異世界生活始ります。
花野香澄15歳。念願の異世界転生しました。
ドワーフのヒャクニ夫妻にお仕事もらえるかな?
ほのぼの?異世界生活始ります。
ジニアさんが椅子に座るように私を促し、ジニアさんも私と向き合うように、丸テーブルを挟んで椅子に座る。
「仕事ってどんなことをするんですか?」
私が聞くと、ジニアさんは
「焦るんじゃないよ。今から説明するからね。」
と言って、ポットのお茶を2つカップに注いだ。
・・・ジニアさんの話は長かったので、少しまとめます。
昔から街周辺には狼がいたが、人が襲われる事はめったになかった。
が、近年この街に来る人や荷馬車が狼に襲われ、死者が多数でるように。
街の警備にあたっている警備隊が狼狩りをするが、隊員が少なく手が足りない。
そこで、狼に賞金を懸けて一般人も狼狩りに参加させたが、狼に食べられる人がでて被害者が増えてしまった。
そんな中、街を治める領主様が、
「街の中で店を営んでいる者が、商品の流通に関わる業者や荷馬車の安全を確保するように。各店舗が月々決まった数の狼を退治すること。」
え、領主様、それはちょっと無茶ぶりでは。
「一般人を狼狩りに参加させたら、狼に食べられる人が多数出て、被害者が増えたんですよね?」
「まぁ、領主様がいいたいのは、これ以上狼狩りに金は出せないから、こっちで冒険者でも雇って狼を狩れって事らしいのさ。
ただ、冒険者にとっては狼狩りってのは微妙な仕事らしくてね。金は良いが、狼だけ倒すってのが単調作業に感じるらしく、飽きてすぐに辞めてっちまう。」
ジニアさんは、3杯目のお茶をカップに注いで飲んだ。
「で、カスミはあの狼の死体、どうやって手に入れたんだい?」
ジニアさんは、私の目をジッと見ながら真顔で聞いてきた。仕事の面接がいきなり始まったぁ。
「信じてもらえないかもしれませんが、私が倒しました。
あの私、魔法っていうか魔術っていうか、風を使えます。」
「じゃあ、あの狼はカスミが狩ったんだね。」
「はい。」
「カスミ1人で狩ったんだね。」
「はい。私が狩りました。」
ジニアさんの目をピタッと見つめて返事する。
うわぁ、緊張する。嘘でないのに力んで汗がでそう。
少し間をおいて、ジニアさんは急に表情を緩ませて
「フフ、わかったよ。信じるよ。カスミが狼を2頭倒したんだ。自信を持ちな。
冒険者としてやっていくなら、私が登録手続きをやってやるよ。
寝泊りはこの部屋を使っていいし、うちは1階で食堂をやってるから、食事も出来る。
部屋代と食事代は格安にしとくよ。」
急に部屋代・食事代と聞いて心配になった。ジニアさんはカラカラ笑いながら、
「なあに大丈夫さ。狼1頭の懸賞金で、カスミならひと月くらい余裕で暮らせる。
ほら、これ、カスミが倒した狼の賞金。旦那から渡しとくように言われてたから。大事に使うんだよ。」
ジニアさんは私の右手に、ジャラっと重い巾着を乗せて、「あー忙しい忙しい」と空になった食器を持って、小走りに部屋を出て行った。
一人はなんだか落ち着かないわぁ。
前世で過した病室は、昼も夜も色んな音がしていたからかな。
窓から下を見ると、沢山のお店が隣接し開店している。
通りを歩いてる人を見ると、おぉ、ファンタジーの世界。動物の耳や尻尾のある紳士、完全に猫っぽい顔の女性、爬虫類っぽい人もいれば、妖精さん・・・あれは妖精さんかしら、フワフワ浮きながら移動してる。
そうだ!。お金があるし日用品を買いに出かけよう。
▽▽▽
宿のフロントにいたジニアさんに日用品を買いに行くと伝え、ドアを開けると私より背の低い白髭のおじいさんに声をかけられた。
「お!!お嬢ちゃん、動けるようになったか。」
白髭のおじいちゃん、昨日私を助けてくれた人だ!!。
