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〜異世メン〜  作者: マルージ
第一章 氷の国のロマン姫
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邂逅そして遭遇


「馬鹿者!!」


『へぷぅ!!?』


豚が精霊を殴る。色物しかいない奇妙な空間だ。


「お主にはパンツを食う事しか変態さをアピール出来んのか!!」


『な 何だと!?』


サラは目を見開く。確かにサラは安易にパンツを食べる事でしかキャラを立てれていない。確かにそれは紛うことなき変態の所業。

しかしサラからパンツイーターを除くと・・・


「お主は何も残らんではないか!!」


『っ!!?』


サラは衝撃を受ける。

ピグは涙を流していた。それは悲哀の涙。ピグは憂いていた。そのような安易な変態では生き残ることはできない。荒波の如く訪れる変態共の波に。


「未練とともに散っていった変態の卵たち。ワシにはもう耐えられない!!お主はこのままでは散る!!それでいいのかぁ!?」


ピグからMを取り除いたとしても、はね回るゴム状の豚という果てしない存在感は消えない。

一つだけではダメなのだ。変態共の世界では一つの武器では生き残れない。いずれチリの如く消えるのみ。


「お主が・・・お主がっ!!散っていった変態達の無念を背負うのだ!!」


『そんな・・・・・できない!俺はゴミだ!!』


「そーだな」(イクオ)


『変態としての誇りもなく、ただパンツを食うことしかしてこなかったゴミだ!!そんな俺が、散っていった同胞の無念を背負うなんて・・・俺にはできない!!』


「できないのではない!やるのだ!!」


ピグは声を張り上げる。目に浮かんだ涙を散らしながらキッと前を向く。揺るぎない目でサラを睨む。


「ワシにはパンツを食うことはできん。そんな尊い世界・・・Mのワシには到底真似できない!お主にしかできない事じゃ!!」


『お・・・・・俺にしか・・・』


「共に生き残ろう・・・同胞の無念を背負い、生きていくしかないのじゃ。変態の道は険しい。だがろこそ・・・」


ピグは目をつぶる。同胞たちのことを思う。



「俺に構わず先に行け」と言ってピグの身代わりとなって更生班の餌食となった露出狂を・・・


「あたし・・・いや、俺には無理だ」と道を閉ざしてしまったオカマを・・・


「もう、無理なんだよ!幼女が好きなだけなのに!幼女と結婚したいだけなのに!!」と泣き崩れて心が折れてしまったロリコンを・・・



目を開ければ同胞がいる。まだ幼い卵だ。いずれ大空に向けて羽ばたくであろう。それまでに守り切るとピグは決意する。


「だからこそ・・・・・夢がある・・・」


『うぅっ・・う・・・師匠ぉぉおぉおおおお!!!』



サラが帰ってから起きた変態共の邂逅である。






アリアはレチタティーヴォ邸から中心街へと帰っていった。一週間しか滞在しなかった。


(おのれ。もっと長くいて欲しかったなー。つっても「一ヶ月後にまた会おう」なんてカッコイイ別れ方してしまったからなー。今更会いに行くのもなー。カッコ悪いもんなー)


イクオは退屈そうに悶々としながらサラの持ち帰ってきた情報を読んでいる。実際退屈ではない。寧ろこれから忙しくなってくる時期だ。


現在はアリア誘拐作戦半月前。サラが帰ってきたのでその情報を元に作戦会議を開いている時だ。半月も潜入していたので持ち帰ってきた情報量は膨大だ。なのでそれらに目を通していた訳だが・・・


『突然ですが・・・・・』


「なんじゃサラ」


「・・・聞きたくねーな。何をやらかした?」


『法の騎士にバレた』


「あーあ」


「ヤバイのぅ・・・」


(聞きたくない情報だった。という事は本番の警備は最高クラスか・・・。相手が俺だから手を抜くなんてこたー無いだろうなー)


