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もう勘弁してくれ!

 「それじゃあハル、見回り開始よ!」


 ソフィアに引きずられて街にやってきた俺はぐったりしている。


「もうちょっと休ませてくれよ……街まで来るのに全速力で走らなくてもいいだろ?もうヘトヘトだ……」


「日頃から運動しないでダラダラしてるからバテるのよ! それに今のは軽いジョギングじゃない?」


「…………」


「今日は初日だから勘弁してあげるわ、あんまり厳しくしすぎてハルが逃げたら困るからね」


「まだやるつもりなの!? 1回来ればしばらくいいだろ?」


「ダメよ! ちゃんと続けていかないと見回りの意味がないでしょ?」

「マジかよ……」


「マジよ! ほら、はぐれたら困るから手繋ぐわよ」


「恥ずかしいからいいよ!」

「いいから手出しなさい」


 ソフィアは1回言ったら聞かないからなぁ……

しぶしぶ手出すとソフィアはニコニコして俺の手を取る。


 2人で手を繋ぎながら街を歩いていると


「あら! ソフィアちゃんとハルちゃん、今日はデートかい?」


 肉屋のおばちゃんが話しかけてくる。


「こんにちは! 今日はハルと2人で街の見回りをしてるのよ、ハルは当主になるつもりだから修行も兼ねてね!」


「ちがっ! ソフィっ!?……!!!……」


 違うと言おうとしたら手で口を押さえられた。


「ハルちゃんがお父さんの跡を次いで当主になるのかい? 偉いわねぇ~! それなら頑張ってるハルちゃんにお肉あげるわ♪」


「いいの!? ありがとう♪ もし困った事あったらうちのハルに言ってね!」


「そうかい? それじゃあそうさせてもらうよ」


 肉をもらって肉屋から離れるとやっと口から手離してくれた。


「何で俺が当主やりたいことになってんだよ!しかも肉まで貰っちゃって」


「大丈夫よ、心配しなくてもハルが当主になればいいんだから! 私もちゃんとサポートするし♪」


「だから! …………いや、とりあえずもう疲れた……今日はおとなしくしてよう……」


「それじゃあ見回り再開するわよ!」


 それからあちこち見て回った。

 行くとこ行くとこソフィアは俺が当主になると言って回って、それを否定しようとしても口を出せないようにしてくるので途中でもう諦めた。

 そして今は休憩で喫茶店にいる。


「あぁ! 疲れた! 足がダルい!」

「何情けないこと言ってるの? しょうがないわね! ほら、足こっちに出しなさい」


 そう言ってソフィアは自分の座っている席から、今俺が座ってるソファータイプの席に座ってくる。


「マッサージしてあげるから楽にしてなさい」


 そして、ソフィアは俺の足を優しくマッサージしてくれた。


 そういえば昔もこんなことあったよなぁ……


 あれはソフィアの封印が解けてからちょっと過ぎたぐらいだったか、ソフィアと鬼ごっこして遊んでもらった時、俺が鬼でソフィアを追っかけてたけど全然捕まえられなくて、段々疲れてきて足も痛くなって泣いた時だったかな?


 あの時も情けないって言われながらマッサージしてくれたなぁ……ソフィアにマッサージしてもらったら足が楽になって、そしてマッサージしてる時のソフィアの優しい顔を見てると何か嬉しかった記憶がある……


「ソフィアありがとう、だいぶ楽になったよ」


 思い出すと段々恥ずかしくなってきたので、もう少し続けて欲しかったけど止めてもらった。


「あら、もういいの? 別に遠慮しなくていいのに」


 すると周りのお客さんがニヤニヤしながらこっちを見てるのに気がついた。


「見ろよ、ハルの奴またソフィアちゃんに甘えてるぞ!」

「ソフィアちゃんもハルくんには甘いからねぇ」

「あははっ、何だかんだでいっつもイチャイチャしてるからな!」


 スゲー注目されてる! メチャクチャ恥ずかしい! 別に甘えてねーし! イチャイチャしてねーし!


 とりあえず居づらくなったので

「ソフィア! 次行こう、次! 早く!」

「もう大丈夫なの? 急にやる気出してどうしたのよ?」

「大丈夫だから! とりあえず店出よう!」

「わかったわ、それじゃあ行きましょう」


 逃げるようにして店を出た俺たちは大通りを歩いてた。


「特に異常なしね! じゃあ大通りを抜けたら今日の見回りは終わりにしましょう!」


「はぁ~! やっと終わりか~!」

「何言ってるの? 最低でもこれから週1回は見回りするわよ!」


「え~!? 月1回にしない?」

「ダメよ! 街の安全もそうだけど困ってる人が居たら助けてあげるんだから週1回は回ってないと! そうやってみんなの信頼を得てくのよ!」


「うぇ~……また1週間後こうやって歩くのかよ……」

 ずっと手を繋いで歩いているので、街の人から冷やかされるし……


 すると後ろの方から女の人の叫び声が聞こえた。


「誰か~~!! ひったくりよ~~!!!」

 

 えっ! ひったくり!? 犯人はどこだ?

