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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一点五章 北の大陸での記録
41/74

彼らの旅路の一部

ちょっとしたおまけ章です。


物語の設定や彼らの日常を少しつづる程度ですので、興味無いよって方は見なくても支障はありません。

正確には支障がないようにできるだけ努めます。ホントの事言えば見た方が後々わかりやすいかもです。


北の大陸の雪原を突き進んでしばらくたったころ、少女は目を覚ました。


起きた彼女が真っ先に行ったことは絶叫のような号哭だった。

この世界に降り立ったころ、彼女は多くの生命を殺し続けた。スキルによる感情の支配から抜け出した彼女は、大殺戮による罪悪感に押しつぶされた。



『アレを行ったのは自分なのだ』



かつて自分の心を壊してしまった『自分が大量殺戮を行ったのだ』という事実を、彼女は再び受け止めることになった。例のスキルは封印されていて、もうスキルに感情をのまれることはない。

それはスキルに身を任せ、楽になることができないことを表す。いっそ感情が支配されていた方が幸せだっただろう。


それでも彼女は涙を流し時間をかけて受け入れていくしかない。幾千の死を背負っていくほかないのだ。




  ~・・・~




「・・・見苦しいところを見せたわね・・・・・」


「口調が変わったな。そっちが素か?」



少女は鼻をすすってイクオたちに話しかけた。スキルは封印されても記憶は残っている。少女にはイクオたちと戦った記憶は鮮明に思い出せる。



「一人称は私じゃなくてアタシだよ。名前は『宮川 アヤメ』」



「アリア・イェレミエフ。アリアって呼んで」


「キャプテン・ピグレットじゃ。ピグで通っとる」


『火の精霊王サラマンダー。略称はサラだ』


「部沢 郁男。日本人だ」


「ひどい名前ね」


「うっせー!」



その他に言っておきたいことをその場でアレコレ言いながら、ひとしきりの自己紹介をすます。

アヤメは全員の方を向いて頭を下げた。



「本当にごめんなさい!アタシは危うくアリアさんの故郷を襲おうとしてた。他の皆にも迷惑をかけた!ごめんなさい!!」



イクオたちは互いに隣り合う仲間たちの目を見あった。そして気が抜けたようにため息交じりの笑みをこぼして口々に言いあう。



『ハっ!なぁにいいってことよ』


「北の国には被害もなかったしのう」


「俺たちにゃなぁーんの心配も要らねーよ!」



アリアはアヤメの頭に手を置く。そして少し撫でた後顔を覗き込んで言う。



「誰も死ななかったから全然大丈夫!あと、アリアさんじゃなくてアリアでいいよ!」



チョットだけ間を空いたのち、アヤメは二へラと笑った。人を殺しすぎてすっかり弱気になっていたアヤメは、自分の行ったことが許されないと思っていた。少なくとも目の前にいる四人は驚くほど簡単に許してくれた。

拍子抜けしてしまった。肩の力が抜けてしまったアヤメは、チョットだけ苦い笑顔でしゃべりだした。



「自分を殺そうとした相手に、随分とまあお人好しね」


「そうかな?」


「器がデカいだけじゃあ!」


「ワッハッハ!!」




  ~封印状況~




「アヤメ」


「何?」


「お前の封印には少し細工がしてある」



イクオはアヤメに少しだけ封印の状況を教える。



「アリアの【固有(ユニーク)スキル】の封印に、俺の【スクリプト】を円形に組み合わせている」


「はぁ・・・」



どんな効果があるのか説明されていないアヤメには、何が何なのかさっぱりだ。そこでアリアがどう封印をしたのか解説を入れる。



「まずその【恩寵スキル】っていうのを封印したんだけど、その膨大な魔力を今後も利用できないかってイクオが考えたの」


「そんなことができるの?」


「【恩寵スキル】からは例の死の魔力は発されない。だからその死の魔力を還元してアヤメちゃんの魔力に変える細工がしてあるの。もちろん【恩寵スキル】行使のリスクは発現しないよ!」


「そんな凄いことができるの!?」



簡単に言ってはいるが、これが大英雄レオンの力の一端である【演算魔法】と、魔力に愛されしアリアの【固有(ユニーク)スキル】を組み合わせた合わせ技の力である。ここまで複雑かつ高度な封印は世界を探してもほんの一部だろう。



