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クリスマス企画☆朔の秘密のお願い

 「朔はサンタさんに、何をお願いしたの?」

「おとうさんには、ないしょだよ!」

正直、これは小さい子どもを持つ両親としては1番困る返事。かといって、“心の中でお願いすれば、サンタさんは僕の欲しいものをわかってくれる”、そう思っているだろう朔の気持ちを台無しにするわけにもいかないし。

この頃は仕事が立て込んでいて、俺はおそらくクリスマスイヴも早く帰れないけど、朔のプレゼントだけはちゃんと買って帰るという約束を凛と交わしている。

 隣に座る朔から目線を上げると、ちょうど凛が両手に包みを持って戻ってきたところだった。

晴れた休日、3人で公園を散歩するのが我が家のブーム。たまたま移動販売のワゴン車を見つけたので、ここでランチにしようということに。

「買って来たよ~!はいっ、朔のはこれね。で、これが大斗さん!」

「ありがと!」

大好きなホットドッグを手渡され、嬉しそうに微笑む朔。凛もまた、朔に微笑み返してる。

……あー、この2人見てたら、ほんとに癒されるなあ。どこからどう見ても親子だ。

ほーっとなってる俺を見上げて、朔は

「おとうさん、食べないの?」

不思議そうな顔をしながらも、ホットドッグを頬張る。親バカだって、自分でもわかってるけど言わせてほしい。

―――可愛い!!!


 その夜、朔を寝かしつけた後、俺と凛は作戦会議を開いていた。議題はもちろん、朔へのクリスマスプレゼントについて。

「凛は何か心当たりある?朔が最近、興味持ってるものとか」

「うーん…。ちょっと前なら、ジョンっていう犬のキャラクターが好きだったんだけどね。もう飽きちゃったみたい」

ジョンは俺も、もしかしたらって思ってはいたんだけどなあ。すでに飽きちゃったか…。

時短勤務で、俺より長い時間一緒にいる凛ですらわからないのに、俺にわかるはずがない。でも、適当なものをあげるわけにもいかないし…。

「クリスマス・イヴまで、あと3日しかないんだよなあー。どうしよ」

「なんとか聞き出すしかないかな…。“サンタさんにしか言わない”って言い張ってはいるけど」

「朔は誰かさんに似て、1回言い出したら聞かないからなあー」

「ちょっとぉー。“誰か”って、誰のこと?」

思わず口を噤むと、凛が不機嫌そうな顔をしてそっぽを向いてしまった。


 そして迎えた、12月24日の朝……。実はまだ、プレゼントを買えていない。

「じゃあ、俺が仕事帰りにジョングッズ買って来るってことでいい?もし、それまでに何かわかったらLINEして!」

「うん、よろしくね」

凛と今夜の打ち合わせをしてたら、寝室から朔がそろりと出てきた。すごく眠そうに、セーターの袖で目をこしこし擦っている。

「おはよう、朔」

「おはよぉ……」

席に着く朔の前に、凛がホットミルクの入ったマグカップを置いてあげる。ちびちびとミルクを飲む様子が、なんとも可愛い。

「今日は幼稚園でもクリスマス会だよね。ちゃんと、プレゼント持った?」

朔の通う幼稚園のクリスマス会ではプレゼント交換があって、1人1つずつ何かしらのプレゼントを持ち寄ることになっている。朔が持っていくプレゼントは、この間の休日に買ったミトンだった。

「うん、持ったよ。アマンダに当たるといいなあ」

アマンダは、朔と仲良しの女の子。保護者の間では、2人は両想いだという噂だそうだ。

「そうだね。朔も何が当たるか楽しみだねー。帰ってきたら、お母さんともクリスマスしようね」

「うん……」

このとき、朔の表情が少しだけ曇っていたことに、俺たちは全く気づいていなかった。


                   *


―――奇跡は、その日の夕方に起きた。

「おい!一体どうなってるんだ?」

「わからないよ!管理棟に連絡を…って、電話も使えないのか!」

「携帯で連絡します!」

なんと、この地域一帯で大停電が起こって、社内中が大パニックに陥ったのだった。しかもあいにくの悪天候で、まだ夕方なのに照明なしでは手元が真っ暗。

復旧のメドもたたないようで、今日は全員退勤ということになった。

俺はとりあえず、先に帰っている凛に連絡を入れて、ジョンのぬいぐるみを買いに行くことにしたのだった。


 “秘密にしておいて、朔を驚かせよう!”という凛の発案で、俺が早く帰ることはまだ内緒。

音を立てないようにゆっくりと鍵を開けて、忍び足で中に入っていく。

「ただいまー!!」

勢いよくリビングの扉を開けると、朔は驚いて目を見開いていた!大成功だ。

その様子を見てくすくすと笑いながら、凛が俺のコートを受け取ってくれる。そこでこそっと、「玄関の棚の下に隠してあるよ」プレゼントの在り処を伝えておく。

テーブルに目線を戻すと、朔はまだ驚いた表情のままだった。

「どうした、朔」

「……サンタさんって、ほんとにいるんだね」

「え?」

なんのことかと、今度は俺と凛が目を丸くしていると、朔は嬉しそうににっこりと微笑んだ。

「僕、サンタさんにね、“おとうさんとおかあさんと、3人でクリスマスができますように”って、お願いしたんだよ!ほんとにお願い、聞いてくれたんだね」

「「………」」

俺も凛も、朔の予期せぬ言葉に何も言えなくなってしまって……ただただ、微笑むだけだった。


                  Fin

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