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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一点五章 北の大陸での記録
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解説章 中央の大陸について



「いい機会だし、中央の大陸についておさらいしましょう」



現在、旧遺物の雪原を移動中。イクオたちは南に向かって突き進んでいた。ひとえに中央の大陸を一目見るためである。もちろん踏み込んだりはしないが、様子を見るだけという約束のもと渋々イクオの要望が承諾されたのであった。



「中央の大陸は・・・ようはめちゃめちゃ質の高い旧遺物が眠っている宝島って認識で会ってるよな?」


『まぁそんなもんだな。実際は宝島ってだけじゃねえけどな』




・中央の大陸

この世界の世界地図は全て共通して、一つの大陸が中央に描かれる。そして、その大陸を囲むように東西南北それぞれの大陸が存在している。

中央の大陸はかつて、旧時代に最も力を持っていた大陸であったとされている。それだけでなく、旧人類の遺物が雪や大地に埋もれてたりしてなく、そのままの形で保存されている究極の大陸である。あそこには、貴族や考古学協会に売りさばけば一生を遊んで暮らせるだけの金が手に入る旧遺物が大陸中に転がっているのだ。

しかし何故中央の大陸に誰も足を踏み入れなくなったのかと言うと、その大陸の生態系の危険度にある。中央の大陸には、魔物の上位の存在『魔獣』が存在している。魔獣は通常の魔物に比べて極めて強く、極めて獰猛である。その実力はもはや東西南北の大陸とはもはや別次元の存在。かつて90Lvを越えていたクリスティアラでさえ、生還は不可能とされていた。そう、困難ではない。不可能とされていた。




「アリアの母ちゃんか。強かったなー。でもそのアリアの母ちゃんでさえ入ろうとは思わなかったわけだ」


「かつて中央の大陸攻略のために、各大陸で共同作戦を実施したことがあったの。選ばれたのは全員が最大90Lvを越えた精鋭たちよ」


『作戦名あったよな?何だっけ』



「『中央開放作戦』。私たち新人類にとって過去最大の作戦ね。当時も争い合っていた北と東も、この時は手を取り合ったらしいよ」




・中央開放作戦

旧人類が滅亡し新人類の時代になってから、過去一番の規模を誇る一大プロジェクト。新人類歴約100年で実施された。そしてレオン・ロイヤルが【大英雄】と呼ばれることとなった出来事である。

作戦の概要は至って簡単で、中央に潜む魔獣から、中央の大陸を奪還する任務である。東西南北の世界中の精鋭をかき集め、総勢8名で中央の大陸に突貫した。当時レオンは南の大陸から選ばれた精鋭のうち一人だったという。

結果から言うと作戦は失敗となった。命からがら生還したのはレオン一人で、残る精鋭は一人残らず死亡した。中央の大陸には今でも魔獣が存在し、中央奪還は失敗に終わった。しかし、帰還したレオンの持ち帰った『中央の遺物』により、世界は劇的に発展。レオンは大英雄と呼ばれることとなった。




「中央開放作戦・・・中央に隠された英知を世界へ開放する、てな感じで名付けられたのか」


「多分ね。それ以降中央の大陸に足を踏み入れようとする者はだれ一人としていない。新人類は中央の大陸を諦めきってはいないけどね」



現状、中央の大陸は東西南北で『中央不可侵』の条約を結んでいる。実態は中央が怖くて誰も手を出せないから、所有権だけでも持っておきたいと思った各国の首脳が結んだ条約らしい。



「あ、アホくさ!誰も手出しできないくせに所有権だけは奪い合ってんのか!」


「そういってやるな。何とか『不可侵』で通せたから事態はしょうもないだけで済んどる」


「それに不可侵にさせたのはレオンでしょ?」



不意に口を開いたのはアヤメだ。

各国の中央の取り合いに口をはさみ、中央を不可侵領域に持ち込んだのはレオン本人なのだ。



「世間は、もうだれ一人中央の犠牲になってはならないというレオンの善意だとか、中央の取り合いにおける各国の緊迫した関係を一時沈めるためだとか、まあ勝手なうわさが流れてる」


「く、詳しいなアヤメ」


「こっちの世界じゃ常識よ。アンタもこれくらい知っときなさいよ。とにかく、『中央開放作戦』後、レオンが自ら中央を閉じたのは事実ね」



イクオは中央の大陸に興味がある。当然と言えば当然だ。中央の大陸には夢がある。あそこには文字通り、世界の謎が全て知れる。

イム神教の聖地に隠された『聖典の原典』

旧人類を滅ぼした事件、『人類の漂白』

故に謎だった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「大英雄レオンは何を見たんだろうな」


「・・・?」


「いやさ、かの大英雄は中央の大陸で何を見たんだろうな」



レオンの持ち帰った旧遺物にはどれも穴があり、完璧な状態ではなかったらしい。持ち帰る際に傷が入ったというのが周囲の人間の認識である。しかし、それは本人の証言ではない。イクオはその点がきな臭く感じて仕方がない。



「レオンは何か隠している。【古代演算魔法】を世間に広めていないのがいい例だ。彼が世界の全てを人々に知らせていないのには必ず理由がある」


「うん」


「サラ。レオンは優しい奴だって言ってたよな?」


『おぉ』


「恐らく全てを知らせないのは善意からだ。つまり知られたらマズいことなんだ。レオンは新人類に全てが知られることを恐れている」



レオンが何かを隠していることを感づいている者は少なくない。中央から帰還した後のレオンに謎が多い。

イクオは予測していた。レオンの隠したがっているものと、500年前の『人類の漂白』は無関係ではない、と。



「矛盾してるんだよ、やってることが。文明の進化が目的で『中央の旧遺物』を持ち帰ったのなら、何故中央を閉ざし進化を遅らせる体制を作ったのか」


「・・・・・目的が文明の進化じゃないから?」



アリアの証言にイクオは頷く。レオンの目的が新人類の文明レベルを向上させ人々の生活を豊かにする、なんてことじゃないのはイクオといても同意見だ。



(文明の進化が目的じゃない・・・?それじゃあ何で旧遺物を持ち帰った?いや待てよ?もしや・・・)


