その男ブサイクにつき
『イケメンにして下さい』
俺の名前は『部沢 郁男』。ごく普通の高校生だ。
ある日トラックにひかれ異世界に行くはめになった俺は神様にイケメンで転生することを所望した。
と言うのも、俺の顔は自慢ではないがギネス級のブサイクであった。崇めよ。俺が虚しくなるぞ。
今までこの顔で苦労してきたことは言うまでもない。通りすがりに吐かれ、同僚が俺に気づいたらみんな一斉に口を抑え、大人に「寄るな!」と泣いて叫ばれることなど生まれた頃から続いていた。
イケメンは俺の憧れだった。男も女も誰もが振り向き見とれてしまうような顔のパーツの黄金律。言葉を発するだけで人々を魅了し、見つめたら思わず吐息を吐いてしまう。そんなイケメンになりたい。靴箱を開けたらラブレターがぎっしり入っているなんてシュチュエーションは夢にすらでた。
死後に神様が出てきた時は舞い上がってしまった。転生者には特典すら付けてくれると聞いた時は泣いて喜んだ。俺はノータイムでイケメンを求めた。転生すれば晴れて俺はイケメンの仲間入りって寸法だ。
神様は快くひきうけてくれたさ。
【転生者特典】
【スキル イケメンLv100】
【顔は据え置き】
って
「違ぁぁあぁあああぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁあぁあああぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁう!!?!!!??!?!!!??!!??!??」
天まで登るかのごとく上げられ(マジで召されている事はさておき)地獄の釜の底まで叩き落とされた俺はついでと言ったノリで異世界に落とされるのであった。
スキルの説明欄を見なかったのが後々祟ることになるとは思いもしないで・・・・・・
〜1ヶ月後〜
「誰か助けてくれぇぇええ!!!」
「イクオ様の声だ!」
「まだ近くにいるぞ!」
「ひぃ」
俺は追手から逃げていた。迫り来る俺の追手から逃げ、死ぬ気で身を隠しているのには訳がある。
俺の『イケメン』のスキル。恐らくかなり強い魅了系のスキルなんだが効果がえげつない。俺のイケメンの御尊顔を見た人は有無を言わさず無差別に魅了されるのだ。
「イクオ様〜♡」
「どこ〜〜♡♡」
「ぎぇ!」
「そこかぁあ!!!」
「ほぎゃあああああああああ!!!!」
最初は良かったさ!まだ調子に乗っていた時期は罪悪感も何もかもモテる喜びが誤魔化してくれたさ!でもさ!
目が怖いんだ!なんかトロンとしてるんだ!それに恐れて皆を避けていたら目のくもりは益々加速していった。ストーキングをする人々の人数が日々増えていき、人妻、老人、騎士の人々、言葉も知らない赤ん坊まで俺を追いかけた。夜になり眠っているとベッドに潜り込んで行為を迫ってくる奴もいた。毎日ベッドには誰か居て俺に抱けと迫ってくる。極めつけにはナイフを持って追っかけて来る人が!
「私のモノにならないならいっそ死んでイクオ様ああああああああ!!!」
「こんな風にっ!!!」
俺の求めたイケメンはこんなんじゃない!
度重なるストーキング行為に俺は疲れを感じていた。疲れない奴がいるのかと問いたい。そもそも好かれることに慣れてない俺は限界をとうに超えていた。今、俺にとって『イケメン』は重荷以外になんでもない。あんなに求めてたのに。あんなに求めてたのに!
1ヶ月たった今、俺はこのスキルにうんざりしていた。捨てたかったが捨て方がわからない。スキルの詳細を見ようとしてもステータスが目の前に表示されるなんてことは無かった。
そこで俺は仮面を被った。
今や異世界に来て初めて降り立ったこの国の住民はほぼ全てが俺の虜だ。でも仮面を被って姿を誤魔化せばこれからの被害も少しは収まるのではないかと思ったんだ。
それが終わりの始まりの合図だった。
「あれ。私は何を?」
「俺は今までいったい⋯⋯」
はれ?
「おいおい冗談かよ」
「なんで私はあんなブスにぃぃい!?」
んん?
「俺には愛する妻がいるのに!!」
「ひどい!ひどすぎる!!」
「何であんなやつを好きになってたんだ!!」
いやいやいや、えぇ!?ちょっ、えええ!?
「あ、あのー皆さん?」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
「えと、そのーー⋯⋯」
うん
「サーセン」
「「「「「「「「「「喝っ」」」」」」」」」」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!」
こうして俺は国家転覆罪により、ここ北の国の最重要指名手配犯となったのだった。
【転生者特典】
【スキル イケメンLv100】
【顔は据え置き】
【持ち主の意思に関わらずオートで発動する】
【自身よりレベルの低い相手に抵抗不可の魅了を無差別にかける】
【顔を隠すと効果が解ける】
イクオと愉快な仲間たちが異世界中を旅する逃亡活劇。ついに開幕です。
小説は初心者なのでまだまだ拙い文ですがどうぞよろしくお願いします。付き合って頂ければ幸いです。
それでは
はじまりはじまり!