手のぬくもり
凛の1週間の夏休みは、楽しすぎてあっという間に過ぎてしまった。
そしてとうとう、明日の朝には帰ってしまう。リビングには、お土産をたくさん詰めたキャリーバッグが置かれている。
「次はいつ会えるんだろうねえ…」
夕食の席で、凛はお皿の上の肉団子をフォークで転がしながら、ぼんやりとつぶやいた。
そんな寂しそうな顔されたら、無理にでも引き止めたくなってしまう。
「プロジェクトもかなりいい感じに進んでるし、きっと来月には日本に帰れるよ」
俺は努めて明るく言った。内心、悲しみに暮れてはいるけど…。
「でも、うまくいけばの話でしょ?何かトラブルが起こらないとも限らないし、そうなればどんどん延びるんだよね……」
「大丈夫だよ。1日でも早く帰るために頑張ってるから、凛は何も心配しないで日本で待ってて」
「うん…」
まだ寂しそうな凛の手を、上からそっと包み込む。
凛がゆっくりと顔を上げた。
「ほら、そんな顔しないで。また毎日スカイプしようよ」
「でも、こうやって触れられなくなるんだね」
俺の手を、凛のもう片方の手がさらに上から包む。すべすべの手の感触が気持ちいい。俺はかなり日焼けしてしまっているから、凛の手の白さがさらに際立っている。
「じゃあ、今夜は思う存分触っていいよ。俺も触るから」
「もう、その言い方…」
「お互いの手が、お互いの感触をしっかり覚えられるまで…ずっと触れ合お?」
「うん…」
凛は照れながらも、ようやく微笑んでくれた。
これでもかというぐらいお互いに触れ合った夜が明け、凛は笑顔で日本に帰っていった。そして、支社には専務の姿もなかった。どうやら凛の帰国日に合わせて、大急ぎでこっちの仕事を終えたらしい。まあ、予想はしてたけど。