「ま、てな訳でアヤメはかなり強大な魔力を保有していることになる。生かすも殺すもアヤメ次第だ」


「わ、わかった」



魔力量オバケであるアヤメが仲間に加わった。

封印状況の確認を済ませたあと、イクオはふと何かを思い出しサラに声をかけた。


「そうだサラ!」


『何だぁイクオ。旧人類のパンツでも見つけたか?食わせろ』


「んなけったいなアーティファクトあったとしても拾わねーよ!」



イクオはサラに耳打ちする。



「・・・アヤメの適性魔力は『火』だ」


『・・・・・何?』



サラは漢の顔に変わる。そう、何かを見つけたような。国中を回って探していた宝が見つかったような、あるいは長旅の目的を遂に達成したかのような表情へ変わる。



「サラ!どこへ行く気だ!?」



『決まっているだろう?  アヤメのパンツを食べに行くのさ!』



数分後。頭にナイフが深々と刺さった無様な精霊の死骸が発見されたとか。



  ~修行背景~



「どぁりゅうぇあ!!!」


「気合が独特!!」



戦闘経験の少ない転生者二人組に、アリアは稽古をつけてあげている。


がむしゃらに突っ込んでいるだけに見えて、【演算魔法】で冷静な対処を怠らないイクオ。

派手なイクオの陰に隠れて隙を伺い、そしてけっして隙を見逃さないアヤメ。


二人相手でもアリアは何の苦にも感じていない表情で二人をいなす。極寒の地でも関係なく汗水を垂らしてアリアに挑むが、一矢報いることすらできずにいた。



(ていうか。ここが極寒の地だろうとアリアが【風避けの魔法】をかけているから寒さはすごい軽減されているんだけどな!)



「てなわけで食らえ!!」


「どういうわけで!?」


「必殺 スーパー・アルティメット キィィィィィイック!!」



(っ・д・)≡⊃)3゜)∵ グシャァ



「ぐふぅ・・・まだまだぁ!」


アリアに突進。

直前で屈み、アリアの視界から姿を消す。そして地面に手をつき、逆立ちの体勢でアリアの顎目がけて足を突き出す。



「必殺 エクセレント・クリティカル・スマッシュ キィィィィィイイイイイックゥ!!!」



(っ・д・)≡⊃)3゜)∵ ゴシャァ



「けふっっ・・・なんのこれからぁ!!」



側転。バク転。バク転。【跳躍】

大ジャンプの後、アリアに目がけて跳び蹴りの体勢で突っ込む。レチタティーヴォ戦で見せたライ〇ーキックだ。



「必殺 超・究極・スペシャル・グレート・アポカリプス キィィィィイィイイイィイイイイイイイイイイっッッッッッッ  クゥゥゥウウゥウウウウウウウウ!!!!」



(っ・д・)≡⊃)3゜)∵ ゴシャ


(っ・д・)≡⊃)3゜)∵ ゴシャ


(っ・д・)≡⊃)3゜)∵ グシャァ



「へべぇぇ・・・!!」



上空から攻めていたイクオの背後からアヤメのナイフが飛んでくる。アリアは人差し指と中指で刃を挟んでやり過ごす。



「本命は後ろね?」


「なっ!?」



背後から素手で組技をきめようとしていたアヤメを逆に組み伏せて決着がついた。



「う・・・イタタ」


(死ーん)



「うん、アヤメちゃん強いね。ちょっと想像以上かも。スキルに取り込まれていた時期より冷静さがあるよ。相手の死角と意識を利用する戦い方が無意識にできるのは才能だよ」



天才少女アヤメは戦闘でも無類の才能を発揮していた。

生前では高等教育を施され、十歳とは思えないほどのスペックを誇る。知力はすでに大学生クラス。スポーツは万能。努力の域とかを完全に超越したスーパーウーマンなのだ。



「く・・・・・・」



(悔しい・・・・・・!!!)



というわけで敗北の経験が究極的に少ないのだ。学力でも運動でも大人にすら負けたことがないので、前世では碌に負けを経験していなかったのだ。

しかし、どれだけ百年に一度の天才であろうと、一万年に一度か下手すればそれ以上の神童には敵わない。



「次は絶対に勝つ・・・!!」

ガルルルル


「アハハ!やってみなさい!」



差を見せつけられてやる気をなくすわけではなく、逆に向上心が上がっているからやっぱり彼女には見込みがある。

問題は・・・・・



「イクオ。前から思ってたけど、何で蹴り技にこだわるの?」


「俺が蹴り技の方が好みだからだ!」



  ・・・・・



「そんな自信満々で言われても・・・」


「好みは大事だろ!【跳躍】スキルを持ってんだから蹴り技の方がパワーが出るんだよ」



事実。イクオは蹴り技の方が威力が高い。【跳躍】スキルの影響で、腕の筋肉より足の筋肉の方が力の伸びが強いのだ。



「確かに蹴りは威力が高いけど隙が大きいの!特に自分の腰より上を狙うハイキックはバランスが崩れやすくってリスクが高い!足をすくわれて敵前で転倒したとき、どれだけ隙ができると思う!?」


「うぅ~ん・・・」



どうもイクオはロマン思考が捨てきれず、火力の高い足技を捨てる気になれない。リスクを背負ってロマン砲をぶちかますという戦い方が大好きなイクオは拳でチマチマ攻撃したくないようだ。



「・・・別にそれで勝てればいいけど、でも私にはまだ一撃も攻撃を当てたことがないよ?死んじゃったらロマンも元も子もないよ?」



(む!)


