お城で女子会。
花野香澄16歳。
お城にいる勇者様ヒイラギさん(異世界転生者)に呼び出されて
お城に来ています。
狼狩り進展するかしら。
猫足の大きな机を皆で囲んで座る。
1人掛け椅子に私が座り、隣にフロックスさんが立つ。
私の向かいの長椅子にはヒイラギさんとカレンデュラさんが座ってる。
勇者様とお姫様が私の前に座っているんだけれど、ヒイラギさんがやや力不足?カレンデュラさんが素敵過ぎなのか?
「カスミちゃん、失礼な事考えてるでしょ?」
ドキッ、ヒイラギさん何で分かるの?
愛らしい少女、ドワーフの戦士ロベリアさんが楽しそうに
「まあまあ、美味しいケーキを食べながら、狼狩りの打合せ始めましょうよ。」
と、話し出した。
7日前、あれから勇者一行が調査したところ、やはり狼達は金を持っている人達を中心に襲撃していた。
被害者の死体は、街の墓守さんが引き取りに来てくれるので、冒険者は狼の死体だけ街に運び賞金に替える。
中には手癖の悪い冒険者が被害者の金品を奪っていくので、被害者の金品が無くても誰も疑問に思わなかった。
街道は広いので狼の気配を探すため高位魔法の『網』を仕掛けた。
「『網』はね、長時間使うと沢山魔力使うから大変なんだよ。」
ヒイラギさんが言うと
「あんただけでなく、私も手伝ったでしょ。」
カレンデュラさんが言った。
『網』を張り3日後、街道の脇の森から、高位の魔法『隠者』を使った者が、壺から狼達を出し商人を襲撃していた。
商人や護衛者たちが殺されてから狼を壺に戻し、隠者はゆっくりと森から街道へ出て、金品を懐に入れて森へ持ち去った。
「因みに『隠者』に気づけるのは僕だけなんだよ。
かなりレベルの高い冒険者でも『神目』のスキルないと見えないんだよ。」
得意満面でヒイラギさんが言う。
「隠者って何者なのでしょうか?」
「それが、ちょっと問題して隠者捕まえられなかったんだよね。」
ヒイラギさんがチラッと仲間を見渡した。
ナスタチウムさんは苦い顔をして、
「姿が見えない敵を切れない。」
ロベリアさんはケーキを口に入れ
「姿が見えない敵は撲殺できない。」
外見から想像できない怖い事を言った。
カレンデュラさんは横目でヒイラギさんを見ながら
「誰かさんが殺さずに、生け捕ってくれてたら良かったのよ。」
と言った。
「いやあ、久々のバトルだったからつい力入っちゃったんだよね。」
舌を出してテヘッペロするヒイラギさん。
正直ムカつきました。
「殺してしまったら、もう隠者の正体は分からないんですか?」
私が質問すると、ブラキカム隊長が答えた。
「隠者の死体を調べたのだが、身分・経歴など一切分からない獣人でした。」
「まあ、次は生け捕りに出来るよう頑張れば良いさ。」
「次って?」
「僕の網に殺した奴も含めて隠者は3人いたんだよ。
あと2人いるから、カスミちゃんと捕まえようと思ってね。」
「・・私と。」
「うん。一緒に行動すると好感度が上がりやすいでしょ。
僕はすぐにカスミちゃんと結婚したいんだけれど、結婚前にある程度、お互いの事知っておいた方が良いとナスやロー、カレンが言うから。」
うわぁ?すっごく寒い。寒い~。
鳥肌がっ立ってきた。フロックスさん、怒ってる?
