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敵は勇者?

花野香澄16歳。

お城で勇者様に助けてもらいました。

しかもこの勇者様、私と同じ異世界転生者で日本人でした。

今、勇者様に攫われて街道にいます。

私、急展開過ぎて情緒不安定です。

 まだ、昼過ぎ。


 ポカポカ陽気の街道。


 うう・・・うー


「泣く程の事じゃないよ。ね、ほら元気出して。」


「うっく・・う・泣かせた犯人に・・うう・・言われても・・

 うー・日本人でしょ・・ううっく・・空気を・・読んで・・ください・・・。」


 街路樹の下はひんやりしてても、私の頭は怒りで熱い。

 私は街路樹に抱き着きながら泣いてます。

 ヒイラギさん私が泣きだしてから地面に下ろしたって遅いのよ。


「カスミちゃん、空気は読むものじゃなくて吸うもの。」

 あ、また燃料を投下。

「キー――――!!またからかう・・・ううう・・うう・・・・。」


 この人本当に何なの!!。腹が立つ。

 ヒイラギさんが私をお姫様抱っこしているところをフロックスさんに見られるし。

 私が「異世界(ココ)に来てから着々と太っているんですから。」って、言ってたのもフロックスさんに聞かれたかもしれない。


 嫌だあ、恥ずかしい。ううう・・・・うう・・・。


 ヒイラギさんが肩をすくめて

「からかってないし、泣かせたいわけじゃないよ。・・ごめんね。

 僕、カスミちゃんに会えて嬉しかったんだよ。

 異世界(ココ)で日本人に初めて会ったんだよ。

 だから二人きりで話したくて、ごめんね。・・・・・ ごめんなさい。」


 勇者ヒイラギさんが両手を体横につけ、頭を下げ綺麗な礼をしている。

 ・・・日本人だ。

 ヒイラギさんの礼を見て、少し落ち着いてきた。



「・・ヒイラギさんはいつから異世界(ココ)に?」


「僕は14歳の時。

 中学2年の部活から帰宅途中に、カンパニュラ城の中に勇者として召喚されたんだ。

 約6年前になるかな。カスミちゃんは?」


「私は約半年前くらいに日本で15歳で病死して。

 その後、ここから近い草原にいました。

 つい最近16歳になりました。」


「病死・・召喚じゃないのかな。

 ちょっと、ステータス見せてもらってもいいかな?。」


 ヒイラギさんがやや下を見て、空間に指を走らせてる。


「んー、カスミちゃんは召喚されたわけではないみたいだね。

 風魔法と治癒が少し使えるみたいだけれど、それ程レベルは高くない。

 ロベリアより弱いのかぁ。」


「何で分かるんですか?」


「カスミちゃん、僕の手もと見えない?

 ゲームとかでキャラの状態が分かる画面が出てんの。」


 見てみたい、ヒイラギさんの手もとを凝視する。

「・・・見えません。」


「あー、そう。カスミちゃん、風魔法と治癒だけで他のステータス伸ばしてないから、バランスがいまいちかも。」


 ショック!!異世界(ココ)に来て、チート転生だと浮かれていたのに、チートじゃなかった私。


「あれ、カスミちゃんのステータスの中に、『推しメン脳内焼き付け』ってよく分からないけれど怖そうな言葉が書いてあるよ。何これ?」


 きゃあああああああああああああ、それ私にとって超大事な物。

 他人に知られたくないのおおお。


「酷い・・。私はヒイラギさんのステータスを見れないのに。

 ヒイラギさんは、私のステータスを勝手に見るなんて、これって覗きじゃないですか!」


「いやいや、見る前にカスミちゃんに断ったじゃん。」

「見て良いっていう前に見たじゃないですか。覗きです。覗きですよ。」

「カスミちゃん16歳か。日本だと女子高生くらい。女子高生を覗き、やばいね。ハハハ」

「笑い事じゃないです。ヒイラギさん変態ですよ。」


 悪口言ってんのに、何故かヒイラギさんの顔が恍惚としてる。

 この人、本当に変態なんだ。


「狼を操っている黒幕、探してくれるんですか?」


「うん、僕ならすぐに分かるし片付けられるんだけれど、ひとつカスミちゃんにお願いがあるんだ。」


 聞きたくないけれど、聞くしかない。

「何ですか?」

「狼の黒幕倒したら、僕の仲間になって欲しい。」


 私、布面積の少ない服は着たくないです。

 黒幕は私とフロックスさんで倒します。


「申し訳ありません。

 大変良いお話ですが、私のようなレベルでは勇者様の仲間は務まりません。

 すみませんが、今回のお話は無かった事にして下さい。」


「カスミちゃん、本当に16歳。断り方が大人だよ。

 じゃあ、もう一方の案でいくよ。」


 ヒイラギさんは私の前に片膝をついて右手を私に出した。


「カスミちゃん、生涯幸せにするから結婚しよう。

 そして僕に味噌汁を作ってください。」


 は?


