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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一章 氷の国のロマン姫
16/74

Wedding



「・・・失礼しますよ・・・・・」


「あっ!あれはああああ!!」※モブ貴族


会場入口から背広らしき洋服をきた男性が現れる。顔にはシワが深くまで刻み込まれていて絶望に落ちているかのように暗い顔で下を向いて歩いている。


「西の大陸の大手会社社長!シーニ・ターイン様だぁぁああ!!大手会社になったはいいけど部下に裏切られたり妻に浮気されたりと、人生勝ち組なんだけど一生負け組でもある可哀想な男だぁぁあ」


「ふふふ・・・どうも・・・・・」※モブ社長です



「私の席は何処でありんす?」


「おぉぉおっとぉおお!?美しい民族衣装に身を包んで現れたのはぁぁああ!!?」※モブ貴族


次に現れたのは美しい装飾が凝らされた衣装をきた女性だ。とてもふくよかな体をしている。そう!とてもふくよかな体をしている!!


「南の大陸の富豪!デブリマ・シータ様だぁぁあ!!彼女は屈指の美食家にして怠け者なので、食っちゃ寝食っちゃ寝を繰り返している内に取り返しのつかない怪物となってしまった南の巨人だぁぁあああ!!」


「早く私にご飯を用意するでありんす」※モデブです



「ここかYO!結婚式会場っつーのは チェケラッ!」


「な、なんとぉ!あの姿はぁぁああ!!」※モブ貴族


ロックな格好をした男がズカズカと入ってきた。ギラギラとてかるジャケットに身を固め、派手な髪の毛を目立たせる。しかし髪の毛からはひょっこり小さな小鳥が顔を出していた!


「西の天才アーティスト!トリニ・ハーハー・コーフンだぁぁああ!!西を震撼させた天才アーティスト!しかしその実態は獣を見るとトロ顔になるキモさMAXのケモナー野郎だぁぁあああ!!」※モブ貴族


「おほぉぉおおヨチヨチ可愛いでちゅねぇええ!!はぁはぁはぁはぁはぁ!!」※モブだベイベー



「おや、もうこんなに集まっていたのか」


「な、なにぃぃいい!?あの御方はぁぁああ!!」※モブ貴族


白い洋服に身を包み現れたのは白い髪をした男性。良い人そうなその姿の影には損な役回りをさせられ続けていると容易に想像できる幸薄そうなオーラをビンビン宿していた。


「北の公爵閣下!アルセーニス・イェレミエフ様だぁぁああ!!閣下は凄い仕事の腕前だが育児に関してはテンでダメダメで、長男から末っ子まで皆ゆうことを聞かなくなってしまった情けない大黒柱だぁぁあああ!!」


※モブ貴族です

「いやモブじゃないからね!?名前で分かるよね!?そもそも何その実況!!酷くない!!?」



「狼狽えてはいけませんよ。あなた?」


「あぁぁあっと、このチョロそうな声はぁぁあ!!」※モブ貴族


次に現れたのは美しいドレスを着た女性だ。とても気合いの入れた化粧をして来たようでピッカピカのオーラをまとったその女性は、もはや後光すら見えるようだ。目に見えるソワソワ感が顔に写っていなければ!


「北の麗しき公爵夫人!クリスティアラ・イェレミエフ様だぁぁああ!!結婚を申し込まれた時は血が沸騰するほど赤面し、娘に好きと言われれば日頃の疲れを全て忘れる教皇もビックリのチョロッチョロ大奥様だぁぁあああ!!」


※チョロいです

「ほんと失礼ね・・・!」


「ティアラ・・・。その顔止めるんだ・・・」


「あと血が沸騰したら普通死にますからね!?」



「な、何と言うことでしょう!!後から続々と登場する方々も世界に名を馳せる凄まじいモブ共です!!かつてこんな日があったでしょうか!?これ程まで質のいいモブが集まる日が!他にあったでしょうか!?」

※ モ ブ 貴 族 ! !