「・・・旧遺物は一部一部が抜けているんじゃない。一部一部が改変されている?」




考えすぎ。本来ならばそうなんだろう。しかし目的が『文明の進化』ではなく、『世界の真実の秘匿』ならば全てが繋がる。


嘘の情報を流し、文明の変化を改変し、真実にたどり着かないように世界を欺く。

中央を閉鎖し、真実を知るものをこれ以上増えないよう抑える。


全ては気づかれないため。真実にたどり着き、欲深く()()を欲し、人々が破滅しないため。同じ過ちを、もう二度と繰り返さないため。



「そう・・・例えば、『人類の漂白』とか・・・・」




・人類の漂白

旧人類は突如として姿を消した。数千数万の時を経た旧人類の歴史は唐突に、そして一瞬にして幕を閉じたのである。

何故滅亡したのか。どう滅亡したのか。新人類の時代が始まって以来、その真実は未だに謎に包まれており解明されていない。しかし、旧人類の滅亡がほんの一年足らずの期間で、下手すればもっと短い期間で為されたのは、数少ない解明された事実の内一つであり、また真実であった。

この一瞬のうちの旧人類の滅亡を『人類の漂白』と人々は呼ぶ。『人類の漂白』を起こしたのは一体何なのか。それは旧人類の解明には切っても切り離せない課題である。




『・・・このまま進むであろう歴史を改変しないと、『人類の漂白』を再び繰り返す危険があった・・・と?』


「あくまで推測の域を出ないがな。でも『レオンの目的は文明の進化ではなかったのではないか』というのは個人的には推していきたい推測だ。何しろ【演算魔法】の件がある」


「魔力演算か。確かに文明の進化が目的なら、【古代演算魔法】を広めないのはおかしいのう。むしろもっとも広めるべき内一つのはずじゃ・・・」



かつて強大なまでに進化を果たした旧人類。

人類の漂白(何らかの事件)』により突如として滅亡。

生き残りたちにより新人類の時代が始まる。



(・・・ウズッ)



「楽しそうだねイクオ」


「ああ・・・旧人類の謎を解明するのは俺の目標の内一つだ。『世界の謎を解き明かす』。世界中を旅するのには十分な目標だろ?」


「アハハ、そうね。ワクワクする!」


「それがロマンだぜアリア。俺はいずれ中央の大陸に足を踏み入れる。今は無理でも、世界の謎を知るには中央は避けては通れない!」



イクオの旅の目的。

北の神聖王国の追ってから逃げるのも旅の理由ではある。しかし、当然それだけではない。世界の謎の解明も、イクオの少年心をくすぐる目標だ。



(あぁ・・・やっぱりこの世界は最高だ!まだ何にもわからないことが目の前に山盛りある!ロマンにあふれている!!)



「ブサワさん。見えてきたわ」



アヤメは立ち止まり先を見据える。アヤメの少し先には海がある。

そしてその更に奥。吹き荒れる吹雪でよくは見えないが、その先には微かに陸が見える。薄くシルエットを映し出すその大陸は、雄大にも、不気味にも、魅力を放っている。

あの地が、あの大陸こそが




「あれが・・・・・中央の大陸・・・・!」




イクオは歯をグッと噛みしめこぶしを握る。体の奥から震えがこみ上げてくる。ワクワクが止まらない。あそこには世界の全てが詰まっている。全ての謎が眠っている。



「いずれ・・・ぜってーにたどり着いてやる。まってやがれ」



海のはるか先にある中央の大陸に、イクオは固めた拳を突き出す。

他の四人も静かに中央の大陸を見据える。皆それぞれ旅の目的は違うが、中央の大陸に魅力を感じているのは誰もかれもが同じだ。

いずれあの地に足を踏み入れることになる。凶悪な魔獣が棲んでいるにもかかわらず、その地は美しく構えている。


強大に、雄大に、姿を変えず・・・・



姿を変えず・・・・・・・



「姿を・・・・」


「変えず・・・・・・?」




中央の大陸から何かが見える。

何かがぐらりと動いた。とてつもなく巨大な何かが。静止をしていた中央の大陸のシルエットから、何か巨大なものが天に伸びる。



「・・・塔?」


「中央の大陸から塔みたいな何かが急に表れたのう・・・」


『グラグラ動いてるな。明らかに土台が不安定だ』




塔が消えた




「・・・は?」


「え?何!?急に消えた・・・・?」


『んな馬鹿な!?あれだけの質量のものが一瞬で消えるなんて!』


「・・・何らかの転移かのう」


「そう考えるのが妥当ね。あれだけの物体を転移させるなんて並の技術じゃないけど、中央なら十分可能でしょ」







しばらくした後、爆風が突如としてイクオたちに襲い掛かる。北の大陸の大地が風に切り裂かれる。雪に深々と切れ込みを入れる。


突然の出来事だった。

風圧によるソニックブームがイクオたちを飲み込んだ。




・中央の大陸にはとてつもない技術と知識が眠っている。

・でも中央はとても危険で誰も入れない。

・大英雄レオンの目的は文明の進化じゃない?


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