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フロックス②

フロックス視点2回目です。



 神殿で暮らしていた時には、平坦な毎日を暗いジメジメした気持ちで生きていた。

 奴隷の今、ほとんど変わらない平坦な毎日でも、穏やかで暖かい気持ちが続いていく。

 彼女との幸福な日々が続いていた。


 奴隷として彼女に仕えるが、かなり大事に扱ってもらえている。

 体調に良い食事、気心地の良い衣服、奴隷とは思われない環境にいる。


 ▽▽▽


 彼女の保護者ジニア婦人には時々立場について釘を刺されるが、スカビオサ殿からは仕事を任されるようになった。


 彼女は仕事以外によく夫妻の手伝いをするので、自分も彼女の手伝いを申し出た。


 手伝いは主に家事だ。

 神官時代に身の回りの家事は習得していたため、負担に感じる事はなかった。

 彼女は家事をこなす自分を礼賛した。

 彼女に褒められる度、心が温かくなる。


 自分が仕事で使うエプロンのサイズが無いと分かり、彼女が作成してくれることになった。

 自分にはエプロンを作っている事は内緒だったが、ジニア婦人が、

「エプロンに見えないかもしれないが、あんたの為に指に針を刺しながら一生懸命縫ってんだよ。」

 と、話を洩らした。

 自分の為に彼女が作ってくれている。

「絶対に貰います。大切に使いますよ。」

 夫人にお願いして、彼女が完成させた瞬間に合図をもらい部屋に入った。

 彼女から今まで貰った衣服の中でも、たどたどしく縫われたこのエプロンが一番気に入っている。


▽▽▽


 家事が終われば、狼狩りをする。

 狼を狩りに出て、狩りが成功したら3日休む。

 狩りで消費される彼女の魔力量を考えると3日の休みが必要だと彼女に勧めた。

 彼女の魔力は一般人よりは多いが冒険者の中ではけっして多い方ではない。


 初めて一緒に狩りに行った時。

 彼女に『探索(ケット)』を使うよう言われた。

探索(ケット)』を使い狼達を見つけたと報告すると、彼女は自分と腕を組んでいいか、おずおず聞いてくる。

 勿論、了承する。腕を組み自分と彼女に風を纏わせ狼たちの所まで飛んだ。

 空を飛ぶことは彼女に大量の魔力を消費させるが、彼女に密着される状態を続けるため言わない事にした。


 空から狼の群れの前に下りた。正直、狼の正面に下りた時は肝が冷えた。


 彼女は狼を突風で空中に上げて落とし打ちどころが悪い狼は死ぬが、大半の狼は森へ逃げる。

 彼女は全く気が付いていないが、かなり危うい狩りの状況だった。


 地面に落とされても戦意が落ちない気性の激しい狼が、彼女に飛びかかった。

 自分がすぐに狼を凍らせたが狼の一噛みで彼女が帰らぬ人にならないように、狼の死の確認を念入りにするようにした。

 気絶している狼には我々がこの場から去るまで寝るように『睡眠(ソメイユ)』をかけた。


 本人は自信満々だが、彼女は突風を制御できていない。

 商人達が狼に襲われている時に助けに入り、商人まで突風で空中に上げてしまったり。

 狼との距離が近く、突風で彼女自身も空中に上がった時には冗談かと思った。

 でも、失敗する彼女も可愛いので、自分がフォローすれば良いと現状維持にしている。



 ある時、彼女の突風の影響で森の中から子供が飛んできた。

 かすり傷で街道に座り込む少年。

 彼女がかなり心配し少年に謝罪した。


 少年は街の貴族の子供で、親に内緒で魔法の修練をしていた。

 親の目に付かないところで上達して親を驚かせたいので、ここにいる事は内緒にしてくれと頼まれた。

 彼女は少年を素直に信じ、修練を褒め街まで見送った。


 自分は少年に良い感情は持てなかった。

 吹き飛ばされて来た時、少年は空中で回転し落下の衝撃を抑えたようだった。

 いくら獣人の子とはいえ、身のこなしが良すぎる。

 あと、少年がやけに彼女に懐くのが気に入らなかった。


 毎回、ハプニングがあるものの順調な毎日を送っていた。


 ある日、彼女が狼を操る黒幕の話をスカビオサ殿に話したところ、護衛隊隊長に会いに城へ行く事になった。

 城へ行くための礼装を彼女が買いにジニア婦人に連れ出された時には、着飾る彼女が見たくて笑顔で送った。

 買い出しから帰宅した彼女から自分の礼装を渡され驚いた。

 ジニア婦人は苦笑していた。


 城へ行く当日、空き室を借りて彼女が買ってくれた礼服に袖を通した。

 かなり上物の礼服だった。

 彼女の金銭感覚に一抹の不安を覚える。


 部屋で彼女がジニア婦人に支度されて、フロントに下りて来た。

 花が咲いたように可愛らしかった。

 いつも高い位置で一つに結んでいる黒髪を編み込み小さな銀細工で纏め、唇には控えめにピンクの紅を付けている。首から肩にかけ繊細なレースがかかり、ピンクとシルバーの重なったドレスが彼女の可憐さを際立たせていた。

 彼女の可愛さを言葉に出来ない自分がもどかしい。


 馬車の中で揺れるたび彼女を抱き寄せる。

 腕の中で彼女の頬が赤くなると一層可愛らしさを増した。

 愛らしい彼女の頭に口づけをしたい気持ちを必死で堪える。

 この時初めて彼女の奴隷を後悔した。


 夢の様に楽しい時間は一瞬にして終わってしまう。

 城に付き小さな彼女の手を引き城の中庭で、リザードマンに呼び止められた。


 リザードマンはあからさまに自分を蔑んだ為、彼女が憤った。

 彼女が怒ってくれた事が嬉しくて彼女の腰を抱き寄せた。

 出来ればずっと彼女の細腰を離したくなかったが彼女には使命がある。

 彼女の姿が見えなくなるまで見送った。















駄文、ここまでお読みいただきありがとうございました。

心の広い貴女が良い睡眠をとれますように!!

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