神よ。どうか婚約破棄の為に夜中を歩き回る事、お許し下さい」


敬虔な信徒からしたらふざけんなと言われそうな話だが問題ない。この場にはアリアしか居ない。流石に公共の場であのような不敬な発言をするほどアリアは常識知らずではない。


「さて、イム様に祈ったから夜更かしは大丈夫ね。さてさて、【感知魔法Lv23】!!」


アリアは感知魔法を放つ。これによりこの屋敷内にいる人々がどのように動いているか丸わかりだ。アリアは感知魔法は得意ではない方だったが、それでもレベルが23もあれば屋敷全体を感知魔法範囲に埋めてしまうなど造作もない事だった。


「うーん?テクテク歩いてる反応があるけどこれは私の婚約者のレチタティーヴォじゃないですか。相変わらず朝が早いのに夜が遅い。まぁそういう生活ができるよう体を鍛えてるから当たり前なんだけどね?」


アリアはブツクサ独り言を言いながら窓から身を乗り出す。夜遅くで独り言をするのはなんだか楽しくなって好きらしい。


「ん?・・・・・・・・レチタティーヴォ以外に生物の反応を探知。しかも三つ(・・)。動きがコソコソしているなぁ。」


探知魔法から逃れる方法は現時点でアイツらには無い。つまりアリアが魔法を発動している限り、アイツらの動きは筒抜けという事だ。


「・・・・・・・・・泥棒だな?うーん流石に見過ごすわけには行かないなー。門番は何してるんだろう・・・・・・。あっ!一人床の下に閉じ込められてる!!あっははは!面白い事するなぁ!!」


アリアは完全に楽しんでいた。感知魔法はイクオの演算魔法ほどでは無いが魔力も探知できる。そして探知した魔力量がお遊び半分で片付けられるものと判断した。つまりアリアはイクオとサラの二人を取るに足らない程度の実力と認識している。


「ふむふむ。一人は見たことがある魔力だ。南の精霊王のサラマンダー様ですね?じゃあもう1人は・・・・・・」


アリアは難しい顔をする。ちょっと魔力の質が尊大なものを感じるがそれ以外は並以下の至って普通な魔力量だ。だが・・・・・・・・・


「何だろう。一度スイッチを押したら凄まじい魔力が爆発するような・・・、今は何も感じないけどひとたび暴走すれば取り返しがつかない事がおきそうな・・・。

下手すれば国が崩壊するのでは?」


アリアは熟考する。アリアは自分でも勘は鋭い方だと自負している。実際アリアは感性で物事を捕えるフシがあり、そしてその感覚は大概当たっているのだ。そして感覚でそつなくこなしてしまう天才型だ。

話は変わるが、それでも彼女が慢心はしないのは絶大的な存在を知っているからだ。


「兄様を呼ぶ?いや、兄様は今は東の戦争で兵を率いて戦っている。呼ぶにしても時間がかかりすぎる。私とレチタティーヴォで片ずけるしか無さそうだな。」


ひとまずサラともう一つあるの別の魔力は後回しにしてイクオの方へアリアは窓から飛び出そうとする。しかし、


「あっ!レチタティーヴォと謎の魔力物体が遭遇する!そこへ私が出ていったらレチタティーヴォに夜更かしがバレるじゃない!中止中止〜」



下手すれば国存続の危機だがそんな事より婚約破棄の方がアリアにとっては今は大事だった。それは微弱にしか感じとれない魔力でイクオの心持ちを感じ取ったのか。それとも暴発しないと勘で判断したのか。



幸運にもイクオは全く知らないところで九死に一生を得たのだった。



  ーイクオサイドー


(この部屋は魔力をバンバン感じるな。このタイル踏んだらまずい気がする。そう、ブザーや警報がなるような)


イクオは寄宿舎を越えて屋敷の中へと歩を進めていた。イクオの予測通り、タイルの下の魔道具は警報の効果があった。

演算魔法は魔力を感知し、感知魔法は体温や音、電気その他諸々の感知に特化している。索敵目的なら感知魔法の方が優秀だが、このように感知魔法だけでは察知しにくい罠もある。


(俺じゃなきゃ見逃しちゃうね・・・っと)


つまり魔力感知に優れたマイナーな演算魔法じゃないと突破出来ないということだ。その点運が良かったと言える。


(このタイルはおっけー。これはダメ、これもダメ、これは大丈夫)


そして警報タイルがギッシリ詰まった通路でも・・・。


【跳躍】  (じやあ〜〜〜んぷ!!) 