 するとこっちの方に走って来る男がいた。


「どけ! 邪魔だ!」


 道ゆく人を突き飛ばしながら走ってくる男、アイツが犯人か!? こっちに真っ直ぐ向かってきてるぞ! クソっどうする!? 逃げるわけにはいかないし、こうなりゃ捕まえてやる!


 覚悟決めて犯人に立ち向かうと決めた俺は犯人に向かって走りだし、そして犯人にタックルする!


「ぎゃあ~~!!!」


 背も大きくないし力もない、そして運動も得意ではない俺は簡単に吹き飛ばされた。


「いてぇ~!! 変な声出ちまったよ……」

 ぎゃあ~! って何だよ恥ずかしい……


 犯人もいきなり俺が突っ込んできてバランスを崩したみたいだ。


「このクソガキ! 邪魔しやがって! ぶっ殺してやる!」


 激怒してこっちに向かってくる犯人に俺は逃げる事が出来ず体を丸める、その時


「うちのハルをどうするって?」


 俺の前に立っていたのはソフィアだった。

 ただ、こっちからは後ろ姿しか見えないがかなり怒っているようだ。


「うるせぇクソアマ! 退きやがれ!」


「うるさいのはアンタよ! うちのハルはクソガキなんかじゃない! とってもいい子なんだから!」


「クソッ!」


 犯人がソフィアに殴りかかる!


「ソフィア!」

 するとソフィアがその拳を片手で受け止める。


「ハルはね、運動も勉強も得意じゃないし、 家でもいつもダラダラして、学校もたまにサボってゲームセンターに行ったりしてる、それにムッツリスケベで近所のキースくんと銭湯にのぞきに行ったり、学校で自分の母親の写真売って稼いだお金でえっちな本いっぱい買ってるし、私の着替えを覗こうとしたり、私のブラジャーで遊んだりしてるし……」


「ソフィア! もう勘弁してくれ!」

 ヤダ!? 全部バレてたの!?


「そんなハルだけどね! いいとこいっぱいあるのよ! ……たとえば、私はずっと封印されてて自分の歳も誕生日も忘れてしまったって言ったら、それじゃあ封印が解けた日が誕生日だね! って毎年欠かさず祝ってくれるすごく優しい子なの! 私はそんなハルが生まれてきてくれてとっても嬉しい! そんなハルを殺すですって!? そんな事、冗談でも私は許さない!!!」


「ソフィア……」


「お仕置きよ! くらいなさい!」


 後ろに引いたソフィアの右手に光が集まる!


「聖剣ソフィア流、奥義!」


「聖剣突き!!!」


「ぁぶ#ょ£ぺろー!?!?」


 犯人が数十メートルぶっ飛んでゆく!

 てか聖剣突きって! ……ただの馬鹿力の右ストレートじゃん……ダジャレかよ!?


 犯人はちょうど駆けつけた警備兵の前に落ちて、そのまま連行されていった。


「ハル! 大丈夫!?」

「いててっ ちょっと足ひねったかな?でも大丈夫だよ、助けてくれてありがとうソフィア」

「まったく無茶しないでよ! ハルに何かあったら私……」


 駆け寄ってきて、俺の事を心配しポロポロと涙を流すソフィア。


「ゴメン……止めるくらいなら出来ると思ったけど、ふっ飛ばされちゃったよ! あはは……」

「急に突っ込んでいくからビックリしたわ……でも勇気出して頑張ったわね! エライエライ♪」


 泣いているがニッコリ笑って頭を撫でてくるソフィアに恥ずかしさと嬉しさで何も言えなくなる。



「捕まえて下さりありがとうございます!」


 ひったくりにあった女性は何度も頭を下げてお礼を言ってくる


「いえ、困っている人を助けるのは当然ですから!うちのハルはそういう事できるとてもいい子なんです!」


「捕まえれたのはほとんどソフィアのおかげだと思うんだけどな……」


「犯人を足止めしたのはハルなんだから素直にどういたしましてって言えばいいでしょ?」


「……どういたしまして……」

「感謝されて急に照れちゃって、よしよし♪」

「頭撫でるなよ……」


 周りを見たらさっきみたく、みんなニヤニヤしながらこっちを見てるので


「ソフィア! もう今日の見回り終わりだろ!? 俺はもう疲れたから帰る!」


「待ちなさいハル! 帰るまでが見回りよ!」

 

 そう言ってまた手を繋いできたので抵抗する気も起きずそのまま家に帰ることにした。

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