表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜異世メン〜  作者: マルージ
第一章 氷の国のロマン姫
3/74

万引き常習犯が板に付いた主人公

スキル【仮面職人Lv6】

なんか仮面に拘りたかったから手に入れたスキル。


「ステータス!」と唱えればウィンドウが出てくる訳ではない。ステータスは街のどこかしらにある鑑定板たる物で調べてもらうことが出来る。でもステータスを表示するだけで触っても操作をすることは出来ない。じゃあスキルはどうやって取得すればいいのか。


実はスキルは売ってある。


[スキルスクロール]たるアイテムに自らの血で拇印すればスキルが手に入るのだ。

イクオは【仮面職人】で作った仮面を被り、スキルスクロールが売ってある店に来ている。


(お金?あるよ心の中に)


万引きする気満々である。良い子も悪い子も絶対に真似してはいけない。


「スキル【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】・・・・・・・・・ここら辺は魔法ばっかだな」


(まぁ魔道具店に来てんだからまぁそんなもんか。魔法は確かに使いたいが独学でレベルを上げんのはキツいしな。【跳躍】だったらまだしも)


「おっ!この【火魔法】のスクロール、著者が賢者ラインヘルツのものじゃねぇか!良いもんあるなぁ。・・・・・・値段高っ」


同じスキルスクロールでも著者によって効果はピン切りだ。比例して値段もピン切りだが。


「んー。まぁ買わなくてもいいかな・・・」


(んん?)


イクオの耳がピンと大きくなる。(※比喩表現です)何か興味深い話が聞こえたようだ。




「何ですか?この厳重に保管された箱は。魔剣でも仕入れて来たんですか店長」


「スクロールだよ、スキルスクロール。いいのが手に入ったんだよ」


さして理解してなさそうな店員を後目に店長はウキウキ気分で箱を開ける。かなり古そうなスキルスクロールが入っていた。店員は後ろから著者を覗き見する。


「・・・・・・大英雄レオン!!?」


「しぃぃぃいいい!!」


大英雄レオンの名を知らない者はこの時代には存在しないだろう。知名度だけで見れば前世の『イエス』に匹敵し、全世界から神格化される程の支持を得ている存在である。


「何処から手に入れてきたんですか!?」


「裏ルートで出回ってたんだよ。俺のコネから運良く手に入ってな」


「非合法じゃないですか!」


「バッカ、バレなきゃいいんだよ!こいつを上手く捌けば俺たちは一生遊んで暮らせるぞ」


「ダメです!返しましょう!」


「何故だ!!」


「騎士に捕まれば打首じゃすみませんよ!?」


「手に入れた金で西の大陸にでも逃げればいいんだよ!」


店長と店員がしっちゃかめっちゃかしてるだけで済んでいるが正直な所、事の重大さは店長も店員も両方が理解していない。

仮に本物なら国家レベルの大事件だ。裏ルートで出回るにしても大手でもない平凡な店に回ってくるはずはない。

回ってくるとすれば誰かの陰謀が必ず混じっているだろう。


「だから返しましょう!」


「いーや絶対に売る!」


「返しましょう」


「絶対に売る」


「返す!」「売る!」「返す!」「売る!」「返す!」「売る!」「返す!」「売る!」


「「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」」


「店長ー?」


「何だ新人!?今大事なところなn・・・」


「ここに置いてあったスクロール。誰かが取って走っていったけど大丈夫なんですか?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「「へ?」」



(スタコラァ!!)



