奴隷さんにドキドキします。
花野香澄、異世界転生者。
無事に?奴隷さんを買って狼狩りが始りました。
ああ、今日も綺麗で優しい奴隷さんと一緒に過ごせて幸せです。
「突風」
ビョオオオオオオォォォォ、狼の群れが宙に舞う。
ドッ!ドッ!ドドンッ!地面に叩き付けられ5頭動かない。
残りの狼は這う這うの体で逃げて行く。
攻撃に呪文とかは必要ないのだけれど、ジニアさんにこちらの単語を教えてもらっているので、出来るだけ言葉に出すようにしています。
声に出す方が覚えるから。
「カスミ様、お見事です。」
私の奴隷+推しメンのフロックスさんが狼の生死を確認。
「今日は4頭死んでおりますが、1頭気絶ですね。
気絶しています狼はどうなさいますか?」
フロックスさんを購入して早5カ月。
毎日ほぼ一緒に傍にいますが変わらず神々しいです。
美しいプラチナブランドもお肌も前よりも一段と輝きを増し、痩せすぎだった体も肉付きが良くなり一段と見栄えが良いです。
「ここに置いてこうかな。今月の契約数は超えてるし、無駄な殺生はしたくないから。」
私の答えを聞くとフロックスさん笑顔で、
「わかりました。では、4頭を街道へ並べます。」
そう、フロックスさんは元神官。
殺生はやはり好きではないのに、狼狩りとか手伝わして申し訳ないと思いつつ、彼の笑顔に癒されています。
「おい!あんたら何で狼を逃がすんだよ。」
さっきまで狼の群れに「ヒイィー」って声も出せないくらい青い顔で震えてた商人さん。
真っ赤な顔で私に怒鳴ってくる。
「おい!聞いてんのか小娘!中途半端な仕事しやがって」
商人さんの手が私の首元を掴もうと伸びた。
パシッ!!
「汚らわしい手で触らないでいただきたい。」
すっごい速さでフロックスさんが商人さんの手首を押さえた。
今の瞬間を録画したい!。録画出来る物がないのが悔しい。
「クッ!お前ら狼狩りを仕事にしてるんだろうが!たった4頭しか殺さないっておかしいだろうが。」
「雇い主でない貴方に言われる筋合いないですよ。」
ヒャクニ夫妻の契約に狼全滅とは言われてないので、私は1カ月のノルマ分狼を刈っている。
商人さんはフロックスさんの手を振りほどき、
「これだけ狼が沢山出て俺たちが危険な目に逢ってんのに、何呑気な事言ってんだ。」
う~ん、商人さんの言い分もちょっと分かる。
狼の被害者あまり減ってなく、対策もされてない雰囲気なんだよね。
「もう、止めておけ。助けてもらったんだし。この人達に言ったって、仕方ない事だろう。」
商人さんと同行してるお爺さんが止めて、私達に一言礼を言って、商人さんと荷馬車で街へ行った。
私の前で商人さんから私をかばってくれているフロックスさん。
このお姿を録画出来る物がないのが本気で悔しい。
▽▽▽
「おや、ニコニコして何か良い事あったのかいカスミ。」
「な、何でも無いですよ。ジニアさん、フフフ。」
夕方からの宿の支度をお手伝いです。
フロックスさんはスカビオサさんの手伝いに行って外出中。
昼間、商人さんから私を守ってくれたフロックスさんの素敵さを思い返して頬緩んでました。
ジニアさんにフロックスさんの素敵話をしたいのですが、
「奴隷ってのはね、主に気に入られる為に何だってするさ。奴隷が素の自分なんて見せるわけ無いんだから、そんな簡単に信用するんじゃないよ。」
ずっとこんな反応を返されました。
ジニアさんフロックスさんに対して冷めた見方していて。
ジニアさんのいう事も分かるのですが、今日の話とか気軽に出来ない状態です。
ふと思い出しました。
「そういえば昼に助けた商人さんに、もっと狼狩りの頭数を増やすように言われました。
狼の被害あまり減ってないですよね。」
「そうかい。わたしゃあ、あまり街から出ないから被害数は知らないねぇ。」
「私も詳しい数字は分かりませんが、狼狩りを始めて狼の被害が減った感じは無いんですよね。
あと、不思議に思ってるんですが、狼の被害に遭うのってお金持ちが多く、お金持ってない人は被害にあまり遭って無いみたいなんですよ。」
「そんなはずないだろ。狼にとっちゃあ、金持ちも貧乏人も同じだよ。」
ジニアさんが笑いながらお肉の仕込みを始めました。
▽▽▽
「カスミ様は、狼の狙いがお金だと思われているのですか?。」
食堂で私とフロックスさんは夕食を取っています。
この世界の奴隷の扱いなんだけれど、主が居れば食堂などで食事していても問題なく、メニューも主次第で何を食べさせても良いそうです。
「書いて記録してないから証拠がないんだけれど、狼の被害に遭っている人達を見ているとね。
そうなんだと思うの。」
この世界、紙や鉛筆・ペンが無くて気軽にメモが取れない。
「ここに来て約半年間、狼狩りをしてきて思ったんだよね。
