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フロックス①

フロックス視点の話です。



 自分の親は男が人間、女がエルフだと神殿で聞いた。

 女が、赤子の自分を育てられないからと神殿へ置いて行った。

 だから自分には神殿での記憶しかない。


 神はいるのか。

 存在を疑い出したのは、自分が10歳になる頃だったと思う。

 神の存在を疑うこと自体、神殿の中では罪である。

 神の存在も神の御心も探求し修業の中で悟ることが出来るはず、出来なければ努力が足りないのだ。

 この教えは自分の心が爆発するまで続いた。



 『神官フロックス・キョウの身分を剥奪し第3級奴隷にする。

 今後、君の身は主が決まるまで、国が保護管理することとなる。』



 白く狭い個室にて自分が思っていたよりも軽い求刑だった事にイラついた。

 4級以上の奴隷ならば命の危険度の高い場所へ送られるが、国が自分の犯罪を世間に隠すため4級以上の奴隷に出来なかったのだろう。


 ヤルことは達せられたのに。心に穴が開いたようだ。


 ▽▽▽


「フン!顔立ちや身体つきは整ってるが、耳が丸い。

 エルフの出来損ないじゃないか。

 これにこの価格は高すぎるだろう。」


 自分を買いに来た客に言われるたびに思い知らされる。

 エルフの出来損ない。

 半端物。


「お客様、この奴隷は高位レベルの魔法が使えますのでこのお値段なのです。」

「ハハッ!戦闘奴隷を買うならもっと安く買えるだろうが。」


 なかなか買い手の就かない自分に販売所の役人も焦りだしているのが分かる。

 だが一度決まった価格を下げるには面倒な手続きが多い為、難しいらしい。


 外見と能力がつり合わない、自分は本当に半端な存在なのだ。


 ▽▽▽


 初めて見る顔立ちだ。

 顔の彫が浅く、小さなピンク色の唇に大きな黒い瞳。

 滑らかな象牙色の肌。サラサラのストレートな黒髪。

 育ちの良さそうな少女がキラキラする目で自分を見つめている。


「うむ。カスミの持っとる金で買えるな。ベルさんや隷属契約の準備をしてくれんか。」

 自分を買う?一緒にいる老人は少女の祖父には見えないが保護者なのか。


 猫族の役人が自分の首輪に詠唱し、去り際に

「すっごく可愛い女の子が主になって良かったわね。」

 と囁いた。


 自分は少女の前で片膝ついて見上げる。

 少女は頬を赤く染め胸の前で手を固く握っている。

 確かに何と可愛らしい少女だ。


「私の名前は、花野香澄ハナノカスミ。カスミと言います。」

 鈴のような声が聞こえた。

 自分はカスミと主の名前を呟いた。

 不謹慎だが、彼女の奴隷になれる喜びが体を巡った。


 ▽▽▽


 自分の主、カスミという少女は、奴隷の自分に高価な装備をさせてくれようとしている。

 嬉しいことだが、彼女はまだ子供で世の中の常識が分からないのだろう。


「申し訳ございません、カスミ様。この装備、自分には身分不相応ではないかと・・。」

 やんわり辞退した。

 が、急に彼女は柱の後ろから出て来て、毅然とした態度で、


「奴隷の身なりを整えるのは主の責任。

 フロックスさんの装備の責任は私。

 フロックスさんは顔良し!スタイル良し!今の姿は完璧です!。

 身分なんて気にせず装備して下さい!。」


 と言い放った。

 自分の容姿を褒められることに慣れておらず、カッと顔が暑くなる。

「ありがとうございます。」

 と呟くようにお礼を言うのが精一杯だった。


 よく彼女は自分を見つめ手を合わせ『眼福です。』と幸せそうに見つめてくる。

 どういうことなのか?わからないが

 彼女の作る幸福な空間に自分も満たされる。



 ▽▽▽


 彼女の活動の拠点、ヒャクニ屋という宿に到着。

 彼女のもう一人の保護者のジニアという老婦人に挨拶した。

 老婦人はカッと目を見開き、苦い顔をした。

 老婦人は魔眼を持っていて、自分の犯した事を知ったのだと気が付いた。


 彼女に聞かれないようにジニア婦人に釘を刺された。


「あんたの過去は言わないよ。ただカスミを泣かすような事があれば、私があんたを殺すからね。」


「はい。肝に銘じておきます。」

 彼女を泣かした時には夫人に殺されると聞き、安心した。


 ▽▽▽


 狼を狩ると死んだ狼に彼女は手を合わせ平坦な歌を歌う。

 何をしているのですか?

 と聞くと、神様に祈っていると。

 狼の魂が救われるように


 神の存在を信じているのですかと聞くと

 会ったことはないけどね。信じているよ。

 と即答された。


 彼女は自分に合わせてくれた神に感謝していると言った。


 神官でありながら神を信じられない自分は、自分を選び買ってくれた彼女に感謝する。


 彼女は沢山、自分を肯定してくれるが自分には心も体も強く求めてこない。


 自分は彼女の奴隷だから、彼女に自分から求められない。


 彼女に年齢を聞いたら15歳だと言った。

 成人を超えていて嬉しかった。


 夜、疑う事の知らない彼女に回復と治癒をすると言い近づく。

 純真な彼女の清らかな肢体を目と指で感じる。


 神とは縁が切れているが、隷属契約にて縛られているためこれ以上触れられない。


 彼女を自分の物に出来ない切なさと彼女を傷つける事が無い安心感。

 今日も彼女の奴隷に甘んじる。







駄文をここまでお読みいただきありがとうございました。

今日の貴女が幸せになりますように!!

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