イクオは実力が無いくせに警戒度は高い。恐らく今回でイクオを本気で捕まえに来るだろう。

情報資料に目を通してみたが『断罪の騎士』ゲオルグ・イェレミエフが現れることは無いそうだ。それが唯一の救い。


「自分の妹の結婚式に参列しねーのな」


『帰りたいって言ってたらしいけど魔族との争いが激化してるだとよ。結婚式に現れる可能性は無いと見ていい』


「何だー?魔族との争いが激化?物騒な。何かあったか?」


「さあのう・・・。情報資料の3を寄越せ」


『おいイクオ!勝手に情報資料を燃やすな!!』


「パンツの味のレポートは要らん」



アジトのテーブルは紙でごちゃごちゃだ。せめてテーブルがもう一つあればと皆で愚痴を言いながら資料に目を通す。

見終われば作戦会議だ。


「さて 侵入はここからにしようと思う!!」


『異議あり!そこは警備がかたい!この裏口から入るべき!』


「阿呆!入って下さいと言っとるようなもんじゃ!怪しすぎるわ!」


馬鹿どもの集まりはたまに化学反応を起こす。とは言ったもののそんな天才的に馬鹿な発想はポンポン発生しない。


「だーから地味な作戦は望んでないの!!ここをこうガっと派手にすればもっと見栄えがな!」


『なんで作戦に見栄え気にすんだよ!俺の霊体化を使って地味に誘拐しよう!そしてあわよくば更衣室に侵入を!!』


「おい なんじゃこのワシの安全な立ち位置!!近衛騎士全員を足止めさせるくらいはワシに押し付けい!!」


それぞれが妙なこだわりを見せるから作戦会議は一向に終わる気配がない。

そうこうしている間に夜が開けてしまった。騒ぎまくって会議してたから全員クタクタだ。イクオは大きなあくびをする。


「あ〜ぁあ あー  ・・・飯盗んで(とって)来るわ」


「ワシは寝る」


『俺もだ』


イクオは別人を模した仮面にマントを羽織る。声を変える魔道具を喉に着けて変装完了だ。


『今日は俺のもとって来てくれ』


「パンツじゃねーの?」


『諸事情により今はパンツは食えん』


「不吉なこと言うなよ!!」


「作戦当日の天気は槍かのう・・・」


『うっせぇ!さっさと行ってこい!!』





  ー市場ー



(あっ財布が落ちてる!やったぜ!)



人が賑わう市場。ここは中心街に近いので人がよく集まる。東京の人混み程ではないが、それでも多くの人々があれやこれやと物を探しに集まっている。


(ここの店はダメだな。障害物がないから目立ちやすい。ここはいい店だが万引きしたばっかだ。他をあたろう)


店を吟味する。なかなかいい店が見つからず、イクオは眠いのも相まってフラフラする。想像以上に長時間店をさがしていた。


(あぁーイライラする。良いなと思ったら雑貨屋だったり魔道具屋だったり。もう適当な店選んで俺だけ食って帰って寝よ。アイツらのことは知らん!)


イクオはやつれた顔で石を蹴る。コンコンと飛んでいった石が壁に当たっコロリと落ちる。壁の近くにはベンチがあった。横には一人の男性が本を読んでいる。



(少し休むか・・・)



イクオはベンチにどっかりと座って一息つく。頭に手を置いて自身を落ち着かせるように思考する。



(睡眠不足はイライラしやすくなると前世ではよく聞いたな。一旦落ち着こう。そもそも眠いのに物を盗もうとするのはリスクが高い。一旦帰るべきだな)



  うつら  うつら  



「・・・・・大丈夫ですか?」


「・・・へっ!?あぁ いえ大丈夫で・・・・ぁ」


(へあ!!?)


「失礼。どうも苦しそうだったので。体調が悪いならどうぞお構いなく言ってください」



「こっ  これは レチタティーヴォ様じゃないですか!?どうしてこんな所に!?」



隣に座っているのは、つい半月前に殺されそうになった『執行の騎士』だった。


(なんでいるの!?なんでベンチの隣に座っているの!?いつから!?

