もやる。
花野香澄16歳。
何だか頭の中がモヤモヤします。
フロックスさんが何だかいつもと違ってモヤモヤします。
あと、勇者さんがモヤ・・・・・。
そんな回です。
部屋が暗い。
夜なんだぁ。
ここ、私のベッドだ。
お城に着て行ったドレスが目の前の壁にかかってる。
・・・あれ?私いつお城から帰って来たんだっけ?
「カスミ様、気がつかれましたか。」
いつもの恰好のフロックスさんが微笑みながらスープの乗ったお盆を持ってベッドの横の椅子に座った。
上体を起こし、フロックスさんに寝る前の事を聞こうと見ると。
「・・・・・!!」
フロックスさんの微笑みが冷たい。
能面。
顔に張り付けた笑顔。
部屋が暗くて近くで見ないと気付かなった。
思い出せ!!私。
何やらかしたの。
「カスミ様、失礼します。」
スッとフロックスさんの長く細い指が額を触る。
ひんやりした指手。
私の体調を診ている。
どうしよう、何か話しづらい雰囲気。
フロックスさんの顔色を窺うと、アイスブルーの瞳にランプの灯りが揺らぎ、艶麗な色合いに魅せられて。
うわー、もっと話しづらくなったあ。
心臓がバクバクするう。
「カスミ様、もう遅いですが、スープだけでも飲んで寝て下さい。」
ありがとうとお盆ごと受け取りスープを飲む。
チラッとまたフロックスさんの顔色を窺うけれど、張り付く笑顔で何も聞けない。
気まずくて味がよく分からないスープを飲み干した。
▽▽▽
あの夜から7日経ちますが、フロックスさんの笑顔は張り付いたまま。
いつも通りスカビオサさんフロックスさんと3人で朝食中。
スカビオサさんが話をしてくれていますが、ついフロックスさんが気になって。
どうしよう。
時が経てば経つほど、聞きづらくなってます。
お城に行った日の事を一生懸命思い出そうとしているのですが、私、お城の階段から多分落ちたんだと思うんですよ。
それからの記憶が分からず、フロックスさんの冷たい笑顔の原因って何だろう。
「なんじゃ、今朝はやけに外が騒がしいのう。」
スカビオサさんが不機嫌な声で言います。
ザワザワと宿の外が騒がしく、その騒がしい音が食堂の入口に入ってきました。
「朝早くから失礼します。ヒャクニさん。」
大きな熊の様な男性が一直線にこちらへ来る。
あれ、私この人、何処かで見たような。
「こんな早くに何があったんじゃ?ブラキカム隊長。」
「慌ただしくて申し訳ありません。
今からカスミさんに城へ同行していただきたくお迎えに参りました。」
え?お城へ?ブラカキム隊長って警備隊の隊長で、この前お城で会えなっかった人だ。
「いくら警備隊隊長とはいえ、前触れも無しに迎えに来るとは急すぎじゃろう。
城へ行くにしても此方は何の支度も出来ん。」
珍しくスカビオサさんが怒っている。
「誠に申し訳ありません。
支度などは不要にございます。
実は勇者殿がどうしてもカスミさんにお会いしたいとの事で、某が迎えに来た次第で。」
ブラキカム隊長は言い難そうに汗を拭いている。
勇者様?
何で私に会いたいの?
スカビオサさんが苦い顔をしている。
え?ジニアさんまで苦い顔。
フロックスさんは隊長を睨んでる。
何、この状況?。
スカビオサさんが苦々しそうに
「ブラキカム隊長を迎えによこされては、断れんか。
カスミ、気を付けていくように。フロックス、カスミを頼むぞ。」
「全力で守りします。」
フロックスさんが頷いた。
フロックスさん、私を何から全力で守るんだろう。
「いやいや、付添人は必要ありません。
私がカスミ殿のお迎えからご帰宅までお世話させていただきます。」
ブラキカム隊長が慌てて、私の手に縋りつく。
なんで隊長こんなに必死なの?