「確かにそうだな。よし、拳の戦い方を学ぼう」



「え・・・想像以上に納得するのが早い!?」


「やけに素直じゃのう」


『もっとごねるかと思った』



「お前らなー。流石にロマン主義と死にたがりの区別ぐらいはつくぞ?」



「できてないよ」

「できてないのう」

「できてないわね」

『できてねぇよ』



早めの改心の褒美として、拳で隙を作り決め手の蹴りをかます、という戦法をアリアが教えてくれた。仲間たちの信用されてなさっぷりにイクオは大爆笑した。



  ~・・・~



『へーいアヤメちゃ~~~ん!』


「げっ。アンタはあの時確実に息の根を止めたはず!」


『何度でも蘇るさ!!』



少し前にサラは躊躇なくアヤメのパンツを所望した。アヤメの中ではサラは既に危険人物だ。いや、既に「ご主人になれ」と突っ込んできた豚がいた時点でここには危険な生命体がわんさかいることは招致済みだ。



「何よ。パンツはあげないわよ?」


『そうじゃねぇ。あれはちょっとした交流だ。パンツを食べあった中なら心が通じ合ったも同然だろ?』


「やっぱ何言ってんのかわかんないわ。殺す」


『まあ聞け』



コホンと咳払いをしてサラはアヤメに向き直る。

サラは話し出す。



『俺の故郷は南の大陸だ。南から西へ。西から北へやってきた。何故精霊王である俺がこんな不自由な旅をしているかっつったら、俺は素質を持つ人間を探してんのさ!』


「素質ぅ?」



アヤメは眉を寄せてサラの話を適当に聞く。

サラがイクオに会う前から旅をしていたのは紛れもない事実だ。南、西、北の大陸と、中央の大陸を中心に回るように旅をしている。(北の大陸が寒すぎて神聖王国に到着したころには魔力が尽きて国から出られなくなったのは秘密だ)



『条件は二つだ。一つは適性魔力が『火』であること。もう一つは保有できる魔力量がかなり多いことだ。素質を持つ者を旅をして探してきたがなかなかいなくてな』


「・・・あー嫌な予感がするわ」



アヤメの嫌な予感は的中していた。今まさにサラはアヤメをネッチョリと見つめて下品極まる笑みを浮かべている。

前世なら通報レベルの犯罪者顏だが、アヤメは先手を切って口を開く。



「アタシに素質があると?」


パンツ(That's)ライト( right)!!』


「もー最っ低!死ね!!ほんとに!」



サラはイクオに教えてもらった。アヤメの適性魔力は『火』属性。彼女には()()()()()使()()()()()だけの魔力も、才能も十二分にある。




『アヤメ!』


「何よ」







『俺と【契約】して、魔法少女にならないか!?』







「・・・・・は?」





?????『僕と契約して魔法少女になってほしいんだ!』





「・・・・・嫌」


『何故だ!?』



アヤメは某アニメのセリフが頭をよぎり、サラの申し出を反射的に断った。



「てか何でアンタが魔法少女を知ってるの?アタシの前世の知識じゃん」


『イクオが教えてくれた』


「アイツ・・・っ!」




・契約

今までピグに【仮契約】と称して力を分け与えていたことを覚えているだろうか。サラがアヤメにお願いしたのは【仮契約】ではなく、より密接につながりを作る【本契約】。一時的に魔力を譲渡するのではなく、契約を破棄しない限り永続的に続く魔力接続。当然その場つなぎの【仮契約】とは比較にならないほどの力を発揮する。




『いやぁしびれたね!ドレスを着こんで悪い敵をやっつけるんだろ?』


「その悪い敵に該当するのは間違いなくアタシたちだよ!」


『【契約】しようぜぇ~?最高だぜぇ~?強いぜぇ~?』


「う、うざぁ・・・!」



これが、後に世界に大きな影響を及ぼし、そして世界中で注目されることとなる『魔法少女』の原点。新人類の魔法少女の始祖アヤメとサラ。この奇妙なコンビの結成の時だった。



現在のイクオたちの実力ランキング。



一位 アリア

二位 ピグ

三位 アヤメ

四位 サラ

五位 イクオ



サラが精霊王としての力を取り戻したら、ピグを抜いて二位に躍り出ます。


なんと最下位イクオです。【演算魔法】が大物喰いな性能をしてるんで、実際に戦ったらかなり食い下がりはするでしょう。でも負けます。

今でこそ実力はこんなですが、イクオは今後どんどん強くなります。乞うご期待です。

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