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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一章 氷の国のロマン姫
39/74

その少女早死ににつき



『私に生きる力をください』


































































アタシの名前は『宮川 アヤメ』。ちょっと普通じゃない小学生だ。

ある日海に落ちて死んでしまって異世界に行くはめになってしまったアタシは、神様に生き残る力が欲しいと懇願した。


アタシが死んだのは十歳の時だった。もっと生きたかったし、幸せにもなりたかった。だから次の人生では少しでも長く生きたかったんだ。


才能にはとても恵まれていた。生まれた頃から記憶能力が高くて、一度見たものは全部覚えることができた。容姿にも運動能力にも恵まれていた。自分で言うのもなんだけど恐らく自分は天才と呼ばれる人種なんだろう。ただ親には恵まれていなかった。アタシはパパに海に突き落とされて死んだのだ。


だから長生きはアタシのあこがれだった。嫌だった親の目も届かない場所で自分の生きたいように生きる。戦が絶えないような時代らしいから、最低限の生き残るための力が欲しかった。


死んだ後に自称神様が出てきたときは少し期待してしまった。転生者には特典がもらえると聞いたときは、フィクションみたいな話のうまさに少し疑った。でも考えても仕方なかったから承諾した。冷静な判断ができなかった程度にはアタシは生き返りたかったんだと思う。


神様は快く引き受けてくれた。




【転生者特典】


【スキル ????Lv100】


【持ち主の意思に関わらずオートで発動する】


【自身よりレベルの低い相手に抵抗不可の即死を無差別にかける】


【顔を隠すと効果が解ける】




否が応でも理解した。アタシは何か得体のしれない強大な力を押し付けられたのだと。



  ~・・・~



「はぁ・・・はぁ・・・」


「・・・・・」


「・・・・・」


「うぅぅ・・・」






アタシはただ一人死骸の山の頂上で立ちすくんでいた。転生した直後、うっかり誰かと目を合わせてしまった。最初にスキルの餌食になってしまったのはこの大陸では偉い人だったのだろう。敵を討とうとアタシに寄って来る人々がどんどん増えていってしまった。



「誰か・・・誰か・・・!」


「・・・・・」


「・・・・・」


「うぅぅ・・・ぅ・・・・!」



死体は返事をしてくれない。アタシが殺したからだ。

寄ってきた人々は誰もがアタシを殺す気だった。それはそうだ。恨まれても当然だ。でもアタシだって死にたくなかった。殺そうと寄ってくる人々をどうにかするには、やはりあのスキルに頼らざるを得なかった。

アタシは次々と殺していった。



「お願い・・・誰か・・・・・」


「・・・・・」



アタシが求めた力はこんなのじゃない。


自衛のために力が欲しかっただけで、こんな人を殺し尽くすために力を欲したわけじゃない。長生きしたかっただけだった。今度こそ幸せに死にたいだけだった。

ただの言い訳だ。



「お願い・・・許して・・許して・・・!」


「・・・・・」



それでも、アタシは浅ましくも思ってしまう。許されない事だと分かってても思ってしまう。



「許して・・・許して・・・許して・・・!!」


「・・・・・」


「・・・・・」



誰かに許してほしかった。これだけの人々を殺しておきながら誰かに『許す』と言ってほしかった。



「許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・許して・・・」



アタシはひたすら泣きじゃくった。誰も聞いてなどいない死骸の丘でただ一人許しを請うた。

一言「許して」と言う度に心が溶けていく。大事なことを一つずつ。

口調も、趣味も、趣向も、思想も、家族も、そして・・・



「・・・あれ?()は何に許してほしかったんだっけ?」



人を殺すたびに私は【スキル】の力に魅了されていった。




  ~現在~




「アアアアあああアァァァァぁアアアアあぁあぁあああ!!」



少女の額にはイクオの【スクリプト】が貼られている。効果は【魔力放出】。術者は少女に書き換えられており、少女から魔力が際限なく放出されている。



「よぉぉおおし!!上手くいったーァ!!」


「でかしたイクオ!!」



(このまま魔力を出させ続ければこのロリッ子の魔力はいずれ尽きる!厄介な【恩寵スキル】さえどうにかしちまえば後はどうにでもなる!!)



少女の額から超高密度の魔力が大量に放出される。いかに【恩寵スキル】の持つ魔力が膨大だったとて、これだけのスピードで消費させ続ければ必ずバテが来る。

少女は急激な魔力の消費に叫び声をあげる。



「後はすんなり魔力が尽きるまでロリッ子がおとなしくしていれば問題ないんだが・・・」



「あああああアアアあああアアアアアあああ!!!」



「流石にかわいそうだな」


『魔力が無くなるときってのはちょっと不快感を感じるだけだ。それがあの絶叫って。一体どれだけの魔力が放出されてんだろうな』



少女に相対する四人は改めて【恩寵スキル】の強大さをその眼に焼き付かせる。これが本来誰も到達することのない【Lv100】の力。生物や無生物のあらゆる限界を超えたこの世の原理を超越した力。



