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第1フェイズ

「『虹雲』まで、残り30秒です」


 いよいよ、『女神の試練』が始める。命を賭けの任務。なんだか暗殺者だったときを思い出すな。右手を拡げる。穢れきった殺しの手。どうしても、昔を思い出す。


 左手に温もりを感じた。幼児のような小さな手で包み込まれている。


「ラク、死なないでね」


 振り向くと、アーリアの瞳が潤んでいた。


「第1フェイズから、秘宝がなくなることはほぼないよ」


「わかっているよ。でも、心配だよ」


 掴まれた手が強く握られる。こんなとき何をいったらいいのかな。逡巡し気後れしながら言葉を紡ぐ。


「大丈夫、アーリアは何があっても僕が守るから」



「――――3、2、1、『虹雲』発動。第1フェイズ開始です」


 ほのかに肌を温める七色の光が身体の周囲から発光し包み込む。重力がなくなって、ふわふわした感覚。足はしっかりと地面に着いているけど。脳みそがどっかにいったみたいだ。不思議と気分がいい。


 瞬間、景色は変わった。見渡すのは七色の雲。直径5メートル程の空間。神々しい雰囲気に、鳥肌が立ち絶景に目が奪われる。


「制限時間は11分間です。ご検討を――――」


 女神の声はそこで終わった。虹雲の中央、10センチ程の砂時計が出現し、七色の砂が落ちる。


 あれがタイムリミットか。まずは――――。

 

 周りに浮かぶ白い秘宝。これが秘宝、命を護ることも誰かを殺すことも、堕天使を見つけることも。全てがこの秘宝にかかっている。浮かぶ白い秘宝。クルクルと回りながら浮かぶ1石に手を伸ばす。


「発動。第1フェイズ終了時、秘宝が一番少ない資格者の秘宝を第2フェイズ時で復元することを誓う」


 白い宝石は虹色の光を放ち、一瞬の内に消滅した。


 発動しとかないと。この発動は、誓約書のようなもの。最初から、一番少ない者を助けるつもりなら必要ない。今の段階では、例え怪しくても最小の者の秘宝を復元する。でもそれじゃあ、もし、堕天使側から秘宝を壊させなかったら。僕が10石あることが不自然になる。


 それは、堕天使も同じ。堕天使や、協力者がいれば恐らくあの誓約は誓わない。でも、秘宝が10石のままならおかしい。だから、堕天使側は、秘宝を何かしら発動させる。第1フェイズから、何か仕掛けられる可能性があるが、秘宝を使用できるのは計5回。1回を発動で使用させるので、自由に使用できるのは4回。


 この第1フェイズ、一番危惧することは堕天使の協力者が1人でもいたとき、誰かの秘宝10石全てを破壊できる可能性。アーリアが死ぬ確率があるってことだ。それだけは避けないとならない。そのための作戦。でも、2人とは限らない。へんな話し、僕とアーリア以外が堕天使側だったら、勝つことは不可能だ。まずは、敵の人数を把握したい。ただ、叶うかどうかは神様の機嫌しだいか。


 再び、白い秘宝に手を伸ばす。


「発動。堕天使は誰ですか?」


 秘宝に変化はない、直ぐに秘宝の輝きは薄れ、元の白色に戻った。願いは叶わなかったようだ。


 当たり前か、これが出来たらこの試練の意味がない。


 不発なら、消滅はしないのか。だったら、どこまでが発動できるのか、確かめることができる。再び、秘宝に手をかざし。


「発動。資格者の中に堕天使の協力者はいますか?」


 しかし、白石に反応はない。


 これもダメか。


「なら、発動。資格者の中に堕天使の知り合いはいますか」


 白石が輝く。やがて、白色の光の粒となり、女神の声が聞こえてきた。


「その願い叶えましょう。堕天使の知り合いは資格者の中にいません」


 女神から答えが返ってきた。


 この問には答えられるのか。女神の基準はわからないが、堕天使の知り合いはいないというこは堕天使には協力者がいない…………?


 はっとし、砂時計を見る。全体の3分の1程度。まだ、時間の猶予はある。


「復元。資格者、アーリアの秘宝を復元させる」


 唱えると、白い秘宝が金色に輝いた。色は秘宝を飛び出し、虹雲を突破し、どこかに飛んでいった。


 アーリアには、発動の効力を調べて貰っている。例えば、願いで誰かの秘宝を全部破壊してくださいなどが可能であれば大きなアドバンテージとなる。発動での減少を互いに秘宝を復元し合うことで補う。誰かパートナーが要れば、発動と復元をすればノーリスクで1つ願いが叶う。


 『虹雲』時に5回使用できるから、発動、発動、復元、復元と2回は秘宝を減らせずに発動できる。今回は様子見で1回だけ。この調子なら2回でも大丈夫だ。余裕があれば次のフェイズも試みたい。あとは、結果を待つだけ、アーリアの情報と照合して考えよう。


 それにしても、本当に協力者はいないのか――――――。なら、堕天使はどうやってこの試練に勝つ……………。


 七色の砂粒が虹色の山頂にぽつりと付く。虹の砂が全て落ちた。瞬間、虹砂から視界は目を焼くほどの光が注いだ。



 虹の砂時計。あの方の力、変わらず絶対的ですね。


 煌びやかに光る虹色を凝視。反射した瞳は憎悪の炎が燃え盛る。


 許せない。今に天界に戻りその王座を引きずり下ろす、リィアー。そのためにここにいる9人の資格者には犠牲になって貰いましょう。復讐劇の始まりです。


 さて、まず初めのターゲットは――――――。


 目の前に浮かぶ秘宝に手を伸ばす長い爪が当り、キィンと音が鳴った。


 許さないのは人間も同じ、この試練は人類撲滅の始まり。


「発動、――――に会うことを願う」


 さぁ、まずは一番チョロいあの人をこちら側に引き込むことにしましょう。


「その願い叶えましょう」


 虹色の光が身体を包み込む。瞳に宿す憎悪の塊。さぁ、資格者達よ。堕天使の策略に嵌るがいい。


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