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魔王の娘様は反抗期の様です  作者: タキオス
勇者装備捜索編
4/14

3話:家出は家を出るまでが本番です

ティナはドレスです。

スカートです。

後は・・・わかるね?

「家出など許すことは出来ぬ。シャルロット」

「わかっています。直ぐに保護を!」


 まぁそうなるな…


「カワイイ娘には旅をさせろなんていうでしょ!」

「知らぬわ! とりあえず家出は許さん」


 実力行使っきゃねぇ、でも準備とかして無いし。ここはやり過ごすが吉と見た。


「ごめんなさいお父様。私が浅慮でしたわ」

「そうかそうか分かってくれたのならそれで良いのだ」


 父はどうにかなった。

 しかし母はどうにも侮れない。今も尚、私から視線を外さず静観している。そしてなにかに気付いたようにハッとした。


「アナタ騙されないで、この娘は私達の娘なのよ!」

「ハッ!? そうであったな、私達の娘ならば決して油断出来ん」


 過去に何をやらかしやがったんだ!?

 まさか親バカ共に心理戦で遅れを取るとは予想出来なかった。母の勘には適わないとここのメモに記入おこう。


「騙すだなんて酷いわお父様!」

「グハッ!? すまない娘よ。だが私には何もしてやれん」


 お父様は完全に敵になってしまったみたいだな。だが私にはシャルがいるのだよ。


「シャルロット、ティナを見張るのです。決して一人にはしないで」

「ハッ」


 またもや先手を取られた。

 お母様は強敵だ、と心のノートに再度記入しておこう。


「ティナ、ごめんなさいね。しばらくは大人しくしていてちょうだい」

「…わかりました」


 結局自室に連行されました。

 けれど見張りはシャルだけ、抜け出そうと思ったら行けるのではなかろうか。


 と言うことで交渉だ。


「ねぇシャル」

「はい、何でしょうか?」

「シャルは家出は反対なの?」


 シャルは少しばかり言い淀んでから言葉を紡ぐ。


「私はお嬢様には自由に生きてもらいたい、とそう思っています」

「ならっ!」

「ですが、私はあくまでもメイド。主人には逆らえません」



「それに、お嬢様は魔王の娘と言う立場があり、外に出ることはそれを隠して生活をしなければなりません」


 シャルの言葉は最もだと思った。けれど俺は結構アウトドア派である。それも筋金入りの。


 知らない道があると知らぬ間に流れていたり、新しい店なんかが出来ると、迷わずその日に行ってみる。


 俺はそういう人だ。

 だから、特殊能力だとか、未知なる世界なんていう魅力的な言葉を聞くと今すぐにでも部屋を飛び出し、文字通り飛んでいきたくなる。


 だがシャルの言い分も分かる。

 魔王の娘なんていう存在を盾にすれば有利に戦争を進めたりできる。だから狙われるのを考慮しているのだろう。みんなが私に向ける感情が愛情であり、認識が世間知らずの娘なのだから仕方ないかもだが。


 だからこれは当たり前だ。心配するのも無理はないのだろう。


 だが今私には力がある。


 どんな能力なのかなんて知らない、本能で分かる。


 ──私《俺》は強い。


 私はそれを試したい。


 俺はそれで世界を見たい。


 自身の力や外の世界への好奇心が心を圧迫する。


「お嬢…様?」

「ん、なぁに?」

「何を企んでおいでなんですか?」


 おっと、顔に出ていたか。こういう所はどうも変わらないようだ。見た目はまるっきり違うのにな。


「なんだと思う?」

「無理矢理にでも抜け出そうなどと考えておりませんよね?」


 悪くないとは思う。実の所、準備自体は終了している。けれど─


「悪くないわね、でも流石にシャルだけでは無いのでしょう? 見張りは」

「何故そう思うので?」

「お母様は油断出来ない。これで全てが片付いてしまう。だから出るにも恐らく直ぐに捕まる位には人員を割いているはず。違うかしら?」


 シャルは溜息をつく。それは感嘆の溜息でもあり、呆れの溜息でもあるのだろう。そういう所にばかりに頭を回すなと言いたいのだろう。


「図星ね。でもこれでは本当に家出が出来ないわ」

「やっぱり諦めてはいないのですね」


 また口が滑った、俺の悪い癖だ。


「もう…」

「お嬢様?」


「限界だ。もう我慢が出来ない」

「お嬢様何を─ッ!?」


 もう駄目だ。もう出たい。


「洒落臭ぇ! 俺はもう無理矢理にでも出てくぞ」

「お嬢様、また口調が!? と言うよりも逃がすわけが無いでしょう」


 シャルが拘束しようとしてくる、が私には効かない。魔王の娘である私の身体能力を舐めないで欲しい。


 俺は天井を駆け、扉を蹴破る。


 シャルが追ってくるのが見えたが、扉を閉めてそれを防ぐ。外には衛兵が二人。だがそんなの関係ねぇ。


「ティナ様、お止まりください」

「止まれと言われて止まるとでも?」


 長い廊下は衛兵の槍により阻まれているが。


「下がガラ空き!!」


 スライディングで衛兵の股を抜けると同時にシャルが部屋から出てくる。


「ヘインズ様、ライフォード様!お嬢様は現在廊下にて逃走中。確保をお願いします」


 出るのか、兄様方が。


「ティナ、悪いが拘束させてもらうぞ!」

「悪ィなティナ、国が傾くのは許容できねぇんだわ」


 俺一人で国が傾くのかよ…


「私は世界を見たいの! だから家出するわ」


 ティナは翼を広げる。漆黒の翼は大きく広がり少女の体を浮かせる。


 目指すは窓、見えるのは雲海、そうこの魔王城は天空の城『選定城ロリヌス』。


 追手はいない。一気に振り切ったからなのか諦めたからなのかは分からないけれど。


「飛ぶって気持ちいい!」


 雲はうねり、その切れ目からは緑が広がり、先には海がキラキラと輝き宝石のようだ。


 でも─


 ──これからどうしよっか。


 予定は未定である。されどそれがまた俺の心を踊らせるのだ。



次回はティナをもっとハッチャケさせたい!

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