「カスミ殿、大丈夫ですぞ。
某がお守りしますからウォ!!」
フロックスさんから漂う冷気にブラキカム隊長が悲鳴を上げた。
「ブラキカム隊長、自分はカスミ様と隷属契約を交わし、カスミ様を守るためのみ存在しております。
ご同行をお許し願いたい。」
「ブラキカム隊長、フロックスを同行させないならカスミは城へは行かせないよ。」
ジニアさんの瞳がギロリと光る。
「ヒイイイ、魔眼・・・、わかりました。
しかしながら彼は奴隷ですので城の中までは同行できませんが宜しいですな。」
「仕方がないのお。
それでもフロックスがいないよりは良いじゃろう。」
「では、カスミさん。
朝から申し訳ないが、城へ行きましょう。」
これって、行かないって選択肢は無いんだね。勇者様の権力なのかな。
事情は分からないけれど、勇者様に会いにお城へ行くことになりました。
▽▽▽
「では、自分は中庭でお待ちしております。」
お城の中庭でフロックスさんとお別れ。
寂しいけれど心配されないように笑顔で城中へ行きます。
ブラキカム隊長の後ろを歩き、7日前も通ったかしら?と思いながら大きなシャンデリラのある豪奢な部屋へ案内されました。
「おはようございます。カスミ殿。」
オレンジの美しい髪を結い上げ、ブルーの大きな魅惑的な瞳。
豊満な胸が鎧からこぼれそう、布越しに盛り上がる見事なヒップライン。
鎧と剣を装備されてる妖艶な姿の女性。
「おはよう。カスミさん。」
それと身長は140センチくらい。
小柄だけれど胸の谷間が見えるチューブトップを着け、ショートパンツを履いた。
プラチナブロンドをボブカットにした、アメジスト色の瞳の愛らしい少女。
「おはようございます。」
艶やかな女性達、勇者様の仲間の方たちかしら。
「カ・ス・ミ・ちゃ~~~ん、やっと会えたねぇ。」
「え?」
金色の鎧にいきなりハグされた。
「く・・・苦しい・・・」
「ごめんね。嬉しくてついって、あれ?・・・」
ハグの力が緩み顔を上げ見ると、糸目の男性。
糸目の男性・・・?。
糸目・・男性・・・?。糸目・・・?。
何で、頭の中がグラグラする。
「あー酷いなぁ。
カスミちゃん『記憶喪失』がかけられてる。
少し失礼するよ。」
糸目の男性が私の額を指でなぞり詠唱してる。
頭の中のグラグラが治まり目の前がハッキリ視界が開けた。
勇者ヒイラギさんが私を抱きしめ微笑んでる。
あの時の記憶が一気に蘇った。
「カスミちゃん、目覚めた。」
「・・や」
「カスミちゃん、そんな怯えた顔しないでよ。」
「やだああああああああ!!」
私の叫び声と同時にヒイラギさんの頭が燃えた。
ボオオオオォォォ-!
「きゃあああああああああ!!」
人間蝋燭!衝撃現象!っていうか恐怖現象!
目の前の人間の頭が燃えてる!。
誰かが私の目をふさぎ、強い力で体を引き寄せられた。
いつも傍にある香り。
「フロックスさん!!。
来てくれたの。」
フロックスさんは私を見て、もう大丈夫ですよと微笑んでる。
「はー、何その男。なんでここに入って来てんの。」
ヒイラギさんが何事もなかったように腕組しながら、フロックスさんを睨んでいる。
ヒイラギさん、火傷もないし、毛髪一本焦げていない。
「私が入れたの。あんたがその子に不埒な事が出来ないようにね。」
高い声。
エルフのカレンデュラさんを見て、驚いた。
豪華な金の髪を結い上げ可憐なレースの花飾りをつけ、薄いピンクの花模様の入ったドレスはウエストが絞られて腰から美しい生地が幾重にも重なり優雅に広がる絢爛たる姿。
本物のお姫様だ。
ブラキアス隊長がフロックスさんを見てアワアワしているが、
「私の招待客よ。」
カレンデュラさんが一喝したら隊長も
「わかりました。」
と、安心したように息を吐いてた。
ヒイラギさんが口を開きかけたが、
「そろそろ、狼狩りについて打合せようか。」
妖艶な女性騎士ナスタチウムさんに遮られた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
最初から短編を書くつもりで始めたお話なので、そろそろ終回に向かう予定です。
心の広い貴女が健康でありますように!!