軽々飛び越えてしまう。向こう岸にたどり着いたイクオは余裕綽々と言った感じで調子に乗る。


(おん?魔力探知に反応あり。人の足音も聞こえるな?こっちの道はダメだ。遠回りしよう。)


サラは精霊だから霊体化して壁抜け透明化なんでも出来る。サラに調査してもらったおかげで屋敷の構造は把握済みだ。チャッチャと走り出す。



  ー書斎ー


少し小さな書斎だ。でもインテリアは地味だがセンスがいい。落ち着いて本を読むにはとてもいい場所だ。ここの家主は本が好きだが読む暇がなかなか無く、部屋は凝ってるが本が少ない。


([風避けの護符]が有るのはここの隠し扉の奥だ。倉庫に隠しといてくれたら盗むのは簡単なんだけどな)


キョロキョロと部屋を探してみると、いかにも隠し扉が有りそうな雰囲気を醸し出した柱時計にたどり着く。というか擦った跡があるから確定である。


(ビンゴだ!どうやって動かすのかな?)


とりあえずペタペタ触ってみるが何かあるようには感じない。魔力も感じないから魔道具の類ではない。暫く何かないか探していたら鍵穴を発見してしまった。


(・・・・・・・・・・・・・・・しくった。まさかこんなのが必要だとは。持ち主として考えられるのは屋敷の主だな。まじかよ選りに選ってここの家主かぁー)


家主の部屋はここより上の階だ。内側からなら窓を開ける事は出来たのでイクオは窓から出て壁をよじ登り始めた。


(確か三階か。直接窓から覗いてみるか)




  ー家主の部屋ー




(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)



がふ、  ぐふ  ぶごっ ぶぐぐ



(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)



ぶぎ、  ふごっ ふごっ



(・・・・・・・・・・・・豚だ。豚がいる。家主の部屋の中に豚がいる。)



ぶぎーっ  ぐぶっ  くっちゃくっちゃ



(え?何で?ここの家主は豚を飼っているのか?そんな情報は一度として聞かなかったが?)


イクオはパニックを起こしていた。家主が寝ていると思って慎重に覗いたらそこには家主はおらず、豚が意地汚そうに何か食べていた。


(何食ってんの?観賞植物?ダメだろそんなの食べちゃあ。もうこんなに部屋を散らかして・・・家主帰って来たら怒るよ?絶対)


「そこの貴様ァ」



「しゃぁぁああべったぁあ!!?」


暗くて見えなかったが、この豚はマントを羽織っていた。そして青と白の縦縞のパンツを履き、スクリと二足歩行で立てり出した。


「何か用か?」


「え?いや、この部屋の家主から鍵を借りようとして・・・・・・・・・」


「盗みか?盗みはいかんよ。親が悲しむぞ。で、どれの事じゃ?」


「協力すんのかい。恐らくそこの・・・」


「こいつかぁ?

ほいよ。確かに渡したぞ」


「あざっす」


「きいつけろよ?捕まると痛い目に遭えるぞ」


(痛い目に遭える?)





  ー書斎ー



(忘れよう。忘れてその事は無かった事にしよう)


カチャカチャと鍵を突っ込んでグルグル回す。ガチャリと音がすると柱時計の振り子はピタリと止まる。



ズゴゴゴゴ



(開いた。音が響が周りになかったか不安だが大丈夫か?まいっか)


奥へ進むと[風避けの護符]が保管されていた。


(よし!後はサラが用意してくれたはずの脱出経路に行くだけだ)


柱時計を元に戻し、鍵を書斎の机の上にでも置いておく。散らかってて気になっていた書類を整えておく。


(来た時よりも美しく。美しく来て、美しく盗み、美しく去るのが俺の盗っ人美学。目指せ怪盗)


ついさっき適当に考えた美学(笑)を得意気に妄想し、部屋をでて廊下に出る。

ここを右に曲がって真っ直ぐ進めば空き部屋を通りかかる。空き部屋の屋根裏からサラがこじ開けてくれた穴を通り屋敷裏の非常口への道へ出ればもう勝ったも同然だ。


(上級貴族だからどうなるかと思ったが思いのほかなんとかなったな。これでこの国を出れる!逃亡生活とはおサラバだ!)