「ああああアァァァァああアァァぁあああアアア!!!」


「・・・ッ!?アリアッ!!!」



魔力の動きに変化を感じた。イクオは【演算魔法】によりその微細な動きを感じ取った。

アリアを突き飛ばす。少女から死の魔力が放たれた。その軌道はイクオが突き飛ばすまでアリアがいた場所を通過し、イクオの二の腕の一部をえぐり取り雪原を通り抜けた。



「イクオ!?」


「ぅッッッ痛ぅ!!!」



イクオの腕からボタボタと血がこぼれる。ブラリと力なく腕が垂れ下がりイクオは苦痛に声を出す。



「ご・・・ゴメン!」


「ワッハッハーかすり傷だこんなもん!!あぶねーから下がってな!あれを感知して回避できるのは俺くらいなもんだ!!」



「アアアアぁアアああァあぁぁぁぁああああああ!!!」



少女から死の光線が放たれ続ける。イクオは体重移動だけでかわし続ける。



「あーあーメチャクチャしやがって。待ってろ、今そこに行くからよ」



一歩ずつ少女に近づく。少女から放たれる光線をイクオは右へ左へかわしながらスピードを落とさずズンズンと突き進む。



「何をするつもり・・・?」


「さあのう。イクオが何をするのか、ワシは今まで読めたことがない」



距離を詰めるごとに光線の密度は上がっていく。体の面積的にかわせない密度になってもイクオは進むのをやめない。体のいたるところを死の光線がかする。



「チッ・・・また血だらけになっちまった。アリアに治してもらったばっかだってのに。でも・・・」



雪を踏みしめる。



「ここまで来たぞ・・・!」



少女との距離は一メートルもない。際限なき吐き出される魔力に苦しむ少女、イクオは手を伸ばす。

そして【スクリプト】に人差し指を当てた。



「・・・ロリッ子。お前は俺の一つの結末だ。俺にも訪れたかもしれなかった一つの未来だ。だから、俺はお前を見過ごさねー!」



レチタティーヴォとの決闘では放たれなかった技。そらはこの技を使ったらイクオは戦えなくなるからだ。故にイクオはこの技を放てなかった。しかし、少女が動けない今、この欠陥ともいえる技をいかんなく発揮することができる。

それは【演算魔法】と【集中】の複合スキル。




「【過剰な発電機オーバー・コンセントレーション】」




その力は至って単純。【演算魔法】ギリギリの制御範囲の魔力で【集中】スキルの出力を限界まで引き上げる超集中。

この力で【スクリプト】に干渉し、魔力放出口を一点に絞る。死の光線が無造作に放たれることなく上空に一点で放たれる。



「アッガアアアアアアアアアアア!!!」



「イクオ!?」


「奴め!まさか【オーバー・コンセントレーション】を使ったのか!?」



ピグとサラは声をあげる。この技は危険なのだ。



『あの技はただでさえ消耗の激しい【集中】スキルの出力を底上げする技だ。脳に過剰な負担がかかるんだ!』


「【集中】は精神面での負担が激しいのにさらに出力を上げてるの!?」


「あぁ。最悪、廃人になる可能性すらある危険な技じゃ」



イクオの鼻から血が流れる。否、鼻だけでなく耳や目からも血が滲みだす。仮面の裏から吹き出した大量の血をものともせず、イクオの脳は限界を超えて回転させる。【恩寵スキル】の膨大かつ複雑怪奇な魔力を解析しコントロールするには、今のレベルでも全然足りないのだ。だが、



「お、、、、ご・・。・・:。・l;「^-;あ^;「」・¥」「ア”、。。。・「-」^「;:;」



それでも死の魔力が行き先を変えていく。上へ収束するように束生っていく。



「す・・・すごい」


「放出口を『細く多く』ではなく『デカく一つ』にする気じゃな?」


『デカい穴一つ開けたらそこから勝手に穴が広がっていく感じか。それなら俺らへの飛び火が少なく魔力も早く抜ける!』



今イクオの脳は過去一番に冴えわたっている。【恩寵スキル】の解析を行えているのは、魔力の扱いに慣れてきただけか、それとも同じ【恩寵スキル】を持つ者としてその構造に詳しかっただけなのか。

イクオは凄まじい速度で魔力を乗っ取っていく。




()・・()・・・・・()・・・を・・・・・」




「あ?<。・;=^」*?>?‘:-」」



魔量の激流の中、微かに少女の声を聴いた。




「こ・・ろし・・・て・・・・・・・」




「’()~|なんだ+L<?_‘_.,:,〕お前,/]:;l;正気になったのか?。:」:。・。」


(【恩寵スキル】の力に負けてしまえば楽だっただろうに。お前は罪悪感と戦い続けたのか。こんな土壇場で正気に戻るとは)



「。。。。・、:・・・、::;。・・・・:。:」;「0・・・・・・;」・・・ん‶ん!!」












「許すよ」












「・・・!!?」



「何万人の人がお前を許さないだろうと、俺はお前を許す」



「・・・・・・・」



「転生者って嫌われるよな。人様の世界に土足でヅカヅカ入り込んで、チートスキルで好き勝手。そりゃー嫌われるさ」



「・・・・・・・・うぅ・・・」



「嫌われ者同士。仲良くやっていけるとは思わないか?」



「ぅぅうう・・・・・ぅあぅううう・・・・・」



「しんどかったな」










「ウアア、アアアアア、あああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァああああぁぁぁぁぁああああああアアアアアアあああぁぁぁぁぁぁああああああああアアアアアああああああああああァァァァああああああああああアアアあああアアアアアああア”アアア”アアアア”ア”ア”ア”ア”」






全ての魔力が上空に放たれた。








『二人目の転生者』

宮川 アヤメ


Lv100

平常時魔力量      8,800

限界魔力量       12,500

恩寵スキル有りの魔力量 測定不能


職業  暗殺者


スキル 【???? Lv100】



・詳細


本当は誰よりも心優しい少女だった。



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