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第2フェイズ

 第1フェイズと同じ、南に少し下った地点。


「じゃあ、さっそく情報交換といこうか」


「うん、そうだね。時間は無駄にできない」


 アーリアの琥珀色の瞳が輝く。何かしら情報を得ている目だ。


「まずは僕から、資格者の中に堕天使の知り合いはいない。これを素直に受け取ると堕天使に協力者はいないことになる」


 僕の情報提供を終えると、アーリアはぱぁと花が咲いたかのように明るく笑った。


「だったら、みんなで堕天使を探したらいいね!」


 本当にそうなのか…………。女神のいうことを信じなければ何も始まらない。だから、堕天使の知り合いはいないということは確定情報とする。問題はこれが堕天使の協力者がいないという意味となるのかどうか。


 もし、そうだとすれば堕天使はいったいどうやってこの試練を突破する――――――。


「今度は私の情報ね。ラクにいわれたとおり秘宝の発動の効力を探ったよ。ほとんど女神様に無視さわれちゃたけど。1つだけ答えてくれたよ。秘宝の発動では秘宝の数をいかなる操作もできませんだって

 きらきらとした目線。どうだといわんばかりに胸を張る。有益な情報だ。発動によって秘宝を砕けないこと、復元もできないこと。座席の上空に浮かぶ秘宝の数を指針にして推理することができる。秘宝の数。これから堕天使をあぶりだすのに重要な点となっていくだろう。


「アーリアは誰が堕天使だと思う?」


「えっ!」 


 アーリアは眉を上げ困った顔を浮かべる。


「全然わからないよ。でも、感じだとザーリスさんは違うかな。あんなかんじになって、それとリーファちゃんみたいな子が堕天使であってほしくないな」


 右空を見上げながら考えを話す。アーリアは賢い子ではないけど、スキルの影響か勘の鋭いところがある。推理材料にしたいけど。


「うん、ザーリス大将に関しては同意見だな、リーファに関しては正直まだわからない。なら、ビガラとパーミル、モーテルはどうだ?」


 金の力でグループを形成したビガラと金につられたパーミルとモーテル。


「そうだね、ビガラさんは違うと思う。人としては最低だけど。堕天使なら目立ち過ぎじゃない?」


 目立ち過ぎか、確かにそうだな。


「うん、なるほどね」


 頷きながらアーリアの顔を伺う。始めの緊張感は溶けたようだ。よかった、ビガラの推測も同意見。


 アーリアから気づいたことを詳細に聞く、堕天使が何もしていないはずがない。だとすればどこかに痕跡があるはずだ。どんな些細な情報が鍵となるかわからない。聞き入ると時間は早く流れる。女神の声が聞こえてきた。もう、そんな時間か。


「――――3、2、1、『虹雲』発動。第2フェイズ開始です」


 七色の輝きに包まれる。刹那、視界が変わった。


 七色に包まれたこの異空間も2度目。広がる七色の絶景にはまだ慣れない。白く輝く秘宝。7石の光が顔を照らす。


 さては、まず決まっていたことを。


 1石手に手を伸ばし、呪文のように唱える。


「復元。資格者、リーファの秘宝を復元する」


 ピンク色の光体が虹の雲を突き抜ける。暫定的ではあるが、これでリーファの秘宝は9石になったはず。そして、2分後。


「復元。資格者、モーテルの秘宝を復元する」


 続いて、緑色の光体が輝き、虹雲から飛び出した。モーテルも同様に秘宝が9石。さらに2分後。


「復元。資格者、アーリアの秘宝を復元する」


 金色の光体が灯り虹の雲の外へ。これでアーリアの秘宝も9石。堕天使に協力者がいないとすれば彼女の秘宝がゼロになることはない。


作戦だった最も少ない資格者の秘宝を復元させることは完了。行動できるのはあと5分間。秘宝が使えるのは2回。その内、1回の使い方は試練の間で話し合った。ザーリスの秘宝を1石、復元させるというもの。みんなに宣言してしまったし、別に構わない。どちらかというと、ビガラに破壊尽くされる方がまずい。ただ、ザーリスが堕天使という可能性もなくはない。あれが演技、アーリアをも騙すほどの。