角を曲がる














「・・・・・・・・・やぁ」


「っ!?」


「ここで何をしているのかな?」


(まずい・・・・・・・・・。そうだ。家主の部屋にこいつがいなかった時点で気付くべきだった)


目の前にはくたびれた雰囲気の男が立っていた。年齢は大学生程度で焦げ茶色の髪をしていた。


彼はレチタティーヴォ・アルハンゲルスキー


ここアルハンゲルスキー家の現当主であり、屋敷の家主。頭の良さと粘り強さ、そして部下からの人望を買われ、至高の三騎士に数えられた。教皇に授けらた名は『執行の騎士』。


イクオは心の中で息を飲む。


(執行の騎士は頭がいい。ただでさえ俺が怪しい状態なのに何か言葉選びをミスれば必ずバレるぞ。動揺するな。冷静に対応するんだ)


「いえ・・・・・・・・・見張りをしていたのですが何かが入ってしまったような気がして、無断で屋敷の中に入ってしまいました。申し訳ございません」


「何が入っていったように見えたんだい?」


「・・・・・・・・・・・・豚です」


「・・・・・・・・・ほ、ほお?」


(嘘は言っていない!嘘は言っていないぞー!何か言葉選び盛大にミスって逆に怪しまれたような気がしたが後で証明すればいい!!)


「うん。まぁ分かった。何か入ってきたのなら明日探してみよう。ただアリア様も嬉々として探してくれるだろうなぁ・・・・・・。君も門番の仕事で疲れているだろう。今日はもう休みなさい」


「はい。失礼しました」


「おぉっと待った」


(待ちたくないぃぃぃぃいいぃぃいい)




「君の従者番号を忘れてしまった。身分証を見ずに(・・・・・・・)何番だったか答えてくれないかな?」




(はあ!?従者番号!?何だそれ学校の出席番号かよ!何だった?思い出せ、確か変装している門番を眠らせた時に持ち物を確認した!)


イクオの頭は演算魔法により思考スピードが極限にまで上がっていた。魔力の消費を相手に感じとれないギリギリのラインで絞り、出来うる最大の魔力量と集中力で考える。自らの記憶を辿る。


(身分証・・・・・・カード・・・・・・・・・番号・・・・・・・・・・・・)



「・・・・・・・・・・・・FA30537です」


「・・・・・・素晴らしい!よく覚えていたね。済まない、何もこんな時間だ。君を疑ってしまったことを謝罪しよう」


「いえいえ!私もこんな時間に屋敷を歩き回ってしまってすみませんでした」


「あぁ。出来ればそうしてくれると助かる。屋敷に入ってきた何かについては私が手を回しておくよ。それではいい夜を」


「はい、いい夜を」



そう言うとレチタティーヴォはイクオの横を通り過ぎて行った。



足音が消えていく。



「ぶはっ!」


(あっっぶねぇぇえええ!!危なかった!マジバレるかと思った!生きた心地しねぇなあ!)


門番を気絶させ持ち物をすげ替える時、イクオはチラリとだけ身分証を見た。しかし見ただけで覚えようとはしていなかった。演算魔法によって強化された思考力は何かを思い出すことにも使えたのだ。


(いや今の神回避だろぉ!よく覚えてたなぁ俺ぇ!!よくもまぁ従者番号なんか覚えてて







従者番号?)


再び思考のなかへ


(従者番号?そんなのあったか?確かに番号はあった。でも・・・・。もう一度よく思い出せ。身分証に書いてあったのは・・・・・・・・・・)



・・・・・・・・・・FA30537


・・・・・・ナンバーFA30537


・・ヴァントナンバーFA30537




サーヴァントナンバーFA30537



従 者 番 号 と は ど こ に も 書 い て い な か っ た



(まずい!!!)


イクオは素早く振り返ると首元には剣が振られていた

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