異世界転生しました。
花野香澄15歳。現世で病死し異世界転生を希望。異世界にてドワーフの夫婦に雇われ冒険者になります。
ある日、仕事の為に奴隷を買うことになったのですが・・・。
ほのぼの異世界生活。
初投稿、初制作です。
かなり心が広く大抵の事は笑って許せる優しい方に読んでいただけたら嬉しいです。
快晴な空の下ー
ファンタジーによくありがちな中世ヨーロッパに似た街を、白髭のドワーフさんと歩いています。
モンスター的な外見の住人達とすれ違いながら、水路のひかれている広場に来ました。
その水路の先、真っ黒な石でできた、かなり大きな建物、国営の奴隷販売所だそうです。
異世界転生した私は、花野香澄15歳。職業『冒険者』。
今から、私は奴隷を買うらしいです。
▽▽▽
今から遡ること約3カ月前。
私は日本に住んでいて、若干15歳にて病気で亡くなりました。
物心つく頃には病院にいることが多く、亡くなる前の数年は病院で暮らしていました。
家族は父、母、兄、私の4人家族。
私が亡くなるまで、家族はよく病院にいる私に会いに来てくれて、家族仲は良かったと思います。
特に兄は、自由のきかない私を不憫に思ってか、ゲーム・マンガ・ライトノベルなど『面白いから』と沢山くれました。私はライトノベルの転生物が好きで、異世界に憧れておりました。
もしも異世界に転生したらー
チート魔法使いで、今と違って強い身体で、思いっきり走り回って、動きたいように動いてー
前世で意識が暗くなって落ちるまでずっとお願いしていました。
『神様お願いします、私を異世界転生させてください!!』
フッと意識が戻ると、3個の月が輝く夜空の下、草原に仰向けで寝ていました。
えっ神様、本当にお願いを聞いてくれたの
立ち上がりながら自分の体を見ると、病院で着ていた浴衣タイプの寝間着に、足には足袋と草履を履いています。
身体は亡くなった時の細い枝のような状態なのに、重くも辛くもなくて元気が溢れてくるような、なんか大声出して走り回りたくなる!!初めての感覚!!
『ーあっーああー・・・あああああああ!』
身体から湯気のようなものがゆらゆらあがり、私を中心に風が渦巻きます。
これ、もしかして神様がくれたチート能力・・・。
「神様、ありがとうございますーーー!!」
興奮状態の私は、空に向かって両手を上げて神様にお礼を言いました。
夜空には、3個綺麗なお月さまと無数の星たちが輝き。
少し離れた周辺にはススキのような背の高い草が生い茂っています。
ウー・・・・ウー・・
あれ、草むらから低いうなり声が聞こえてくる。
見ると背丈のある草むらの中に光る目が数個、私の周りには野犬?狼?がいるみたい。
えーいつの間にか狙われてたの、というか早くも戦闘突入ですか!?
やばい!やばい!どうしよう。
せっかく生き返ったのに、また死んでしまうなんて絶対、絶対に嫌だよ!!
生きるの!!私は絶対に生きるの!!頑張れ、考えろ!私。
前にテレビで見た、野生動物には背中を見せてはダメだって、すぐに飛びかかってくるって、逃げるには動物と向き合ったまま後退しなさいって、え、無理じゃない、少ーしづつ後退してるけれど、狼の方がどう見てもジリジリと私との距離をつめてきてるよね。
ウオオオオオン。
1頭の狼が先陣切って飛びかかってきた。
「こっち来ないで!!ヤダァ」
私は、思いっきり腕をバタッバタッ振ると、狼に向かって勢いよく風が吹き荒れ、草むらの中の狼たちも宙に舞い上がり地面に落ちた。
飛びかかってきた狼とその後ろにいた狼は、地面に強く叩きつけられからか動かない。他の狼たちは、キャンキャン鳴きながら、逃げて行った。
動かない狼、舌を出して目を見開いてる。死んでるよね、私が殺しちゃったのかぁ。
生き物を殺す罪悪感に目が潤んでくる。
・・・ううん・・、私は生きる。この狼たちの分まで。せっかく異世界に転生させてもらえたのだから、自分のできる限りの事をして、精一杯、長生きする!!
私が生きるためにまずは、人の住んでいるところに行こう。ここで人として生きるには、情報が必要だよね。
当たりを見渡しても灯りはないし、怖いけれど空に上がってみよう。
自分の周りの風のながれを、少しずつ身にまとうように、体の下から風が流れる感じで、あ、少しづづ体が空に上がってきた。上空から見渡せば、少し離れた地上に灯りが見えた。
前世で遊んだゲームで見たことある、お城を中心に塀で囲まれた街。
とりあえず、あの街に行ってみよう。
狼の死体の近くに降り立ち、手をゆらゆら動かして狼の死体に風を送る。
風はイメージした方向には動くのだけれど、力加減が上手くいかない。
2頭ある狼の死体を1か所になかなか集められない。
うーん、能力を上手に使うにはやはり修業が必要なのね。・・よし!頑張ろう!!
