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序章 ゲート

 俺こと、十御醍流は孤児だったそうだ。


 物心着いた時には十御醍神社の一人息子として育てられていた。何一つ不自由はない生活だった。しかし、大学に入学した直後男手一つで育ててくれていた父親が交通事故で死んだ。


 ・・・・・・そのとき俺はある秘密を知ってしまった。それは・・・



 ―――十御醍神社は莫大な借金を抱えていて、その返済のため俺を引き取りある年齢に達したとき臓器を売るという内容の契約書を見つけてしまった・・・・・・。



 ―――流は幼い頃からとても利発な子供だった。利発すぎたが故に常に周りのことを冷めた目で見たような感想を抱いていた。小学生の時も中学生の時もクラスメイトなどが協調性を育むとか言って相手に気を遣っているだけの状況をバカバカしく思っていた。というようにほかの人が普通と思うことを普通と思えず現存する社会の体制に対しても何に対しても違和感を覚得ていた。


 ―――それゆえ、流はその契約書を見てもさほど驚きはしなかった。それどころか、所詮この世界はこの程度かと呆れる程度だった。


 しかし、このあとどうしようかと俺は考えた。契約書の内容ではあと数ヶ月で、臓器売買の期限である。もし父親が死んだのが取引相手に知られているのならすぐにこっちに来る可能性は大いにある。ほかの人間のいいようにされるのはものすんごい癪だ、これを回避する方法を考えたが、数分考えてからふと思ってぼそっとつぶやいた。



 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺って一人じゃ何にもできないのな。」


 でも、どうにかはしないといけないと思い考えていたら、数年前から父親が言っていた一つのことを思い出した。父親は『何かあってお前が本当に切羽詰まったときは奥の部屋の扉が開けれるようになると思う。もしも開ける事ができたたなら、絶対にお前の助けになる。』とか言っていたと思う。当時はさほど興味もなく聞き流していた程度だったのだが、今となっては当時の記憶に頼るしかないようにも思える。どんな原理かよくわからないけどやってみる価値はあると思った。



―――十年前―――

 ―――神社の裏にある生まれ育った家は大抵の人が見たら大きいと驚くぐらい大きく、それゆえ流も幼少時代はよく迷うことがあった。その時に一度だけたどり着いたことがある異様に大きな扉があった。A4の紙に『触るな禁止』と書いて扉に貼ってあるのだが、扉の大きさにあっておらず歪に見える。そうでなくても不気味な装飾で正直見ていて気分のいいものではなかった。だが、好奇心は子供ながらにあったから扉に触れて見たいと思い手を伸ばしたが、触る寸前で父親が来てそれはできなかった。


 それ以降は扉を見たことすらもなかった。

 

 俺はそんなことがあったと思い出しながら、急ぎ足で廊下を歩いていた。歩きながらひとつの心配事があった。それは、数十分歩いても扉が見つからないのだ。流石に、この家は普通の一軒家にしては大きいだけで、二、三十分あれば、余裕に隅から隅まで行ける程度の大きさである。だが、見つからない。



