仲間が欲しいと言ったら奴隷さんを買うことになりました。
花野香澄15歳。
ドワーフのヒャクニ夫妻にお世話になり異世界生活は順調です。
でも仕事(狼狩り)が行き詰まり、仲間が欲しいって言ったら奴隷さんを買う事になりました。
お金で仲間を買います。
今住の街、ダールベルグデージーから馬車で片道3日かけて到着しました。
首都カンパニュラ。
さすが、首都。白い大きなお城を中心に、柵の中に広大な庭を持つ立派な建物が立ち並んでいます。
通りを行き交う住人達も身なりの整った外見に落ち着いた態度の方が多く、通りには貴族が乗るような綺麗な馬車が、上品に走って行きます。
街の中を見渡しながら白いひげのドワーフ、スカビオサさんと歩きます。
スカビオサさんはいつもの白シャツにベスト、ベージュのパンツ姿ではなくて、紺の上下のスーツ姿で白いお鬚もいつも以上にサラッと手入れされており、毛先をリボンでまとめています。大変、可愛いです。
私は、薄いブルーのワンピースに腰に淡いピンクの太めのリボンを結んでいます。髪はサイドを少し取り後ろで結んでいます。
泊っている宿の女将さんが身支度をしてくれ、スカビオサさんが『貴族のご令嬢のようじゃ』と沢山褒めてくれて嬉しかっった。
「カスミ着いたぞ。あそこじゃあ。」
スカビオサさんが指さす方向には、広場の水路の先、真っ黒な石で出来たかなり大きな建物。
国営の奴隷販売所だそうです。
異世界転生した私、花野香澄15歳。職業『冒険者』。
今から、私は奴隷を買うらしいです。
え?本当に?異世界に来て大変お世話になっている、スカビオサさんのアイデアに反対出来なくて来てしまったけれど。
真っ黒な建物の前で気持ちが重くなってくる。
人をお金で買うって何か怖いです。
「スカビオサさん、ここまで来てなんですが本当に奴隷、買うんですか?」
「カスミ、そう緊張するな。ここには魔法使いも剣士も踊り子も、選り取り見取りいるはずじゃ。」
「え?何でそんな人たちが奴隷になっているんですか?」
「奴隷ってのは皆、何かしらの罪を犯し身分を剥奪される。
ただ服役させとくのは国庫にマイナスじゃてな。
奴隷契約させて主に絶対逆らわんようにさせ、社会貢献させるんじゃ。
国としては金が入るし罪人は減るしでなかなか良い制度だと思う。」
「犯罪者って怖いんですが。」
「重罪人は一般人が買えんようになっとるわ。大丈夫じゃ、行くぞ」
「あっ待って、スカビオサさん置いて行かないで。」
▽▽▽
国営の奴隷販売所の一室に通された私とスカビオサさん、長いチェアに並んで腰かけると、ピンと三角に立った獣耳と尻尾のある可愛い女性が入って来た。
「スカビオサ・ヒャクニ様、ようこそお越し下さいました。本日案内をさせていただきます、ベルと申します。」
「今日は儂のところで働く冒険者カスミが買うので。カスミの条件に合った者をお願いするよ。」
「かしこまりました。カスミ様、条件をお申し付けくださいませ。」
条件、奴隷に何を望むかって事?どうしようイメージがわかないんだけど・・・。
「男じゃな。」
スカビオサさんが私に言った。
「え?男って?」
「女の奴隷よりも男の奴隷の方が狩りに連れて行きやすいし、怪我しても気にならんじゃろ。」
「う~ん、狼狩りに同行してもらうし・・・では、男性でお願いします。」
「承りました。」
「あと、顔の良い奴じゃな。」
「え?顔が良い?」
「カスミは女の子じゃて。強面の野郎より顔が良い男の方が怖がらずに接する事が出来るじゃろ。」
「なるほど。では、出来るだけ顔の良い方でお願いします。」
「承りました。」
「あ!あと肝心な条件は魔法使い。回復系守護系の魔法を使える方をお願いします。」
「確かに承りました。条件に合います奴隷を連れて来ます。少々こちらでお待ちください。」
ベルさんは足音立てず部屋から出て行った。身のこなしが猫っぽい。
▽▽▽
「失礼します。」