ヒイラギさんの中では、結婚前提になっているみたいだけれど私は結婚はしないよ。
お断りをハッキリ口にしようとしたら、ナスタチウムさん、ロベリアさんが目で制してきた。
『言うんじゃない!断ると怖い事が起きるから!』
何故かカレンデュラさんまで目で
『まだ駄目よ!。
今それを口にしたらあなたの身が危ないわよ!』
目でこんなにハッキリ伝えてくるとは、さすが勇者の仲間。
そういえば、ヒイラギさんは勇者。
勇者さんの権力や力を甘く見てはいけないわ。
私が黙っているのを肯定だと思ったのかヒイラギさんはご機嫌に
「じゃ、さっそく今日から一緒に暮らそうね。」
と、立ち上がった。
▽▽▽
お城の中の一室。
私からしたら大きな寝室に通された。
白を基調に薄いピンク花や置物など飾りが施された部屋で、つい「可愛いい」と声に出てしまった程。
ここで隠者を捕まえるまで過ごすようにカレンデュラさんに言われた。
「カスミ様、自分はこちらの部屋におります。何かあれば声を掛けてください。」
フロックスさんは私の寝室の続き部屋にいてくれる。
「うん、わかった。」
若いメイドさんが来てクローゼットの中のドレスを選び、私の身支度をしてくれる。
自分でしたいけれど常識が分からないので、メイドさんにお任せでお願いした。
支度が終わるころ、ロベリアさんが訪ねて来た。
「カスミさん、夕食の時間まで少しお時間いいかしら。」
▽▽▽
お城の中って部屋が沢山あるんだね。
当たり前か。
ロベリアさんに女だけで話そうと言われたので、私を心配そうなフラックスさんを部屋に残し、一人でロベリアさんに付いて来た。
カレンデュラさん、ロベリアさん、数人のメイドさんが部屋にいる。
メイドさんがお茶の支度が終わるとカレンデュラさんがメイドさん達を下がらせた。
カレンデュラさんの優雅で洗練された仕草に目を奪われる。
女子力ならぬお姫様力が高い。
「カスミさん、勇者と同じ転生者なんですってね。」
ロベリアさんが紅茶に大量の砂糖を入れながら聞いてきた。
「はい。ですが転生前にヒイラギさんとは会った事が無く、ここで初めて会いました。」
「知らない土地で同郷の異性に会ってどう思っている?
カスミさんは勇者に対して好意を持っているかしら?」
ロベリアさんから結構ズバズバした質問が飛んでくる。
「う~ん、正直、同郷とは知っても第一印象が良く無いので好意はあまりないです。」
自分に好意を持っていてくれる人を悪くは言いたくなくて、だからといってヒイラギさんに好意を抱いてない自分の気持ちを正直に言った。
でしょうね。
2人は私を見て頷く。
聞くまでもなかった的な反応。
「カスミは勇者の存在理由って知ってる?」
カレンデュラさんが急に難しい質問をしてきた。
「え?国の象徴ですか?」
スカビオサさんに教えてもっらた。
「まあ、そうね。
でもこの世界には大きく分けて5の国があるわ。
どこの国の象徴だと思う?」
分かりませんと首を横に振った。
カレンデュラさんは優しく微笑み、
「5か国、すべての国の象徴よ。」
と教えてくれた。
「勇者とは圧倒的な力でこの世界での戦争の抑止力となっているの。
何処かで国と国が戦争になれば、どちらかの国に肩入れすることなく両国を潰しに行く。
戦争の理由は関係なく仕掛けた国、仕掛けられた国、勇者によって破壊されるわ。
理不尽だけれども理不尽すぎて何処の国も戦争をしない道を選択している。」
ヒイラギさん、勇者って超怖い!
でもそれって
「ヒイラギさんをどこかの国が抱きいれたりしないんですか?」
カレンデュラさんは言い難そうに微笑んで
「各国、勇者に貢物はするわ。
リザード国は国宝級の宝石類を巨人族は城を建築して勇者に献上。
エルフ国は私、獣国はナスタチウム、ドワーフ国はロベリアが勇者に献上されているの。」
ええ!カレンデュラさん達は国から勇者に渡された人身御供なの。
「ふふ、カスミさんの驚いた顔面白い。」
ロベリアさんが声を出して笑っているけれど、そんな人身御供なんて酷い事だよ。
ヒイラギさんは分かっていて彼女達を受けたの。
「カスミさん、腹を立てているのは分かるけれど、カスミさんだって奴隷を持っているでしょう。」
はっっそうだ。
ヒイラギさんの事言えない。
私も酷い人だ。
「ぷーーーー!
もう、カスミさん面白すぎ!」
ロベリアさんは私の顔を見てお腹を抱えて笑っている。
カレンデュラさんは眉を寄せ肩を震わせ笑いを堪えている。
うわー、何か恥ずかしい。
カレンデュラさんが指で口を隠しコホンと咳払いして姿勢を正した。
「とりあえず、カスミが勇者に好意を抱いてない事が確認できたわ。
ただ、カスミには悪いけれども今はヒイラギのいう事を聞いて欲しいの。
ヒイラギは基本的には悪い奴じゃないけれど、ヒイラギは同郷の貴女に固執してるみたいだから、無理やりに貴女を攫うかもしれない。
ヒイラギを止められる者はこの世界にはいないのよ。」
いやあああああああ、攫うとか犯罪です。
しかも誰も助けられない的な怖いいい。
「ふふ、あまり心配し過ぎないでね。」
ロベリアさんが目の端の涙を拭きながら言った。
「私達で出来るだけカスミの事を守るわ。」
カレンデュラさんが言った。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
心の広い貴女が良いものと出会えますように!
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頑張って完結まで行きたいと思っています。
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