してやったりという顔を仮面の下で浮かばせ一目散に走り出すイクオ。凄まじいスピードで走るので近くにいあわせた人は冷たい風を思い切りに浴びてしまう。


「うわ冷たっ!」


「キャッ!」


『あぁぁああ!!俺の盗んだパンティがぁああ!!』


風に吹かれて皆が慌てている中、一人の少女は風のように走っていった仮面の男をしかと捉えていた。


「うん?あの人は指名手配犯の・・・・・・えーと、誰だっけ?」


「アリア様ぁぁあ!何処へ行かれたのですか!?帰ってきて下さぁぁああい!!」


「うーん・・・・・・・・・ま、いっか。逃げよっ」


元々お転婆な姫は政略結婚の話が上がってからというもの活動が活発化している。


跳ね回る犯罪者と神聖王国屈指の実力者。二人とも逃げられると中々捕まらない。



  ースラム街ー


(ぐーるぐーるとスラムを回ってハイ、アジト到着)


「やったぞサラ!最高の収穫だ!!」


『パンティ返せオラァァァァ!!!』


「えっ?備蓄パンツは全部お前の腹の中だろ?」


『新パンツの調達に行ってたんだよ!!』


備蓄米。新米。パンツを米みたいに言うのはやめて欲しいものですね。


『てめぇがあの時馬鹿みたいに走ってなかったら今頃俺は採れたてホヤホヤのパンティを幸せに咀嚼していた所だ!!』


「そんな事よりサラ!これを見ろ!」


パンティ(あ?何だ?)


「言語力が遂にパンツ(ショート)したか」


イクオの手には誇らしげにスキルスクロールが握られていた。著者には大英雄レオンの名がドンと乗っかっている。


「大英雄レオンのスキルスクロールだぞ!!」


『は?馬鹿じゃねぇの?』


(えー?)


イクオは何故自分が馬鹿と呼ばれているのか理解できていない顔をする。もっと大騒ぎしまくってむせてゲロ吐くほど暴れるかと期待していたらしい。


『こんなん著者を偽って売ってるに決まってんじゃねぇか。確かに本物のレオン著だったらパンティどころの話じゃないが、99.99999%パチモンな物を誇らしげに見せつけられてもなぁ』


「つまんねー反応だな。コロッと騙せれたら面白かったのに」


『コロッと騙されてんのは誰だよ。パチモン残してもろくな事ねぇから使わねぇなら燃やすけどどうする?』


「いや、せっかくだし使おう」


『効果は期待すんなよ』


イクオは親指を噛み切りもう一方の親指に血をつけてスクロールに


ドンッ と押した。


スクロールから魔力が流れる。この魔力はスクロールの製作者の魔力だ。魔力は精神の力。

スクロールからは偽物を作って騙すような姑息な人間とは思えないような魔力が流れていた。


(何だか心が落ち着く魔力だ。安らぐような・・・気持ちが軽くなるような・・・・・・)


やがて流れ出した魔力の波は収まり、いつも通りの薄暗い部屋に戻る。


「スキルゲットだな。スキルの名前を見ずに使っちまったけど何のスキルが手に入ったんだろうな。

ん?サラ?」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


「サラ?おーい、サラー?」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


「・・・・・・返事がない。ただの変態のようd」


『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!?!??!??!』


「え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"!!?!?!!?!?」


『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛オエッほゲホゲホオブエうげップホグええええええエエエエエエエエエエエエeeeeeeeerrrrrrrrrrrrrr』


「ワオオオオオオオオおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおOOOOOOOOoooooooおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉ(ビブラート)


『ぷあアぁァaA下鐚亞婀猗阿啞堊ああああああああああ娃鴉唖窪椏呵蛙閼亜烏ああああああああああ錏痾葩丫雅襾欹熈粤于ああああああああああ咨吁煕嗚熙嗟齎嗚呼あああああああああ


「ほぉぉぉぉぉおおおおお( クレシェンド )おおおおぉぉぉぉぉぉ( デクレジェンド )ぉぉぉぉおおおおお( クレシェンド )おっおっおっおっおっ(スタッカート)オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ(ただの汚い咆哮)