べるさんが戻ってきて、奴隷を1人づつ私達の前に促す。
1人目は栗色の髪を後ろで一括りにして耳とフッサフッサの尻尾のある、たれ目の優しそうな顔の男性。犬っぽい。
ゴールデンレトリバーを擬人化した感じ。
2人目はスカビオサさんと同じドワーフ族かな。背が低く逞しい。
グリーンの髪と瞳でおっとりした雰囲気だわ。
3人目はうわぁ!!すっごい美人。
白銀のストレートヘアが腰までかかり、鼻筋の通った端整な顔に陶器の様な肌。
白銀の長い睫毛に囲また切れ長のアイスブルーの瞳は綺麗すぎて怖い!。神々しい!。
「なるほどな。カスミのタイプは3人目じゃな。」
「え?」
あまりにも綺麗で凝視してたら、好みのタイプだと決めつけられた模様。
「タイプって・・・・。」
慌てて手と頭を振って否定したけれど、
「そんなに恥ずかしがるな。儂にはお見透視じゃよ。」
ウインクしないでスカビオサさん、お見透視じゃないよ。
「べるさんや、3人目の男はいくらじゃい?」
無視して話を進めないで。
あんな綺麗な人、どう接したらいいのか、わからないよ。
ああ、ベルさん1番目と2番目の人をすでに下がらせてしまった。
私、組むなら1番目の犬っぽい人が良いと思うの。
「こちらの男性奴隷はハーフエルフでして罪状ランクは5段階中3。
元は神殿で働いておりカスミ様ご要望の回復・守護系の魔法はかなり高いレベルのものが使えます。
その為、価格も少々お高いのですが」
ベルさんから渡された紙の金額は、私の貯金額とほぼ同額。
この綺麗な奴隷さん買ったら一文無し。
よし!金額を理由に断ろう。・・え?
「うむ。カスミの持っとる金で買えるな。ベルさんや隷属契約の準備をしてくれんか。」
ええ、スカビオサさん待って、待って、
「スカビオサさん私、ここでお金払ったら一文無しです。」
「カスミ、良い買い物するには自分が一番良いと思った物を多少無理してでも買っておいた方が、後で後悔しないもんじゃて。大丈夫じゃ。
儂が付いとる。カスミには無利子で金を貸してやるからな。」
大丈夫じゃないじゃん。
借金とかしたくないって。
私がアワアワしてるうちにベルさん既に綺麗な奴隷さんの首輪に詠唱してるよ。
うっ!!綺麗な奴隷さんが私の前で片膝ついて見上げてきた。
何、何するの?綺麗な奴隷さんが無言で見つめてくる。
「カスミ様、ご自分のお名前を奴隷にお教え下さい。その後、奴隷の名前をお尋ねください。」
超綺麗過ぎて、心臓バクッバクッするー。
「私の名前は、花野香澄。カスミと言います。」
綺麗な奴隷さんは私の目を見ながらカスミと小さく呟く、は・・恥ずかしい、顔が熱い。
「あなたの名前を教えてください。」
「自分の名前は、フロックス・キョウといいます。
これより先、主カスミ様に全身全霊、捧げます。」
低い美しい声でフロックスさんが言葉を宣べると、首輪が一瞬光を放って半分に割れ床に落ちた。
フロックスさんの首後ろに刺青のように呪文が入っている。
「本日はお買い上げ誠にありがとうございました。この縁が双方に良きものであります様に。」
ベルさんがほほ笑んだ。
▼▼▼
「この子が俺の推しね!。」
「可愛いね。」
「だろ、歌も踊りも良いのにセンターに成れないんだよなぁ。この前なんて握手会行った時も神対応だったのに、すっげえ不思議。」
「それにしても、同じCD買いすぎじゃない。」
「それな。俺が彼女にしてやれるのって貢ぐくらいじゃん。俺にとって今この子、神だから。」
「・・あー、お母さんには内緒にしとくね。」
「ありがと。お礼にCD3枚やるからカスミも体調いい時に曲聞いてくれよな。じゃあな。」
「待って、お兄ちゃん。同じ曲3枚はいらないんだけれど。」
「病院で布教しといてよ。またなぁ。」
えー誰に布教すんの。同じCDをあんなに買うなんて。
しかも好きな子にしてやれることが貢ぐことって、貢いでもお兄ちゃん彼女と握手しか出来ないのに。
それで本当に良いのかなぁ?