 はあ?


 今までテレビやラジオ、本やゲームそして病院内で見たプロポーズ。

 男性又は女性が人生を一緒に歩もうと愛を求む行為!。

 一生に一度の乙女の憧れを、何でこの人にこのタイミングでこんな場所でされんの!!。


「カスミちゃん?」


 片膝ついて私を見上げるヒイラギさんが滲んで見える。


 涙がつーーと頬を流れる。あまりの事に思考が停止してしまった。


「カスミちゃん、感動してるんだね。」



「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」

 ピキッピキッピキッピキッピキッピキッピキッパチッ


 目の前でヒイラギさんが氷った。



 後ろから長い腕が伸びてきて、私を抱きしめた。


 美しい銀色の毛束が私の頭上から流れ落ち、顔に荒い息づかいがかかる。


「カスミ様、遅くなり申し訳ありません。」

 フロックスさんが指で私の頬の涙を拭ってくれてる。


 さっきまで停止していた頭と体が急激に熱くなる。

 と、フロックスさん私を強く抱きしめ、後ろへ跳んだ。


 凍っているヒイラギさんがゆっくり立ち上がる。

 パキン、パキン、パキン、

 氷が砕け、落ちていく。


「すごいねぇ。君。

 今の僕を凍らせられる人に初めて会ったよ。」


 いつもの微笑を浮かべた顔が消えてる。ヒイラギさん真顔だ。


 フロックスさんが私を背に隠し、ヒイラギさんと対峙した。


「いい加減にしてよ!!この馬鹿!」


 カレンデュラさん、ナスタチウムさん、ロベリアさんが現われてヒイラギさんに向かう。


「もう少し周りの事も考えて動いてくれ!」


 ナスタチウムさんがヒイラギさんを見ながら、剣に手をかけている。

 ロベリアさんも小さい身体に似合わない、大きな棍棒をヒイラギさんに構えてる。


 何故、仲間の3人がヒイラギさんに向け攻撃態勢なの?

 この人、勇者でなくて魔王なんじゃ。


「えー嫌だなあ。

 皆、そんなにピリピリしないでよ。

 僕、もう大人だよ。

 前みたいな事はしないってカレンに約束したろ。」


 ヒイラギさん、へらっといつもの微笑に戻り両手を上にあげてる。


 カレンデュラさんが無言でヒイラギさんの脛を、ロベリアさんの棍棒で打った。

「痛ったあ!」

 ヒイラギさん脛を押さえうずくまる。


 なるほど、ヒイラギさんが女性に手を出し、カレンデュラさんに1撃貰うまでが1ターンなのね。


「カスミちゃん、なんか勝手に納得してるみたいだけれど違うからね。」


 涙目でヒイラギさんが言ってくる。

 声に出していないのに何で分かったんだろう。


「カスミ殿、振り回してしまい大変申し訳ありません。

 狼狩りの協力について我々も尽力いたしますが、今日は貴女もお疲れの事と思います。

 後日また打合せをしたいと思いますが、よろしいでしょうか?」


 ナスタチウムさんの提案に頷いた。


 ヒイラギさんはともかく、この女性たちの協力は有難い、後日ヒャクニ宿にて会う約束をした。


 フロックスさんが私の手を取り帰宅を促す。


 何かすっごく心配されているのが分かる。

 私そんな疲れた顔なのかしら。


「それでは、勇者様方、また後日お会いできるのを楽しみにしております。」


 会釈して、フロックさんと歩き出した時、


「あーーー!待って。カスミちゃん。

 狼狩り片付いたら僕と結婚だからね!。

 僕と結婚する約束、忘れちゃ駄目だよ。」


 ヒイラギさん以外の全員が停止した。



ここまで読んでいただきありがとうございました。

心の広い貴女のお肌がつやつやになりますように!

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