狼にとって人間って獲物向きで無いのに、何故毎日数人が狼の被害に遭っているのか。」
フロックスさん、魚をナイフとフォークを使い上手に切り分け、口に運ぶ。
食事の姿勢がとても優雅です。
私も一応ナイフとフォークを使って食べるんだけれど、魚を食べるの難しい。
この世界、残念ながらお箸が無いんです。
「狼にとって人間は獲物に向かないとは?」
「動物に比べ人間って美味しくないらしいの。」
フロックスさんの美しい眉が寄り、ナイフとフォークを皿に置いた。
「カスミ様は人間と動物を食べ比べた事があるのですか?」
フロックスさん、美しい顔を曇らせてアイスブルーの瞳で見つめてきた。
「無いよー!!」
あまりの質問につい大声を出してしまった。
恥ずかしい。お客さんたちの注目を浴びてしまった。
顔真っ赤の私を見てフフと笑むフロックスさん。
からかわれたのかな。
「味はわからないけれど、動物は怪我をしたらすぐに死に直結かもしれないから、危険の少ない狩りが基本らしいの。
人間には冒険者がいて、狼だって返り討ちに合う可能が高いじゃない。
そんな危険を冒さなくても狼の住む森に獲物がいるはずなのに。
何故、そんな危険を冒してまで人間を襲うのかしら。」
フロックスさんは食事を再開しながら
「狼の数が増え、森の獲物では足りないのでしょうか?」
「狼が森の動物をすべて食べ尽くしたわけでは無いと思うの。
狼狩りに森にも入るけれど、野ウサギや鹿をよく見かけるから。」
フロックスさんは食事を終えナフキンで口を押え、私と目を合わせた。
フロックスさんは本当に綺麗。
「つまり狼を操っている者達がいるのではとお疑いなのですね?。」
「確証はないけれど狼の数や狙われる金持ちとか、生態系的に不自然だと思うの。」
フロックスさんは優しく微笑み、私の立てた仮説に頷いてくれた。
▽▽▽
フロックスさんと一緒に部屋に戻る。実は同室です。
ベッドを部屋の壁に寄せ、背の高いパーテーションを真ん中に置いている。
5ヶ月前、フロックスさんの部屋を借りようと思ったら運悪く宿が満室で、ジニアさんが私が同室嫌ならフロックスさん食堂の長椅子に寝かすって。
フロックスさん体大きいし椅子では疲れ取れないじゃんって思って、意を決して同室で!って決めました。
正直24時間推しメンと一緒って気が疲れるなんてもんじゃなく、数々の恥をさらしましたが、フロックスさんの暖かな対応で気持ちを保っています。
「清浄」
体を清潔にして髪を乾かす。
「カスミ様、支度は終わりましたか?」
「・はい・・お願いします。」
狩りに行った日の夜は清浄魔法を使った後、フロックスさんが私の体に回復や治癒魔法をかけてくれる。
大した怪我なんて無いって言っても、小さな傷から菌が入る事があるとか言って絶対に断らせてくれない。
近頃は断るのを諦め大人しく見てもらっています。
上から順番に顔、首回り、肩、腕、手、足と、フロックスさんの美しい指が私の体に触れ、綺麗な顔が近づいて息がかかってる。
すっごく恥ずかしくて、フロックスさんから目を背け、固まってます。
顔がかなり熱い、早く終わってぇ。
「カスミ様、二の腕に小さいですが傷がありますので、治癒魔法をかけますね。」
と言って、フロックスさんは指を傷の上に優しく置き、詠唱した。
フロックスさんの使う魔法はエルフよりで詠唱の内容は解らないけれど、歌を口ずさんでいるように聞こえる。
フッとかすかに二の腕が温かくなり終わった。
「ありがとうございました。」
フロックスさんを見上げると優しく微笑んでいます。
まるで宝物を見るような瞳で見てくるから、また顔が熱くなる。
「おやすみなさい」
と目を逸らして言うとフロックスさんは
「お休みなさいませ。良い夢を。」
とバーテーションの向こうへ行きました。
ランプの灯りがユラユラ揺れる薄暗い部屋の中。
あー、気絶しそう。
フロックスさんは親切でやってくれているのに、ドキドキして凄くエロく見えてしまう。
自分が嫌ぁ。
フロックスさん大体22歳くらいらしい。
こちらの世界の人って種族で寿命がかなり違うから年齢をあまり気にしないけれど、会話ない時に聞いてみた。
私も年齢も聞かれたから15歳だと素直に言ったら、微笑んで頷いてた。
あの頷きはどういう意味なんだろう?。
ベットに横になり考える。
フロックスさんの笑顔を見るたびに、フロックスさんが奴隷に身を落としたのが不思議で。
彼の立ち振る舞いからはとても犯罪を起こしすとは考えられないのに。
何度か本人に聞いてみようかとも思ったけれど私の想像以上の悪逆非道な話があった時に受け止められるか心配で怖くて聞けない。
今の優しく微笑んでくれるフロックスさんとずっと一緒にいたいなあ。
長文・駄文ここまで読んでいただきありがとうございました。
心の広い貴女を祝福いたします!