「あの大変失礼な貴族は誰?」


「男爵家だよ」


「爵位最底辺じゃない!何であんな口の利き方できるのかしら!?訳が分からないわ・・・・・」



お察しの通り今話し合っている二人はアリアの親族であるイェレミエフ夫婦である。大体はモブ貴族の説明通りである。



「あああーっとぉお!ついに現れたァァ!!」


王冠。杖。純白の服。その姿は小柄だが柔らかな雰囲気の裏にはこの国を背負う覚悟が目える。【啓示】の力でこの国を導く預言者。この国の象徴にしてトップ。


「北の教皇!エリザベータ7世だぁぁああ!!一族皆、突然に神の電波を受信し出すオカルト一族だぁぁああ!!」


「不 敬 罪 !!」



アンジェリーナにぶっ飛ばされてモブ貴族は気絶。そのままズルズルと運ばれていった。



「あっ!あの男が連れていかれた!」


「でしょうね・・・」



モブ貴族が居なくなったとしても凄い人の集まりだ。騒ぎの声は静まらない。ここに居る多くは各国から集まった重鎮達だ。社交的な会話があちらこちらで聞こえてくる。



「・・・見た所、南と西のトップは来ていないみたいね」


「そうだね。西のトップは忙しい立場だし、南のトップもまぁ興味は無いだろうから来ないだろうね。西のトップは間違いなく来たかっただろうけど・・・」


「そうね・・・あの人はレチタティーヴォをとても買っていらっしゃるから」



会話が止まると二人ともソワソワしてしまう。今日は娘の結婚式なのだ。嬉しいような寂しいような感情が二人の心の中で渦巻いていた。



「・・・・もうアリアも結婚か・・・早いな・・・」


「・・・そうね・・・・あらいけない。何だか涙がでそうだわ。歳をとると涙脆くなってしまってダメね」


「ふふふ。そうだね・・・困ったもんだよ」



こういった会話を続けていると突然電気が消える。ザワザワと音を立てる人々だが、突如現れるスポットライトに目を奪われる。スポットライトの先には・・・



「・・・・・・本日はよくお集まりになられました。私はこの国の枢機卿 デニスでございます」



デブリマ富豪程ではないが小太りな男が現れた。枢機卿とは聖職位の一つで、教皇に次いで位が高いとされている。実質この国の権力No.2である。

周りから拍手が起こる。



「・・・ありがとうございます。まず本日の結婚式にお集まり頂いたこと、誠にありがとうございます。本日はお達しの通り、この国の公爵令嬢であるアリア・イェレミエフと、『執行の騎士』レチタティーヴォ・アルハンゲルスキーの結婚式でございます。

それでは、新郎新婦の入場です・・・・・」



二人の男女が現れた。

白く肩まで伸びていた髪は纏められて、美しいヴェールを掛けられている。ドレスの布は引きずる程長い。

『魔力に愛された子』アリア・イェレミエフ


ストレートの前髪は上にアップされている。ピシッとしたタキシードに身を固め、堂々と歩く。

『執行の騎士』レチタティーヴォ・アルハンゲルスキー



辺りから拍手や歓声。その他にも多くの声が聞こえてくる。

レチタティーヴォの結婚を祝福するも悲しむ女性達の声、アリアを狙っていた男性達の悔しがる声。また値踏みをする様な目線や、ただ仕事だと何となく拍手を贈る者もいる。



「アリア・・・立派になって・・・・・」


「そうだな・・・・うんっ・・・うんっ・・・!」



中には泣きながらこれ以上に無い祝福を贈る者もいる。(アリアは内心申し訳なく思う)




「新郎レチタティーヴォ・アルハンゲルスキー

 貴方はここにいる新婦アリア・イェレミエフを

 健やかなるときも病めるときも

 妻として愛し

 敬い

 慈しみ

 生涯お互いを支え合うことを誓いますか?」


「・・・誓います」



「新婦アリア・イェレミエフ

 貴方はここにいる新郎レチタティーヴォ・アルハンゲルスキーを

 健やかなるときも病めるときも

 妻として愛し

 敬い

 慈しみ

 生涯お互いを支え合うことを誓いますか?」


「誓います」



辺りはいつの間にか静まり返っていた。皆が真剣に二人を注目する。二人ともこの神聖王国では屈指の美男と美女だ。その二人の結婚する姿は、この空間の全ての人を釘付けにした。