               あっ待てよ・・・)


チキチキチキチキチキチキ チーン


(最初から座ってたね・・・・・・)



イクオは最低なコンディションでレチタティーヴォと出会ってしまったのだった・・・・・・



  〜・・・〜



「なるほど。普段は貧民街で暮らしている訳ですね」


「はい。あのー えーと まぁ 少し仕事がハードでして」


「いえ・・・気を使わなくて結構です。貧民街の皆様が苦しい生活を強いられるのは我々貴族の怠慢の故です。貴族を代表として謝らせて欲しい」


「いえいえ!レチタティーヴォ様が頭を下げることなど!貴族が貧民に頭を下げたなどと噂が広まれば大変です!」


(すげー さすが国が認める信者の中の信者。人間として出来てる出来てる)


変装をしてレチタティーヴォの前に立つのはこれで二回目だ。ただ今回はレチタティーヴォから警戒はされていない。身構えすぎて怪しまれてもいけない。イクオはできるだけリラックスすることを心がけた。


「朝食がまだでしたら何か食べませんか?」


「え?はい

           ・・・・・・あっ!」


突然の食事の誘い。イクオは咄嗟にYESと答えてしまった。


「あぁ良かったです。ちょうどお腹も空いてきた所でして。良かったらあの店でお茶しましょう」


(いいえ!お腹いっぱいですから何も食べなくて結構です!!)


「あのお店はお気に入りなんですよ。あそこでお茶しましょう」


「よろしいんですか?」


(よろしくないです!!)


「えぇ」


「はい」


(ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛)







(どうしてこうなった・・・)


オシャレなカフェだ。鑑賞植物が日当たりのいいところに置いてあり、インテリアは視界の邪魔にならないように設置してある。

蓄音機型の魔道具から落ち着いた音楽が流れている。この魔道具は高いからこれが設置してある店はなかなか少ない。


二人用のテーブル。

ラフな格好の執行の騎士が一人。

少しみすぼらしい服を着た男が一人。


優雅にお茶を飲んでいた。



(てか本当に聖剣持ち歩いてんだな。聖剣乱用断固反対。気い抜けよ全くもー)


バレてしまって追われる羽目になれば当然逃げることになる。聖剣の力は脅威だ。

頭の中で愚痴をぐーるぐーると回しているとレチタティーヴォから会話を持ち込まれる。


「君はどこから来たのかな?」


「はい?」


「いや、見ない顔だと思いまして。君の顔立ちは北の国の人とは少し違う」


「あぁ・・・よく言われます。生まれは西です。少し東の人の血が混ざっているそうですが」


「西ですか・・・。あそこは沢山の人種が集まる。東の大陸の人の血が混ざっていてもおかしくは無いですね」



(まぁ 嘘なんだが。これ、前世の友達の顔なんだよなー。友達のマスク作るのは何か友達の生皮を加工している気がして後悔したな)


なぜ東かと言うと若干アジアと東の大陸の人が顔が似ているからである。怪しまれない為に作った方便だが、この嘘には少し問題があった。

イクオはレチタティーヴォがその問題にどういう反応をするか好奇心があった。イクオはその問題を自白してみる。



「私には東の魔族の血が流れているんですよ?嫌じゃないですか?」


「全然です」


微笑んだ顔で即答する。レチタティーヴォは断罪の騎士ゲオルグと違って穏健派だ。魔族を邪なモノとしてこの世から排除しようなどとは考えてはいなかった。



(うーん。俺は高校生で死んだからあまりどこそこ教の信者とかわかんねーんだよなー。日本だし)



イクオは前世では宗教とは無縁で生きていた。日本なのであまり触れる機会もなかった。

いまいち信者がどのような考えを持って暮らしているのか、イクオは分かっていなかった。



「俺は・・・ イム神教の信者ではないのであまり宗教のことを知りません。気を悪くしないのであれば教えて頂けませんか?」


(・・・って何言ってんだろ。レチタティーヴォとはできるだけ話さない方がいいのに)



話しすぎればボロが出る。できるだけ疑われないラインで話さないのがベストだ。

しかしイクオは質問をした。それは宗教のことに興味を持ったからだけでは無い。レチタティーヴォと話してみたかったからだ。



(本人の前では言えねーけど、こいつとは出会い方が違えば友達になってたような気がするんだよな)



犯罪者と騎士。そんな奇妙な間柄の彼らの会話。確かに彼らは敵どうしだ。立場も、性格も、信条も何もかもイクオとレチタティーヴォは違う。


でも不思議と二人の相性は良かったのである。




そんな友達っていません?



実際、イクオとレチタティーヴォが平和な世界線で出会っていたのならば彼らは友達だったかもしれませんね。

本当に友達になれたかどうかは神のみぞ知るってな感じで

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