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 ジルは立ち上がるとナターシャに片手を差し出した。その手を取って立ち上がったナターシャは体についたほこりを払い、空に手をかざした。

「すべての恵みに――」

「すべての恵みに」

 それは何かの合い言葉のようだった。ナターシャの言葉を繰り返すように呟いたジルは、右手を左胸に当てて空を見上げた。

「なんかこうしてると里にいた時を思い出すね」

「ぼくはあんまり思い出したくない記憶もあるけどな」

 何か嫌な思い出でもあるのだろう、ナターシャは盛大に顔を顰めて言う。

 ジルとナターシャは同郷出身の幼なじみで、ジルはナターシャよりも二つ上の十五歳だ。小さい頃から一緒だった二人は、別々の時期にこのジルヴィア中央国立学園都市にやってきた。

 このジルヴィア中央国立学園都市は二校の小学校、四校の中学校、六校の高等学校、七校の大学がある。それぞれが東西南北に分かれており、その中央に都市が存在する。ジルとナターシャは学年は違えど同じ中学校に所属している。そしてナターシャは少しばかり問題児だった。

「ほら、次の授業が始まる」

「……ぼくパース」

 少しの間をあけ、笑ってナターシャはかけ出そうとしたが、その首をジルにつかまれあえなく失敗に終わる。

「ダーメ。きみがちゃんと出ないと俺が怒られるんだ。さっきの合同授業でさえサボったんだから、次のはちゃんと出ること!」

 口調をきつくして言うジルに、不満げにナターシャは唇を(とが)らせた。

「分かったよ。ジルの小姑」

「分かってないよね、それ」

 額を押さえるジルに鼻を鳴らし、ナターシャは坂を下りていく。

 二人の所属するジルヴィア国立中学校はこの学園都市に存在する最古の中学校だ。歴史はサイ・ボーン高校、レグデア大学に次ぐ古さを誇る。授業内容も豊富で、人気のある学校の一つだが入学試験が厳しいことでも有名だ。その三倍難しいのが編入試験だ。これにパスする人は中々いないが、現在通う人で三人確認されている。ジルはこれに見事合格し、学年総代、そして中学校代表に選ばれている。

「ジルはまじめだね。少しは手を抜くとかないのかよ」

「きみは手を抜きすぎだよね。もう少しまじめになることをおすすめするよ」

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