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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一点五章 北の大陸での記録
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背信者のラボ



「いっ・・・たたたた・・」



アリアは雪に埋もれた頭を抜き取ると、頭をさすって起き上がる。突然自分たちを襲った暴風。それにより自分たちは海からだいぶ離れたところまで吹き飛ばされた。



「・・・皆を探さないと」



アリアは【感知魔法】を働かせて皆を探す。暴風は一先ず頭の隅に置いといて、一帯の生体反応を探す。一人はすぐ見つかった。



「アヤメちゃん!!」


「アリアさん!」


「もー!呼び捨てでいいって」


「あっ・・アハハ・・・」



まずは一人。もう一人はしばらく歩いたら見つかった。



「サラ!ここにいたのね!」


『・・・さ・・む・・・・・い・・・・・』


「風と共に運ばれてきた寒波にやられたわね・・・」



さて、残るはイクオと豚の二人なのだが、どうもそれらしき姿が見つからない。アリアの【感知魔法】は温度を感じ取ることに特化しているので、この寒い台地では吹雪に邪魔され体温が感じられない。



「イクオー!!ピグー!!」


「どこだーー!!」


『・・・・・見つかんねぇな』


「うぅ~ん。どこ行っちゃったんだろう」



割とまずい。こんな状況で遭難とかシャレにならない。三人はだんだんと心配になってきて焦りだす。



「イクオぉーーー!!!」


『師匠ぉーーーー!!!』



「ワシはここじゃ」


「イヤァアアアアア!!死ねッ!!!」


「ブヒン♡!!」



アヤメの足の下に、踏まれてご満悦な表情をしたピグが雪から顔だけ出していた。アヤメキックが炸裂。しかし、効果は今一つのようだ。(むしろ回復)



「ピグ!イクオは!?」


「おん?イクオか?あ奴はのう・・・」



「ここだ!!」



ピグがさっきまで埋まっていた場所からニュッと腕が伸びる。イクオの全身タイツを通した腕が雪から生えていた。



「どっから声出してんのよアンタ!」


「雪の中・・・道理で私の【感知魔法】が聞きにくかったわけだ」



ホッとした気持ちがこみ上げてくる。一先ず突如の暴風で餌食となった仲間は誰もいなかった。



「・・・何じゃったんじゃろ。アレ」


「・・・・・今思い出したんだけど、北の探索者たちがごくたまに出くわす現象みたい。塔の話は聞かないけど」


『う~ん。塔が転移したときに生じる何らかの誤作動?』


「転移と突風は関係性がないでしょ」



「・・・もしくは塔が見えないほどの速度で移動したときに生じた()()・・・・・?」



「・・・・・・」



いやいやいや。そんなバカな。

とでも言いたげな表情をされたが、今は判断材料がないのでこの件は保留だ。



「そんなことより皆!!すげーいいもん見つけたぜ!!」



「?」

『?』

「?」



「ブヒヒヒヒッ」




  -・・・-




「おぉぉぉぉ!!」



雪をかき分けると鉄の扉が見つかった。引っぺがしてみると、なんと地下へ通ずる階段が発見したのだ。

一行は地下の階段を下っていると、何やら面白そうな部屋の入り口を見つけてしまったのだ。



「・・・凄いわね」


『とんでもねぇ奇跡だぞ!よく見つけたな!』


「落ちた先が鉄の扉だったのさ!おかげで盛大に頭をぶつけたが、こんなにもロマン味あふれる場所を発見できた!」



よく見ればイクオの頭のてっぺんにたんこぶができているが、まあ些事である。イクオ自身興奮でドーパミンドバドバで痛みなんか一切気にしてない。

皆は意気揚々とし、やはり待ち切れない。すぐにでも扉を開けて中に入ってみたい。



「・・・鍵は・・・かかってるな。鍵穴がないから何かを認証して開くタイプの扉か。壊しちまうか」


「いや、やめた方がいいよ。旧人類の技術は何が飛び出してくるかわからない。無理に開けようとして罠が作動するかも」


「おっかねえ!【演算魔法】でセキュリティを解析しながら様子を見よう」



扉近くの手形に手を当てて魔力を流す。本来は指紋認証や魔力認証とかで開くのだろう。指紋認証なら厳しいが、魔力認証はイクオなら開けれるかもしれない。



ガコンッ!!