「それでは・・・誓いのキスを・・・・・」


しかし、


「少しお待ち下さい・・・」



アリアは誓いのキスの直前で止める。皆が驚く。再びざわめき出すがレチタティーヴォと教皇だけはまるで予知していたが如く冷静だ。



「私はこの誓いのキスをオペラの発表会の時で行いたいと思っております」


アリアはそのまま話し出す。


「私達の出演させていただく『氷の国の姫』。異国の王子と姫の永遠の愛を誓う物語。

私はこの物語の王子と姫のキスをするシーンでレチタティーヴォ様に舞台に上がって貰い、その時に行いたいと思っております」


ザワザワと結婚式の会場は音を大きくしていく。その中、レチタティーヴォとアリアは小声で小さな会話をする。


「アリア様・・・・・」


「レチタティーヴォ。聡い貴方ならもうお気づきでしょう。私は今は誰ともキスをする気は無いの。貴方とキスをする時は・・・・・イクオとの決着に勝利してからよ」


「・・・貴方なら或いは・・・・・いや、貴方なら必ずそう言うと思っていました」



会場の声は色々だ。神聖な誓いの儀式にその様に手を加えるとはと非難の声を浴びせる人々もいれば、そのロマンチックなやり方に感激する声もまた多くある。



  カ ァ ン ッ



杖をつく音が会場に響く。教皇は一瞬で会場の空気を変えた。

教皇は短く



「・・・・・・・・アリア・イェレミエフ。貴方の要求を飲みます」


そう言って席に座り直した。



「ありがとうございます・・・」


アリアは深く礼をする。レチタティーヴォもまたそれに続く。

教皇が許してしまえば最早それまでだ。教皇の言葉は神の言葉と何ら変わらない。騒ぎ立てていた者共も喋るのをやめた。







「・・・で、あるからして・・・・・その様に・・・・・・・・そしてその心こそが・・・・・・・・・」


枢機卿の長い口上はこの際は割愛する。これからの結婚式のスケジュールとしては


1 デニスの挨拶


2 乾杯


3 会食、歓談 


4 オペラの発表会


5 お開き


と言った感じだ。もっと色々有るんだろうがダイジェストに行こう。



「では、ゲストの皆様も存分に楽しんで頂ければ幸いでございます。」



長い枢機卿の言葉もそろそろ終わり。多くの人々からしたらこれが本命であろう会食、歓談の時間が始まる。



「それでは、皆様も」


枢機卿は皆がグラスを持ったことを確認する。


「乾杯!」



「「「「乾杯!」」」」









  〜・・・〜



「アンジェリーナ様!今の所は例の男の気配は見当たりません。どの入口、どの窓を探しても侵入した形跡すら掴めません」


「・・・あぁ。私も感知魔法と魔力感知を駆使して探しているが見当たらないな」



厳重に厳重を重ねた警備。昨夜あれ程大々的にイクオ達は予告を出した。それゆえに会場にいる人々は少なからず不安を抱いている。

アンジェリーナは徹底的に警備していた。



(魔力感知に引っ掛からないのはおかしいな。魔力は意志の力であり生命の証だ。生ける者は魔力を誤魔化すことは出来ない)



どうも煮え切らない気持ちだ。イクオなら必ず潜入してくるとアンジェリーナは踏んでいた。だと言うのにイクオどころかサラマンダーに類似した魔力でさえ全く見当たらないのだ。



「・・・魔力を誤魔化すことは性格の根本を変える事か死ぬ事を表す。現在イクオは潜入していないと考えていいだろう」


「はっ!」


「油断はするな。考えられるとしたら奴は何処かで機会を伺い、速攻でカタをつけるつもりだ」



(とは言うがそれもあまり現実的では無い。入念に準備しじっくり計画を進める方が安全だし確実だ。だが奴はリスクを冒して大胆に行動することを嬉々としてするだろう)


今度はアンジェリーナ達が攻勢に出る。会場に居ないのならば今度はこちらから探しに出る。何をしでかすか分からないイクオに先手を打たれるのはできるだけ避けたい。



「待機していた捜索班を出せ。街の隅々まで探し出し必ず捕らえろ」


「はっ!」







アンジェリーナは少なくとも会場にはいないと判断した。現時点での生命から感じられる魔力の遮断は不可能な技術。

とは言え網目のように張り巡らせた感知網を引っ込めるわけにはいかない。引き続きアンジェリーナは教皇の護衛も含め、感知を続けていた。


その時アンジェリーナは感じ取った。

驚くべき現象を・・・・・








「・・・・・・何!?」


「アンジェリーナ様!どう致しました!?」


「そんな・・・馬鹿な・・・有り得るはずが無い・・・・・!」



確かにアンジェリーナはイクオの魔力を一瞬だけ感じ取った。


そう 『一瞬だけ』



「突然現れ・・・・・消えた・・・?」



今宵、結婚式にてイクオの力は猛威を振るう。

なお、親族より先にゲストが来ていることはツッコんではいけない。


レチタティーヴォの親族も来てます。しかし新キャラが多過ぎると大変なので名前等も出さず進めます。今後も登場させるかは分からないので。

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