 そのとき、床に転がっていたバナナの皮を踏んで大いに転んだ。



 「誰だ! こんなところにバナナの皮を置いたのは!」

 といったが、この家にはもう流一人しかいなく、バナナは好きじゃないので食べない。

 「は? さっぱりピーマンわけワカメなんだけど・・・・・・。」

 とひとりでにつぶやいて尻餅をつきながらバナナの皮を手に取って上を見た。


 ―――空中に食べかけのバナナが浮いていた。



 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」



 素っ頓狂な声が出たが、それもそうだ。食べかけのバナナが浮いているのだから。


 俺は、自分で自分に言い聞かせるように。「落ち着け、落ち着け。」といい、空中にあるバナナをつかもうとした。


 そして、掴む直前、バナナが動いた。しかも、追いかけて何度捕まえようとしても優雅にバナナはその手をかわしてどんどん逃げていく。これには、さすがの俺も動揺した。


 俺は驚き、動揺し、どうすればいいのかわからなくなり、咄嗟に手に持っていたバナナの皮を投げた。すると、空中から、可愛らしい声で


 「うべっ」


 というような声が聞こえた気がした。


 俺は、呆気に取られていたが数秒後バナナが浮いているところに何かがいると推測し。なにか捕まえる棒でもないかと周りを見渡すとそこは台所だった。


 追いかけてるうちにいつの間にか台所まで来てしまったらしい。


 俺は、その何かが逃げられないように急いでドアへ行きドアを閉め元の場所を見ると食べかけだったバナナはバナナの皮になり下に落ちていた。


 これだと場所がわからない。そう思った流は咄嗟に台所の下の戸棚から大きい袋を持ち出し、袋を破って中身をたくさん振りまいた。


 その袋の中身は小麦粉だった。俺は小麦粉が気管に入りむせながら空中に浮いている真っ白な塊を両手で掴んだ。


 すると、その真っ白な塊は意味わからないことを言い出した。


 「アクシナムチ! スーテルパコサミ!」

 「何それ意味わかんない。ぼへっ、日本語で喋れ。」

 「おぉ、そじゃったな、ごほっ、お主無礼じゃぞ! その手を離さんか!」


 時間が経ち小麦粉が視界からなくなった頃ようやくなんか喋ってる物体の全容が見えた。ついでに、色もついていた。よくわからないが、見えなくなる何かを解いたらしい。それは、身長120cm位の女の子だった。見た目的にはとっても美少女(多分。小麦粉まみれで顔はよく見えない)。自分の身長よりも長い白銀の髪をなびかせ、向かって右側にサイドテールをしている。さらに眼の色と同じ燃えるような赤色で膝上までの丈の着物を着て、赤みがかかった透明の羽衣をつけている小学生って感じだ。頭にドクロのピン留めをしているのが変な子ってかんじでさらに印象的だ。


 そして、ちょうど小麦粉をバッサリかぶった頭を掴まれて身動きがとれない状態だ。


 俺は掴んでいた生物が女の子だとわかるとすぐに手を離した。

 のではなく、抱きしめた。


 「な、なんじゃお主は! ふごふご」

 「あ、すまない。可愛かったからつい・・・・・・。」

 「ついってなんじゃ、ついって! ・・・・・・・・・・・・まぁいい。お主、妾を追いかけてなんの用じゃ。」

 「いや、それはバナナが浮いてたから捕まえようと思っただけ。」

 「ふーん、まぁいい。それよかそろそろ手を話せ・・・・・・。」


 彼女は頬を赤らめながらぶっきらぼうに言った。


 「あっ、ごめん嫌だったかな。こんな美少女に会ったのは初めてで・・・・・・。ってそうじゃないじゃん! 今急いでるんだった。じゃあまた今度会えたらね。」


 俺はこのとてつもなく可愛い幼女との別れを惜しみながら台所を出て再び扉を探し始めた。


 が、しかし台所を出てから二つ目の部屋を見た時、今度は俺の好物。冷凍オレンジが浮いていた。


 ―――流はオレンジが大好物でそのなかでもとくに冷凍オレンジが大好物だ。学校の給食で出る冷凍ミカンを冷凍オレンジには変えられないのか! といい先生を困らせたほどだった。


 そんな俺が冷凍オレンジを持ち出されて怒らないわけがなく


 「おい! そこのお前! 俺のオレンジ様をどこにやろうとしてる!」

 と言いながら、冷凍オレンジがあるところに掴みかかった。

 


 ふにょん

 


 そんな感触がした気がした。何回か手をグーパーしてみると。そこにいるらしい女の子が「はぅ」とか言っている。


 流は自分がしたことに気づきすぐさま手を離し土下座し謝った。


 「ごめんなさい、そんなつもりはなかったんです。訴えないでください。」


 触ってからここまで約五秒とんでもないスピードの土下座だった。


 「い・・・・・・いえ、こちらこそ、オレンジ様というのですか? ペットのオスローに似ていたもので・・・・・・つい。」


 と、声がしたほうを見ると身長は140cmほど、またもや白銀色の髪で、それが肩にかかるほどで綺麗にウェーブがかかっている。今度は眼の色と同じ沖縄の海のような透き通った青色をしている膝上までの丈の着物と、同じ色の羽衣を着けている。顔は幼い顔立ちをしているのに、体は発達しすぎている。いわゆるロリ巨乳だ。さっきの幼女と比べても遜色がなくとてつもなく可愛いのが分かる。 キリッ!


 「あああああああああああーーーーーーーーー」


 流はそう叫んだあと小声で


「何がとてつもなく可愛いのが分かる。 キリッ! だ! 今はそんな場合じゃないだろ」


 と言った。ロリ巨乳の彼女はさっき発した奇声に驚いているようで、


「ご、ごめんなさい。」


 と涙目で言っている。俺は涙目になっている彼女に申し訳ないと思いながらも扉を探さないといけないと考え、この場を早々に立ち去ることにした。


 「え~と、すいません。何でもないです。そのオレンジは差し上げます。では。」


 俺が今日とてつもない美少女に二回も会えたのはどういうことなのだろうか・・・・・・。


 もうすぐ死んじゃうのかな・・・・・・。


 などと考えながら扉を開けるとそこには先ほどの可愛い幼女がいた。


 「貴様、妾の話の途中でいなくなるとはどういった了見だ!」


 そして、流が声を出そうとした瞬間後ろから声が聞こえた。


 「あ、サランディーネ姉様! どこに行ってらしたのですか? 探したのですよ。」 

 「え・・・・・・・・・・・・? 姉様?」

 「ええ、姉様です。」

 「そうじゃ妾がサランディーネ・ラジウス・セルラウスじゃ! ふははは妾を崇めよ! 崇めよ! そしてそっちは妾の妹オンディーナ・テルリ・セルラウスじゃ! 可愛ゆいじゃろ!」