「助けていただき、本当にありがとうございました。」
「あぁ、こちらとしても狼2頭もらって助かったで。
お互い良い縁だな。
あと、ジニアに聞いたがお前さん、うちで狼狩りしてくれるんだってな。よろしくな。」
「はい、できる限り頑張りますので、よろしくお願い致します。」
と、頭をさげた。
お互い名前の紹介を終え、私が今から日用品や狼狩りの準備の為、買い物に行くと言うと、白髭のおじいちゃんスカビオサ・ヒャクニさんは
「儂、行きつけの店があるから、そこで買いな。」
と、買い物に同行してくれるらしい。
知らない土地なので案内をしてくれるなんてすっごく助かります。
斜め向かいのお店で日用品を、少し離れたお店で衣装とブーツを購入。
正直、自分一人ではこれだけ日用品を揃えられなかったと思う。
スカビオサさんは衣装や生活用品の説明もしてくれたし、店主に値引き交渉もしてくれた。
すごく親切にされて嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ちでスカビオサさんの顔をみたら、
「カスミには狼狩りという危険な仕事をやってもらうんだから、装備をしっかり付けてもらわんとな。」
と、笑って言われた。
頑張ります!!。
▽▽▽
宿屋に帰ると荷物を部屋に置き、1階の食堂へ。
食堂、賑わってる。
さすが異世界、個性豊かだ。さっき買い物中に、スカビオサさんから種族に関して聞いた。
この世界、大きく種族に分けると人間・エルフ・ドワーフ・獣人・リザードマン・この街にはいないけれど巨人族がいるって。
ヒャクニ夫妻はドワーフ族だと教えてくれた。
魔力に関しては個人の素質次第らしくて、例えエルフでも魔力が弱い人もいるし、ドワーフにも力が弱い人がいるから人種と職業は一致してないって。
さっき行った洋服屋さんの店主が、リザードマンのお姉さんで驚いたんだよね。
食堂の隅のテーブルでスカビオサさんが、おじさん達と楽しそうに大きなグラスを持って話している。
食堂というよりも飲み屋さんって感じかな。
盛り上がってるから声は掛けずにジニアさんの方へ行こう。
私はカウンターに座ってジニアさんにおすすめの料理をお願いした。
注文を聞いたジニアさんは本当に魔法のようにサッと肉料理を出してくれた。
ジニアさんって凄いってつい口に出してたら、この世界では食事や掃除などを行う生活魔法があるらしい。
料理は火と水の魔力に風を少々使い、掃除は風と水の魔力に火を少々使う。
この世界では子供の頃から習う魔法なんだって。
「カスミが料理や掃除を覚えたければ、店の手伝いしてくれるなら教えてやるよ。」
「是非とも、お願いします。」
異世界でのこれからの生活を考えたら、料理も掃除も出来ないと困る。
食事を終えて、部屋に帰ろうとする私に、ジニアさんがお湯の入った桶を「部屋で体を拭きな。」と、渡してくれた。
「ありがとうございます。」お風呂について聞こうかと口を開いたが、ジニアさんはお客さんに呼ばれ食堂へ戻って行った。
部屋に帰り服を脱ぐ。
今日買った布をお湯に入れて絞り顔や体を拭く。
布で拭いたところが、ジ~ンと温まり気持ちいい。
髪の毛を洗いたいけど、この世界の人どうしているのかな?明日ジニアさんに聞こう。
まだ、眠くないけれど、ランプ一個しかなくて部屋の中は暗いし、やる事ないからベットに入ろうかな。
あ~体を横にすると楽だわぁ。でも私、布団に入ってすぐに寝られな・・・zzzzz。
▽▽▽
チュンチュンチチチチ・・・朝は鳥が騒がしいなぁ。
あぁ、転生したての頃の夢をみていたんだぁ。
あれからまだ3ヶ月くらいしか経ってないけど。
こちらの世界に来て、ヒャクニ夫妻に出会えたのは本当に幸運だった。