 うん、まだ結論で出さない、慎重に決断しよう。信じられる人間なんてアーリアぐらいだ。ただ、今は作戦を実行するほうが大切だ。


「復元。資格者、ザーリスの秘宝を復元する」


 黄色の光体、流れ星のような光線を描き天に舞っていった。


 ちらっと、虹の砂時計を見る。残り、約3分といったところ。ふと、アーリアの顔が浮かんだ。脳裏に浮かんだ彼女は、にっこりと笑って。ラク、ラク、と呼び掛ける。あの夜から続く、アーリアの幻聴。とっても、気持ち悪い。


 ラク、私は――――。よく意味がわからない。


 そっと手を白き秘宝に伸ばす。


 残りは3分。何に使う。狙われているザーリスの秘宝を復元させる。それとも、ザーリスの秘宝破壊を抑制するために、ビガラの秘宝を破壊する。いや、ビガラは危ない。ザーリスを狙われるならと反感を持った資格者がビガラの秘宝を破壊するかもしれない。


 なら、堕天使を探し出す。どうやって? いや、違う。現時点で不可能だ。願うべきは堕天使が施すであろう策。それを看破できるような願い。


 そっと手を白き秘宝に伸ばす。


「発動。女神に願う――――――」




 比較的広いスペースである『虹雲』、俺には少し狭いな。


 手に取った、黄色い秘宝。俺の力を現した色。女神も粋なことをしやがる。


「復元。資格者、ラクの秘宝を復元させる」


 純白の輝きを放つ光。虹雲を飛び越え飛んだ。


 ラク、始めはただのガキと思っていたが。時々、強烈に匂う。どうやらこっち側の人間か。しかも頭も切れるようだ。なら、俺が名を聞かねぇとは…………。いったい、どこの所属だ。


 まぁ、いい。あと、9分間。どうするか…………。


 背から気配が、それもギラギラした殺気。


 堕天使か!


「『橙電放電』」


 強靭な肉体の全身から、橙色に発光する電撃が放たれる。俺が女神から授かったスキル。『橙雷』。能力は雷を自由自在に操る。


「堕天使だろうと。俺に勝てる気でいたか! 『雷剣』」


 人の領域を超えたスピード。時を超えたかのごとく、橙の雷は包まれる人影の背に周り込み。雷で形成させた剣を払う。


 終わりだ、堕天使。


 音速を越えた斬撃。だが、影が揺らめくと。


「はぁ?」


 どこにいった。


 鈍い音が背から聞こえた。続いて、激痛が走る。口からは血反吐を吐き。ようやく、刺されたと。背の痛覚で実感した。遠のく意識。振り絞るかのように、身体を反転させる。


「お前は…………」




 グサッっと、肉を斬る音が再び鳴る。もう一度、肉を抉った。血を流しながらゆっくりとザーリスが倒れ込む。


 やったのか…………。


 動かないザーリスを確認し、ほっと一息。周りに浮遊する秘宝に手を取った。


 瞬間、耳を突く音。後ろから発光と雷の音色が鳴った。


 急ぎ、振り向くと。ザーリスを中心に雷が集結し轟音が鳴り続ける。巻き込まれないように距離を取りやり過ごす。


 数十秒で光は収まった。警戒しながらゆっくりと足を進める。近づくとザーリスの姿は変貌していた。顔も識別できないほど全身が黒焦げ変わり果て。近づいて耳を心臓に当てる。鼓動の音はしない。


 よかった、死んでいる。


「発動。火炎龍の出現を願う」


 虹色の光が包む。第2フェイズも終了だ。そして、もう試練も終了する。堕天使の勝利で。



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