大騒ぎしまくってむせてゲロ吐くほど暴れたサラだった。





【演算魔法Lv1】


【演算魔法が使えるようになる】


【このスキル所持者は思考が早くなる】


【著者 レオン・ロイヤル】





「ふーっ、ふーっ」


『ぜーっ、ぜーっ』


『と、とにかく。スクロールから噴出した魔力を見るにレオン本人の物だと判断した。すまん、まさか当たっていたとは』


「ふーー。まじで?それはそれで疑り深いけど間違い無いの?」


『あぁ、断言する。あれは間違い無くあいつの魔力だ。ムカつくほど大らかな感じ、見間違えるはずない』


「まるで本物と会った事があるような言い草だな」


『まあな。レオンは長命な亜人種だ。まだ存命だぞ?』


「え?死んでるかと思ってた」


(レオンが活躍したのは確か400年ほど前のはず。そんなに長命な種族居たっけ?そもそもやった事が神話級の偉業だからもっと遠い存在かと思ってた)


『それより何のスキルだったんだ?』


「えぇーっとなになに?え、演算魔法?あまり馴染みのない魔法の名前だな。どんなことができるんだ?」


『演算魔法かぁーそうかぁー』


『・・・・・・・・・・・・』


『演算魔法かぁぁああ』


「何?何なの?なんか文句でもあんのかよ」


サラは頭をかいて唸る。演算魔法と聞いてからというもの落胆の気持ちを隠せていない。


『いや、何て言えばいいかな。使い所に困るんだよ演算魔法って言うのは』


「演算って言ったら計算か?戦闘に特化した魔法には聞こえないが具体的に何すんの?」


『魔力を感じ取って数値化する』


「・・・・・・・・・・・・だけ?」


『・・・・・・だけ』


「はああぁぁぁああああん!!??」


『いやいや実際それだけしか使えないなんてことは無い筈なんだが確認されてないんだ。魔法の一ジャンルとして確立している以上何かしらの使い道があるはずなんだがー・・・』


「・・・見つかってないってか・・・・・・」


(神様から贈り物を授けようと言われて たわし が送られてきたもんだな。いや、【イケメンの恩寵】も大概か)


上げてから落とす。伝説の英雄からそれをぶちかまされると流石にイクオにもダメージが入る。


「演算魔法・・・・・・名前だけ聞いたらマニアックでロマンなんだけどなぁー」


(ロマン?・・・・・・ロマン・・・・・・・・・)


「ろくに使えないかもしれない魔法の活用法を一から編み出すのはロマンだな!うん、できたら最高じゃねーか!」


『プラス思考すげぇな』


「サラ!魔法ってどう放つんだ!?」


『適当に思いついた詠唱でも叫んどけ』


(ウォォ!スーパーサ〇ヤ人のように魔力を波動の如く溜めるイメージィィィ!!)


「はっぱろくじゅうしぃぃぃいぃいいいい!!!!」


《ヴォン》


「でけた。おぉー?頭の中に記号がインプットされたが何だ?」


《♢♤kanimoito♢♤itanatiri♧♤♤♤》


「はぁ? えぇーっと(ダイヤ)(スペード)か、カニモイト(ダイヤ)(スペード)イタナチリ・・・・・・何これ?」


『kanimoitoは魔法文明語で掛け算、itanatiriはイコールだ』


「ほぉーん?じゃあダイヤスペードは8を表すわけだ」


『ダイヤスペードは知らん。魔法文明語では無いな』


(にしてもわざわざ8なんて数字に2文字使うのか。仮にこのトランプのマークを数字記号とすると8進歩はあるわけで・・・いやトランプマークだから4進法と仮定できるな。となると♢マークは・・・・・・・・・・・・)



イクオはここまでの思考に僅か1秒もかけていなかった。



演算魔法は思考の力。何かを探求する時、演算魔法術者の思考は恐ろしくクリアになる。一流の演算魔法使いが何か計算をする時の思考スピードは凄まじく、前世のアイテムである電卓が数字を表示するよりも早く答えを導き出すだろう。これが戦闘中に発動したらどうなるだろうか。


それが今は亡き魔術【古代演算魔法】。現代の演算魔術はどの現代魔術よりも衰退していた。


【古代演算魔法】を使えるのは今この世界ではレオンとイクオの二人だけだ。

レオンはイケメンエルフです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