プシュウーーーゥゥ!!



「おぉ!?」



ガガガガガガッ  ガタンッ!!



「「『「「おぉ~~~!!!」」』」」



何やら錆びついた機械的な音を立てて鉄の扉が開くのは、イクオじゃなくてもちょっとワクワクした。未知のテクノロジーに触れるのはやはり高揚感が隠せない。



「ロマンだ・・・・」


『想像以上に早かったなイクオ』


「ん?あー。確かにな。俺は魔力を流しただけだったが・・・壊れてたのかもしれん」



そんなことはこの際どうだっていい。中が見たくてしょうがないイクオたちはゾロゾロと部屋の中に入っていった。


中は何かの研究室みたいだ。イクオの目算では15m×30mのそこそこ広くガランとした部屋だ。



『きゅ、旧人類の研究室・・・!!?』


「これは本当にヤバいもん見つけちまったかもしれんのう」


「考古学協会が知ったら卒倒するかも・・・」



錆びついていてよくわからないが、魔力の籠った機械たちが転がっているから魔導技術の研究をしていた場所らしい。

床に散らばったものはどれもただの部品で、これだけではどうも効果がないらしい。ただ目を引くのはやはり入って正面に立てかけられたあの大きなキューブだろう。



「これ・・・何かありそうだよな」


「なんだろう。箱?」


「中に何か入ってるかもしれないわね。イクオさん。何か【演算魔法】でわかることある?」


「取って付けたようなさん付けせんでもいい。イクオでいいぜ。あ、どれどれ・・・?」



アリアにも同じことを言われたような気がする。何か喉に突っかかったような顔をするアヤメを置いて、イクオは【演算魔法】を起動する。謎のキューブを注視して魔力を測り取る。



「・・・保有魔力量は30,000ジャスト。きっちりしてんねー。高いっちゃ高いが、旧人類の遺物としては微妙だな」


『だな。世界樹とか測定する気も起きなかっただろ』


「ああ。まあ世界樹はアヤメの【トーリマLv100】よか少なかったがな」


「ウっ」


「あ、ゴメン!」



自分のスキルとなるとアヤメはセンチメンタルになりがちだ。適当になだめて解析を再開する。



「・・・何かぞわぞわするなー・・・」


「?」

「わからんのう」

『何も感じねぇが?』


「いや、アタシも変な感じがする。こう・・・何というか・・・・・」


「うん?転生者の二人には何か感じるの?」


「あー。悪い感じはしないんだが、何かつっかかる」



イクオはキューブに手を当てる。

キューブに光の筋が浮かび上がる。鮮やかな青色の光がキューブに浮かび上がり、薄く音を立てて起動する。明らかに何かのスイッチを押した。



「うおーぉぉおおお!!?」


『馬鹿野郎っ!!?』


「何押しやがったんじゃイクオォ!!」


「俺も知らねーよ!!」



キューブは所々が小さな四角型に陥没したり浮き上がったりして形を変える。ガチャガチャと機械的な音を立てて四角いパーツを組み替え形状を変化させるキューブ。大きさは組み替えるごとに収縮していき、機械音が収まるころには、キューブは四角のまま手のひらに収まるサイズに変わっていた。



「お・・・おぉ~~~ぉ!」

「面白い!」

「興味深いのう・・・」

『かっけぇ』

「・・・・・トラ〇スフォー〇ー?」


「アヤメやめろォ!!」



意図せず小さなサイズまで縮小してしまったキューブ。思ったよりも重く、片手で持つには少し負担程度だ。それでも持ち運べないほどではない。



「こいつは頂いていくか!」


「大丈夫なの?」


「まあ何とかなるだろ。他に持ち運べそうな物は見当たんねーし、何よりド級の旧人類の遺物だ。頂けるものは何でも頂いちまおう」



イクオは小さくなったキューブを懐にしまう。このアイテムが、後の旅に大きな影響を当ていることになると信じて。実際に影響するかはさておき、イクオはそうであることを割と本気で臨む。



