弐 ーー 遠い日の姿 ーー (9)
数ある情報のうち、どれが真実であり、どれが偽りであるかを知るのは難しい。そこで信じるのは己の信念なのかもしれない。
9
神隠し。
信じたくないと理性が働きかけるのだが、悩めば悩むほど結びつけてしまう。以前、圭介から聞いた、SNSが頭によぎった。
書かれていたのは十一年前。偶然としてはできすぎている気は否めない。自分の目でちゃんと確かめて、そうじゃないんだと納得させたかった。
けれど、手にした写真を見てしまうと決心が揺らいでしまう。
由紀の存在を陰に示す若林。それでいて、過去に消えていたお姉ちゃんの姿。
彼女の存在が分からなくなった。
スマホを操作してSNSに繋げる。すると、手が止まる。
「新しい投稿?」
変化はないと諦めていたが、書き込みが更新されており、面喰らってしまう。
ーー 誰これ?
ーー ありえねぇ。
ーー 冗談にしてはおかしい。
ーー 笑える。
何かに対しての反応なのかは見て取れたが、これだけでは分からず、スクロールしてみた。
「あった」
動かしていた右手が止まり、瞬きをした。不思議と学は落ち着いていた。
アカント名を見るが、以前に投稿されていた者でもなく、由紀や若林に関連する名ではなかった。
ゴメン。
ちょっと、話したいことがあるから会ってもらえる?
いつも会っていた場所。あなたの苦手なものが見える場所で。
五日後、そこで。
私は待っているから。
「……五日後?」
書き込みがされた日を確認してみる。書き込みは二日前に更新されていた。すなわち、今日で三日経っていた。
「……明後日に屋上に?」
ベッドの上に投げた写真を眺めた。
明確な場所は特定されていない。けれど、これを書き込んだのが若林だと推測すれば、屋上しかないと悟った。
彼女と会っていた場所は屋上。そして、学が嫌がっていた薬品会社のビルを眺める場所。二つのキーワードが重なるのはそこしかなかった。
「……由紀……」
学は頭を掻き毟ってしまう。
急に消えてしまった由紀。
十一年前に消えてしまったお姉ちゃん。
二人が繋がっているとは微塵にも考えていなかった。ただ、そこに一人の女の子の名前が加わることで困惑を極めた。
どちらか一方ならばまだ落ち着いていられた。なのに、急に加わってしまった若林望の名前。
「……どうなってるんだよ、由紀……」
嘆く声が静かに部屋に木霊した。
信じようと思うのは難しくない。そこにある言葉が自分に向けられている自信があるなら、もう進まなければいけない。進むことに怖さはない…… はず。