 「そうかぁ、サランディーネちゃんとオンディーネちゃんっていうの、かわいぃねぇ~ よしよし。」

 「にゃっ! にゃにをする! 貴様妾を愚弄するか! 可愛いなどと言うでないわ! それに、なでなでするな!」

 「はっ! ついなでなでしてしまった。何たる可愛さ!」

 「だから可愛いなどと言うでないわ!」

 「お姉様、今はそれどころではないですよ。早く彼を連れて行かないと時間がなくなりますよ。」

 「ぬっ、オンディまで妾をなでなでするでない! ・・・・・・まぁいい、おい流よ貴様別線扉(アルタナティブゲート)は父親に聞いて知っておろうな。」

 「アルタナティブゲート? えーと、知らないけど・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・ま、まぁいい。説明は後じゃ先に扉をくぐるがよかろう。ちょっと待っておれ、準備するから少し時間を貰うぞ。」


 「えっ! ちょっと待って、全く話が見えないんだけど・・・・・・。なんの話をしてるの?」


 俺は美少女とお話するのはとっても楽しいけど、戸惑った。可愛かったから許しちゃったけど、いきなりよくわからない飛んでる女の子がまず家にいるしよくわからないこと言ってるし・・・・・・。父親のことを知ってるようだから臓器売買の業者のようにも見えるけどそれなら、浮いてるってことはないし? ・・・・・・。


 「よしっ! 決めた。俺は美少女になら何されても本望! なるようになるがいいさ!」


 俺がそうつぶやいていると、サラちゃんがこっちに戻ってきた。


 「よーし出来たぞ、それじゃお主この扉に触れて今まで誰にも言ったことのない心の闇を吐露させると、扉がそれを認識して開くから。さっさとやるがいい。」


 そう言ったサラちゃんの指をさした先には昔見たことある巨大で不気味な扉があった。


 なるようになるがいいさと言った手前恥ずかしいが、これは危険だ。俺には心の闇が多すぎる・・・・・・。


 「今まで誰にも言ったことのない心の声? ・・・・・・どうしても言わなきゃダメなの?」

 「言わなきゃダメじゃ。」


 即答だった。


 「・・・・・・何を言っても引かない?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫じゃ。」

 「ねぇ、何今の? 今の間は! ・・・・・・・・・・・・まぁいいや、腹を括るのだ! よしっ。」


 俺は一大決心をして扉の前まで行き手をつけて言った。


 「実は、学校とかでクールにカッコつけて振る舞ってたけど、ホントはただのオタクなんです! 二次元に出てくるような美少女が大好きなんです!」


 「「・・・・・・・・・・・・。」」


 「それだけじゃなくて、社会の仕組みがおかしいとかそれをどうにかしたい。とか言ってるのは結構本当だけど、それの元は中二病から出たものなんです。それだけでなく、実は今も中二病が継続してるんです。あああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー。」


 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」


 こんなにカミングアウトしても扉があかない。それどころか、美少女二人にどんどん白い目で見られるようになってる・・・・・・。


 こうなったらもうやけくそだ!


 「実は、中学生の時オタクになりかけの頃妹が欲しくなったことがあった。だから、父さんに妹が欲しいって言った。そうしたら、父さんは『そういうのは女の人に言いなさい』って言ったからクラスの女子に妹が欲しい。協力して欲しい。って言ったら、その後卒業までかわいそうな人っていう認識になって・・・・・・・・・・・・。 うわぁぁぁぁぁぁぁ! なんでまだ開かないんだよ! 意味わかんないよ! ぐすっ。」


 「・・・・・・ほら、姉様。もういいんじゃないですか?」


 と言いオンディちゃんが扉の左側にあるA4の用紙をめくった下のボタンらしき球体を押すと



 ・・・・・・・・・・・・扉が開いた。



 俺はまんまと騙されたと気付くとすぐに言い訳がましくいった。


 「ま、まぁ、最初からこんな感じだろうと思っていた。だから俺はあえて実話っぽい話を作り演技をしたのだ! それにまんまと騙されたなオンディちゃんよ。」


 「まぁ、それはすごいですね流さん。私完全に本当の話だと思っちゃいました。でも、確かにそんなことしたりする人いるわけないですもんね。まんまと騙されちゃいました。」

 オンディちゃんは本心から本当にそう思っているようだった・・・・・・。


 「ぐふっ・・・・・・。」


 「じゃあ流さん早く行きますよ。」


 「あ・・・・・・うん、行くよ・・・・・・すぐに。」


 流は何も気づいていないオンディちゃんの言葉に心の臓を抉られながらも耐えていた。そして、後ろからサラちゃんが慰めるように肩を叩いて優しく言った。


 「うむ、妾もまんまと演技に騙されたわ。お主の迫力が凄すぎて本当かと思ってしもうたが、演技だったのじゃな。確かによく考えたら、そんなことする人いるはずないもんね。」



 俺はその言葉を最後に意識が昇天した。


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