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吉川家の食卓

 「ねえ、専務に会ったことある?」

「専務?うーん…。重役会議のサポートしたときとか、ちらっとは見たことあるよ」

サラダを取り分けた小皿を、大斗さんに手渡す。よっぽどお腹がすいていたのか、大斗さんはすぐに箸をつけた。

「今日、専務が5階のカフェスペースにいてね、カフェオレくれたの」

「え?なにそれ」

今日初めて作ってみたチーズ風味のドレッシングが口に合ったのか、大斗さんの顔が「ん?」と少し綻んだ。

お互い早く帰れる時期は、こうやって一緒にご飯が食べられるから嬉しい。

「ふふっ、なんでもない!専務は優しいなって話だよ」

「俺も優しいよ?」

大斗さんが少し拗ねたように言った。

「うん。知ってる」

頬に手を添えて軽くキスすると、もう機嫌を直したのか、大斗さんの口元が緩んでいる。

ゲンキンだなあ。

「専務ってさ、まだ若いよね。たしか今年27?俺と凛の間か」

「織原社長の息子さんなんだよね。役付き入社ってこと?」

「そうだよ。そういうのって、まわりから反発されることも多いらしいけど、うちの専務は完璧な人だってうわさだよ。アメリカの大学卒業後は海外でビジネスをしてたらしくて、人脈もかなり広いんだって」

やっぱりビジネスへの関心が強いのか、気持ちを込めた話し方をする大斗さん。

大学は外国語学部で、就職活動では海外も視野に入れていたというぐらい、世界に憧れているらしい。

「へえー。気さくな人だと思ったけど、そんなすごい人だったんだね」

「まあ、人望もあるんだろうな。そうじゃないと、入社後いきなり専務なんて普通はできないし」

大斗さんはサニーレタスをシャキシャキいわせながら、お箸でミニトマトを探っている。

一緒に暮らすようになってから、すごく食べるようになったなと思う。痩せすぎで心配だった体も、細身なのは変わらないけど、ほどよく逞しくて健康そうに見える。

「肉じゃがのお鍋、持ってくるね」

「うん。ありがとう」

同棲や結婚をする前は、働きながら家事なんてできるのかなって不安だったけれど、大斗さんが協力的だからなんとかなっている。お休みの日なんかは、お風呂掃除や洗濯とかを先にやっておいてくれたりして。彼も1人暮らしが長いからだろうか。

お互い温和な性格のおかげで、これまで大きな喧嘩もせずにやってこられた。これからも平和な日々が続くと良いな…。

このときの私は、その直後にやってくる嵐のような日々のことを、まだ知る由もなかった。

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