7話:魔王娘の反抗期声明
主人公の優秀っぷりを御堪能下さいまし
勇者の噂は瞬く間に広がり、魔王牽制作戦の中心に据えられた。
仕方の無い事だとは思うが・・・
作戦の意味があるのか・・・
今回の作戦とは、遠距離で敵戦力と統率力を削ぎつつ、俺達が突っ込むと言う・・・
これこの人数で大丈夫?
「大丈夫だろ。」
はい、大丈夫だそうです。
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目の前に見えるのは・・・、いや私の目で見える程度なので相当離れた距離なのだが
「人数・・・多すぎ。」
「見えるのか。」
「一応、でも見た感じ数だけで全体的には雑兵かな。」
「ならば、魔法だけでも大部分の戦力は削げるな。」
レモは合図を出す。
すると幾多の魔法陣が形成され、あるものは紅く光り、あるものは白く光る。
あらゆる色が煌めき、幻想的な雰囲気を醸し出す。
「綺麗・・・。」
「まさに神秘の光と言うのだろうねこれは。」
レモはそう言うがやはり何処かで悲しそうだ。
「けれど戦場が綺麗だなんて・・・、皮肉にも程があるわ。」
「だな。」ナデナデ
「ちゃっかり撫でるの・・・やめてくれません?」
ラースが茶々を入れてくる、本当にやめて欲しい・・・くもないかも。
いや違う幾ら何でもそれは無い。
何かムシャクシャする・・・
「レモさん、私も撃っていいですか?」
「ん?、君も魔法使いだったか・・・しかし正式には君はメンバーでは・・・。」
ああ、そうだったな・・・私は社会勉強の一貫で来たんだったな。
「これも社会勉強になるでしょうし、撃たせてあげてください。」
「作戦にも支障なんて出ないだろう・・・。」
レモは手を敵へと促し許可を出す。
「ではどうぞお嬢さん。」
「承りました、オジサマ。」
私は詠唱する。
──このムシャクシャを込めて!
「煌めくは神秘の緋色、司るは煉獄の焔──」
魔法陣は前に展開されはじめる。
敵を焼き殺さんと魔法陣が染まっていく。
「──命の渇望も虚しく燃え尽きろ。」
詠唱は終了した、後はレモの合図を待つのみ・・・
「何とも凄まじい。」
「これ程とは・・・。」
絶句している2人、無理もないだろう。
これは母直伝の魔法なのだから・・・
私の出した魔法陣は他の魔法使いの出したモノよりも遥かに大きい、しかしただ大きくしてもそれで凄いと言われればそうでもない。
魔法陣はつまるところ情報だ、ただ大きくするという事は、情報をさらけ出す事に同義。
そんなことする魔法使いは二流三流を語るのも烏滸がましい、初心者だ。
まぁ私はと言うと、情報は最大まで最適化され最高まで極小にしても尚、巨大・・・言うなれば・・・
──完成された魔法陣。
作ったのは勿論お母様・・・
私が最もこの世で恐れる存在である。
「この情報密度、無駄の無い魔法式、素晴らしいな・・・だが少々魔力消費が激しいのでは無いのかね?」
「そうですね、でも私は直接戦場には出られないのでしょう?」
「ふむ、そうだね・・・、君を出す事はできない。」
ならば、撃っても問題無い。
確かに魔力消費が激しいこの魔法・・・
──人間ならばな
私は魔族だ、魔王の娘だ、舐めるなかれこの私を。
「敵も射程範囲内に入ったな・・・、敵を討ち滅ぼせ!!、第1波撃て。」
撃たれるは、凍結の魔法、地面に到達した光は敵の膝まで凍り付き足を止めるには十分だった。
第2波、炎の魔法、私の魔法含む炎弾が敵へと飛ぶ・・・
しかし、一つに魔法によって吸収される。
私の魔法です・・・
「他の魔法まで巻き込みおったわ・・・。」
最早レモは呆れているようだ。
正直スマンカッタ・・・
だが吸収だ、打ち消しているのでは無い、私の魔法は他の炎弾を巻き込む事により大きく、より強力になっていく。
それが敵に当たる時、瞬く間に広がり、全てを焼き尽くさんと燃え盛る。
続く第3派、風の魔法、吹き起こる突風、新鮮な空気を運んだそれは業火へと吸い込まれ、爆発的な熱量を生み出す。
業火は竜巻へと変わり煉獄地獄へと変わる。
巻き込まれる事は死を意味する、強い耐熱を持つ魔物でさえ外殻を溶かすその炎は尚も大きくなる。
「戦略級だな・・・これは。」
「勧誘して良かったわ。」ナデナデ
「撫でるな焼くぞ。」ガオー
結局残った魔物は端へ寄った一部の者のみ、ラース達が殲滅へいったので直ぐに片付いた。
魔法が凄まじい物だったらしい・・・
ムシャクシャしてやった、俺は悪くねぇ!!
──スンマセン調子に乗りました。
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「ティナの奴が、魔王ビュールンの軍勢を壊滅させたと聞いたのですが・・・。」
「らしいな、まったく私達の娘ながら無茶苦茶だ。」
「私達の娘ですものね、昔のあなたそっくりね。」
「おまえにも似ているよ。」
この仲睦まじい夫婦・・・
ティナの両親なのだが・・・
娘が同族と言ってもいい魔王の軍勢を吹き飛ばしても怒る様子はなく、寧ろ嬉しそうである。
「嬉しそうにしている場合ではありませんよ父さん母さん。」
「心外だわ嬉しそうだなんて。」
「そうだぞヘインズ、これは由々しき事態なのだからな。」
そんな笑顔で言われても説得力が無い。
自身の妹が反抗の意思を強く出してきたのと同時に両親の心配で一杯になったヘインズは・・・
取り敢えず溜息を吐く・・・
自身の口元が緩んでいるのにも気付かずに。
レモは後でティナが社会勉強で来たことを知ったので、後になって作戦から外しました。
結果的には出しましたが、レモはこの結果には驚いています。