(こんな訳アリの場所に隠されてたんだ。何かとんでもない謎が含まれていないと困る。旅の先々でコイツがどんなブツなのか、段々とわかっていけたら最高だ)


「楽しそうだね、イクオ」


「楽しいさアリア。未知の恐怖は楽しさに変えなきゃもったいねー。知らないもロマン。知るとさらにロマン。それって最強じゃね?」


「そう考えれるのは珍しいよ・・・」



逆境好き、とは少しだけ違う。陥った逆境がロマンに該当すればイクオは何だって楽しいだけだ。優勢だろうが劣勢だろうが、それがカッコよかったらそれでいいのだ。故に正体不明の謎物質だろうとイクオは持ち歩くことに何ら躊躇いはない。

イム神教の魔族への誤解の歴史を知るアリアからしてみれば、そうやって一笑に付すことができるイクオは寧ろ異常な分類なのだが。



「はぁ」

(イム神教過激派の人間も皆こうだったらいいのに・・・いや、イクオが沢山いたらと考えるとむしろ危険だ)


「おーい。いいもん発見したぞーい」


「お!?何だ何だーあ!?」

「見る見るーっ!」


「アリアさんも大概楽しそうね」



ピグとサラは部屋の隅に置いてあるデクスに向かって何かを覗いていた。ピグとサラの頭の間にズイッとイクオは頭を押し込む。アリアもイクオに乗っかかり上から覗く。アヤメは後からのそのそやってきて、適当な隙間から覗き込んだ。



「・・・旧人類の日記!?」

「スッゲー!!最高じゃん!!」

「ちょ、うるさい!」


『ククク。何が書いているか楽しみだぜ』



何と日記だ。研究資料かもしれないが、この分厚さは恐らく日記だろう。いったいこの中には何が書いてあるか、一行はワクワクしながら日記を開いた。



「・・・・・」

「・・・・・」

『・・・・・』

「・・・・・」

「・・・・・はぁ?」



何書いてるのかわからん。



『ズコォー・・・』


「か、考えてみれば当たり前ね。旧人類語で書かれているから・・・」


「クッ・・・ここまで焦らしておいてこんなのってないぜ・・・!」



イクオは何か無いものかとページをパラパラとめくる。目に映るのは文字文字文字、全部文字。絵も描いていなければ図も記されていない。随分と遊びのない日記だ。



「・・・・ダメだ。日記はここで途切れてる。残ったページは空白ばっかだ」


「こんなに分厚いのに全然がページ残ってるのう」


『もったいねぇな。紙も気軽に使えねぇって言うのに』


「まあ気軽に使えるほど量産できてたんでしょ。」



適当にバラバラめくってみる。やはりほとんどは白紙だ。あまり使われてもいなかったのだろう。ほぼ新品のまま500年以上放置されていたと推測できる。無駄な傷はないのに風化している。



「・・・今ん所はただ雰囲気の良いだけの本だな」


「ん?最後のページの隅に何か書いてあるよ?」


「うーん、どうせ読めねーしなー・・・」





■■

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「ダメ。やっぱり読めない」

『無理か』

「しゃあないのう」



「探せ・・・」



「・・・へ?」



イクオはポツリと読み上げた。アヤメが後に続く。



「霧の冥王。撃ち落された星。嘆きの天使。凶兆の犬。染める蟲。救済の船。魔天秤の鳥」


「七つの神を探せ」



イクオとアヤメは目を見開き、信じられない顔をして文を読み上げる。



「イクオ!?アヤメちゃん!?」


『この文字が読めんのか!?』



「・・・嘘でしょ・・・・・?」


「何で?何で旧人類はこの文字が使えるんだ!?」





探せ

霧の冥王 撃ち落された星 嘆きの天使 凶兆の犬 染める蟲 救済の船 魔天秤の鳥

七つの神を探せ






北の大陸、最南端。

とある旧人類の研究室にて、イクオたちは世界の真実に前進する。この研究室にたどり着けるか否かは、世界の分岐点だった。


書の最後のページには、この世界に有り得ざる『日本語』で記された何者かのメッセージ。



『神を探せ』



神を知った時、イクオたちは今のままではいられなくなるだろう。


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