風の流れをイメージをしながら、手を振る力を強弱つけて、左右の手の振り方なんかも変えて見つつ、何とか2頭の死体を1か所に集めることが出来た。
飛んでいければ早そうだけれど、狼の死体と自分の体を両方一緒には浮かせられないんだ。
狼たちを上下に1列縦にして風をまとわせて浮かせながら街まで歩こう。
▽▽▽
ハアッーハアッー・・・。もう、歩けない・・。
狼たちを風で運びながら歩くのには、かなりの集中力と体力が必要で、空から見た街に続く1本道まで何とか着いたけれど。もう本当に歩けない。
腕がプルプルするし、足もガクガクする。もう何時間経ったかわからないけれど、道沿いに座り込んでから、腰を上げられない。
この道、両側には街路樹が植えられて広い道が整備されていてるのに、何でかなぁ、人も馬車もあまり通らないよ。
たまに人や馬車が通っても、狼の死体のせいかそれともハァハァ呼吸の荒い寝間着姿の私のせいか、皆しっかり私を見てくくせに、誰も声をかけてくれない。
うぅ・・、他人に頼ってないで、自分で歩かなければ。
「・・・嬢ちゃん・・嬢ちゃん・・」
ハア・・ハァ・・
「おい!!嬢ちゃんって、聞こえんのか!!」
ハア・・ハア・・・
「ハア・・ハッ・・・私ですか・・ハア・・」
荷馬車の御者さんの横にいる白髭を生やした背の低いたおじいちゃんが、信じられない、私に向かって話してる。
「嬢ちゃんしかおらんじゃろうが、何処から来よったか知らんが、嬢ちゃんの横の狼、儂に買い取らせて欲しい。」
「ハア、ハア、えっ、本当ですか、ハア、買い取って・・ハアもらえますか?」
「あぁ、儂はスカビオサ・ヒャクニという者じゃ。その嬢ちゃんの横の狼2頭、キッチリ賞金と同額で買い取らせてもらおう。」
狼、賞金がかけられてたんだぁ。ヤッター!!賞金ゲットだぜー!!。
「ハア、ハア、では、買い取り・・ハア、お願い・・・ハア・・し・・ま・・す・・ぅ。」
「あ!おい!!嬢ちゃん」
バタッ!!。・・もう限界です。
▽▽▽
「起きな!。朝だよ!。いつまで寝てるつもりだい」
え!!怒ってるの、誰だろう?なんか絵本に出てきそうな小さなおばあちゃんだな。
「あの・・わたし・・」
「あんた、橋のところで倒れたんだよ。覚えているかい?」
「はい、そこまでは何とか記憶があります」
「昨日、街に入ってくる業者たちが、『狼の死体と座る幽霊のような女が道にいる』って、『あれは幽霊なのか人間なのか』って騒いでたんだ。
その話を聞いたうちの旦那が、『昼間にそんなハッキリ見える幽霊なんて聞いたことがない、その女は人間だろうから、狼を買いに行く』って、私は止めたんだけど、旦那は1度言い出したら聞かないからねぇ。
あ、体うごかせるなら、こっちのテーブルでスープでも飲むかい?」
「いい匂い、スープ飲みたいです。」
それにしても私、幽霊って思われたのかぁ。和装の顔色の悪い女って、異世界でも幽霊扱いなの。
「いただきます。」
野菜がいっぱい入っている赤いスープ。
異世界で初めての食事、ドキドキです。スプーンですくって一口、
「美味しい!!」
ほのかな酸味と野菜の旨味が美味しい。体がポカポカして頭もはっきりしてきた。
あ、少しだけれどお肉も入っている。
私が美味しいを連呼してスープを食べているのを見て、おばあちゃんの表情が柔らかくなったみたい。
「まぁねぇ、うちも切羽詰まってるから仕方ないんだけど。うちの店に課せられた今月の狼退治の頭数が足りてないからね。
旦那が荷馬車で出てって、あんたから狼を買い取る約束をしたとたん、あんたが倒れて、旦那がうちに運んできたんだよ。
旦那ったら運んできたくせに、自分ではあんたを看ずに、私に預けて。
今朝も早くから出かけてしまったよ。本当に勝手なんだからー。」
この後、おばあちゃんの旦那さんへの愚痴が始まったが、何故か最後の方は夫婦の惚気話になってきた。
私はおばあちゃんの話を聞きながら、スープを2杯いただきました。
おばあちゃんの話が途切れた。今だ、と私は立ち上がり頭を下げ、
「あの、助けていただき、本当にありがとうございました。」
ずっとお礼を言うタイミングを見計らってたんだけれど。
顔を上げると、おばちゃんは私よりも背が低くて、下から私の足から頭の先までジロジロ見てくる。
しまった。お礼のタイミングがおかしくて、機嫌をそこねてしまったかしら。
「わたしぁ、ジニア。ジニア・ヒャクニっていうんだ。
この街で宿と食堂をやってる。あんた、名前は?」
良かった。怒ってはないみたい。
「名乗るのが遅くなり、すみません。
私はカスミ。カスミ・ハナノといいます。」
名乗った後にもう一度頭を下げる。
「カスミ・・ハアノ?」
ハナノは発音しづらいらしい。
「カスミと呼んでください。」
ジニアさんは、カスミとつぶやいてからニヤッと口の端を上げて言った。
「カスミ、うちの店で働かないかい?」
ここまで、駄文をお読みいただき誠にありがとうございました。
ここまで読んでくれた優しい貴女に幸せな事がおきますように祈ってます。