▽▽▽
良いのよ。前世の私。お兄ちゃんの気持ち、今ならわかるよ。
「うわぁ、素敵!!似合う。あっ、そっちも素敵!。フロックスさんスタイル良いから何でも似合うね。う~んフロックスさんはどっちが良いですか?」
「カスミ様のお好きな方を。」
ここは首都の武器屋。
ダールベルグデージーに帰宅するまで時間があるので、フロックスさんの装備を買っています。
私、かなりテンション高いです。わかってます。
自分でもおかしいって。
だって、フロックスさん冒険者服に防具を装備、完璧ファンタジーの魔法戦士!!。
でも、フロックスさん耳の形が人間と同じ丸形で、人間とエルフの特徴が混ざっているから中途半端な存在だから容姿を褒められた事がないらしい解せぬ。
私なんてフロックスさんの美しさを目の当たりに出来ないので、柱から覗いて声かけているんですよ。
「遠慮しないで好きな方を選んでください。」
眼福です。手を合わせてしまう。
「・・・カスミ様のお好きな方を。」
「フロックスさん、出会ったばかりで言いづらいかもしれませんが、何かあれば何でも言ってください。」
フロックスさん何だか表情が暗い?
「申し訳ございません、カスミ様。この装備、自分には身分不相応ではないかと・・。」
あ~奴隷の装備にしては高価なのかな。
でも隣にいる店主と盛り上がって話してるスカビオサさんが、私に注意しないし買っても良いんじゃないかな。
「奴隷の身なりを整えるのは主の責任。
フロックスさんの装備の責任は私。
フロックスさんは顔良し!スタイル良し!今の姿は完璧です!。
気にせず装備して下さい!。」
『ブフォッ』スカビオサさんが爆笑。フロックスさんサッと頬が赤くなり、
「ありがとうございます。」
と呟く、赤らむ頬のフロックスさんも美しい。
借金のしがいがあるなぁ。合掌。
▽▽▽
帰りは夜行馬車も使い、明日の昼にはジニアさんの所へ到着予定です。
首都を出てから睡眠不足です。
何故かと言えば、
「カスミ様、良ければ自分に寄り掛かってください。」
超絶美形のハーフエルフ、フロックスさんが隣に座っているからです。
そんなの緊張して、無理。
「ありがとう。でも大丈夫だから。フロックスさんも寝にくいとは思うけれど寝てね。」
フロックスさんニコリと笑顔を向けてくれるけれど、余裕ないので笑顔返しが出来ない。
「ハァ、儂も早くばあさんに会いたくなってきたわい。」
スカビオサさん、フロックスさんに寄り掛かりながら、私の方をニヤニヤ見てくる。
止めてください。
フロックスさん、一目見て心を奪われる体験が出来るなんて。
つい神様、彼に出会わせてくれて、ありがとうございますって手を合わせてしまう。
お兄ちゃん、私異世界で推しを見つけたのかも。
長文・駄文、ここまで読んでいただきありがとうございました。
心の広い貴女が幸せがきますように!