ジニアさんの手伝いしながら料理や掃除の魔法を教てもらい、日常生活に慣れてきた。
そういえば、この世界にお風呂はない。
水魔法で体を清潔にするから。異世界に来て最初、ジニアさんが私に桶に入ったお湯を渡してくれたのは、会話の中で清浄魔法が使えないのが分かったからだって。ジニアさんって本当に気遣いの人、尊敬してます。
この清浄魔法少しコツがいるんだけれど、この魔法を使えば一瞬でお風呂上りの状態に。最初は失敗して、部屋を水浸しにしたり、水風呂に入ったように体を冷え切らせたり、逆に体が暑すぎて倒れたり大変だったけれど、今では毎晩お風呂上り状態に。良い香りが欲しい時は清浄魔法後に香油をつければ良し。
狼狩りも最初のころは勢いで毎日狩りに出てた。
狼は夜行性だと思って夜中に狩りに行ってたけれど、スカビオサさんの話によると昼の方が荷馬車や業者が襲われると聞き、昼とたまに夜にその日の気分で狩りに行ってた。
自分の魔力配分も解ってきて、空を飛び狼を探す時間は最長1時間。
これ以上飛ぶと攻撃魔法が弱くなったり、出せなくなる。
最初の頃、楽しくて2時間くらい飛んで、狼見つけて近くに降りたら、足ガクッて力入らなくて、着地後すぐに飛んで宿に逃げ帰った。間抜けだ私。
攻撃魔法は狼を狩るのに使う突風を2発くらい、これ以上の魔力を使うと疲れて動けなくなってしまう危険がある。空を飛ばなければもう2発くらい打てそう。必殺技と言えるくらい風を操れるようになって順風満帆な毎日だったの・・・。
なのに2週間前くらいから何故か狼を見つけられなくなり、1頭も刈れていない。
狼が減ったのかなと思ったけれど、荷馬車や業者は毎日襲われてると聞く。
困ったときはスカビオサさんに相談しだ。
▽▽▽
「おはようございます!。相談です。狼を見つけられません。」
食堂で朝食中のスカビオサさん、ビクッって驚かせてしまいすみません。
「おはようカスミ。狼は目も鼻も耳も利く、冒険者たちも狼に出くわすまでが一仕事なんじゃが、冒険者は魔法使いの『探索』を使い狼を見つけとるよ。」
冒険者って大抵チームを組んでいてその中に魔法使いがいる。
この世界の住人って魔力を持っていても生活魔法以外の魔法は使えない人が多い。
だから攻撃や守護、回復系の魔法が使える人は貴重。
私だって攻撃魔法が出来るし、回復も軽い切り傷程度は治せる。で、1カ月くらい前に一人で狩りするよりも効率的だし、友達も欲しくて、この街にいる冒険者チームに入れて欲しいと頼んで回った。
でも嘲笑を浮かべ無視されたり『子供のお守りは無理。』とはっきり断られたり、入れてくれる冒険者はいなかった。
何かあれだけ断られ続けると、私は必要ない人って皆に否定された感じで悲しかった。
冒険者には、断られるのが怖くてもう頼めないよ。
「私と組んでくれる冒険者いないんですよねぇ。」
「フンッ、こんな田舎町のレベル低い冒険者なんて相手にすることないわ。」
って、ジニアさんが来て慰めてくれる。
スカビオサさんも
「そうじゃな。こんな田舎町のレベル低い冒険者なんて気にするな。儂がカスミに合う守護や回復出来る魔法使い、すぐ見つけてやるわ。そうじゃ。カスミお前さん結構、金が貯っているじゃろう?。」
私は頷いた。
今、私の貯金はこの国で働く人の年収の2倍くらいある。
前世で看護士さんも患者さんも皆言ってた、お金は沢山あって困ることないお金大事って。
趣味がないなら貯金を趣味にしなさいって。
スカビオサさんは孫に人形でも買ってやるかのような笑顔で言った。
「よし!カスミ。明日、都にお前さんに合う魔法使いを一緒に買いに行ってやろう!!」
て、お金で魔法使いを買うの?
駄文・長文をここまで読んでいただきありがとうございます。
心の広い貴女に幸あれ!