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人魚姫とおひるごはん

作者: 生徒会副長

『人魚姫とおひるごはん』

生徒会副長

 むかしむかし、海を見渡す丘の家に、平介という、ひとりの若い男が住んでいました。

 平介には親もいなければ恋人もいません。ただ独り、お気に入りの釣り竿を一本持って海へ行き、釣れた魚を食事や売り物にして、質素な生活をしていました。

 平介がそんな生活を寂しいと感じたのは、最初の頃だけでした。齢十六となった今ではすっかり慣れて、日々の食事や本や魚のことでも考えながら、自由気ままに暮らしていました。

 ある日のこと、平介はいつものように、海の真ん中に顔を出した岩に腰掛けながら、魚釣りをしていました。父から習った腕は大したものです。生け簀代わりに使っている岩の穴には、手のひらぐらい大きい魚が、十匹か二十匹ほど、窮屈そうに泳いでいました。もちろん、あっと言う間には、これほどの魚は釣れません。海の向こうのお日様と共に家から出た平介でしたが、いまお日様は、平介の頭上にありました。


「さて、そろそろ昼飯にしようかな。昼からもしっかり釣らなきゃいかんし」


 新たな魚を一匹釣り上げた平介は、空を見上げて、昼からまたしっかり働くために、弁当を食べることにしました。

 今日の弁当は草団子と山菜の海苔太巻きです。持ってきた風呂敷を広げ、草団子を口にしようとした……その時でした。

 たまたま、一際大きな波が岩にぶつかりました。驚いた平介はついうっかり、草団子を海に落としてしまいました。落ちた草団子は海に沈んでいき、すぐに見えなくなりました。


「むぅ……。まあ、仕方ないか……」


 落ちてしまったものはどうしようもない。他にも昼食として用意したものはある。そんな訳で、平介が海から弁当へ視線を移すと……。


「――ねえねえ!」


 つい先ほど草団子を落としたあたりから、何やら明るい声が聞こえました。

 そこにいたのは、一人の少女でした。漆のように艶やかな髪を一本に束ね、肩よりも長く伸ばしています。赤い貝に星を散りばめたような髪飾りもしていました。身の丈や桃色の薄布一枚で隠した胸元を見る限り、案外平介と年は離れていなさそうです。しかし顔立ちは、大きな目といい、丸みがあって柔らかそうな頬といい、まるで幼子のようでした。


「この緑の玉、見た目より甘いし、もちもちしてて、

おいしいね! これって陸の食べ物なの?」


 名も名乗らず平介に話しかけ、草団子の感想を伝えながら、一度海に落ちた草団子を美味しそうに食べるこの少女。平介は何者なのか検討がつきませんでした。そもそもここは、ちゃんと魚が釣れ、足が着かないほどに深いのです。平介だって、岩を飛び越えながらこの釣り場まで来ているのです。そんなところで、手を草団子に使いながら立ち泳ぎするこの少女は、何者なのでしょうか。

 立ち泳ぎしている脚を見てみようと、平介がよく見てみると――。

 そこには、脚の代わりに、光り輝く青竹のような鱗がありました。


「お前、人魚なのか?」

「ん。そうだよ?ごちそうさまでした!」


 草団子を食べ終えた少女にそう返事されても、にわかには信じられませんでした。

 平介がおとぎ話で聞いていた人魚というのは、海深くに住まい、人間には恐れを抱いて近づかないものでした。しかし平介は、自分の目を信じるより他にありません。


「俺は平介っていうんだ。お前は?」

「私はシズ!あなたの名前は?」

「……いま平介って言ったぞ?」

「あ、そっか!」


 漢字で『静』という名前なら、あまり似合っていないような気がしましたが、韻の上ではよく似合っているように思いました。


「シズは、人間が怖くないのか?」

「ヘイスケは全然怖くないよ? おいしいもちもちをくれたもん」

「……あぁ。それ、草団子って名前なんだ」

「草だんご……? 草だんごかぁ……。うん。あれおいしかったね!」


 彼女は、満面の、まるで太陽のような笑みで答えます。平介は、もう少しこの笑顔を見たくなりました。

 弁当にはまだ、山菜の海苔太巻きがあります。平介は少し迷い、もう一度彼女を見つめました。

 それに対し、彼女は不思議そうに首を傾げます。

 そのしぐさを見ると、もう心は決まりました。


「これも、食うか?」

「わぁ! ありがとう! いただきまーす!」


 つぼみが花開くように、シズの顔が明るくなります。そして太巻きを美味しそうにくわえ込みました。


「おいしい! 陸では海苔をこうやって食べるんだね! 中のシャキシャキもおいしい!」


 頬に手を当てながら喜ぶ彼女を見ると、平介はやっぱり食べさせて良かった、と思えたのでした。

 かみしめて、くわえる口の動き、目の閉じ方、頬の膨らみから、彼女の幸せが伝わってくるようだ……などと思っていると、不意に目が合いました。


「ヘイスケ?どうしたの?私の顔に、

わかめとか付いてる?」


 シズにそう問われ、平介は正気に戻りました。

 正気に戻ってみると、平介は自分が恥ずかしくなってきました。半裸の娘を夢中になって見つめていたのですから。


「わ、悪い!おっ、俺……そろそろ陸に戻らないと!」


 これ以上は自分がおかしくなりそうだ……。

 そう考えた平介は、適当なことを言って去ろうとしました。

 シズは引き止めもせず、訳も問いません。ただ――


「そうなんだ! じゃあ、また明日、この時間に会おうね!」


 と、既に決まっていることのように言うのでした。平介は、さよならとは言いません。


「あ、あぁ。また……な……」


 そうして、シズは波間の向こうへ、平介は海の見える丘へ帰りました。

 昼食を食べ損ねた平介でしたが、何か別のもので満たされたような気がしました。


****


 次の日、平介は二人分の弁当を持って海に出ました。約束通りにシズは現れ、兄を見つけた妹のような笑顔を見せました。平介が弁当を持ってきたと知ると、宝石でも見つけたように喜びました――。

 それからというもの、平介とシズは毎日会うようになりました。

 シズは、平介が持ってきた弁当に入っているもの全てを、頬を膨らませ、とても美味しそうに食べました。

 昼食を食べるだけでお別れということもなく、二人は色々な話をしました。


 釣りは父親に教わったものだとか。

 母親もおらず、自分で生計を立てているだとか。

 巷では某の書いた小説が流行っているだとか。

 もうすぐ大名行列が通る時期だとか……。


 貝の髪飾りは母親の形見だとか。

 父親もいないが、祖父母と暮らしているだとか。

 龍神さまがお腹を壊しただとか。

 深海の王子が十七回目の求婚に失敗しただとか……。


 平介は、シズの話には龍神や王族が出てくる割に、内容自体は随分のんきだと思いました。

 しかし、楽しそうに話をするシズのことや、神様や王族も自分達と大して変わらないといったことを思うと、シズの話はどんな本や劇より面白いものだと感じられました。

 シズにもそう思うところはあったようで、話がしたい気持ちが先走って、腹の虫が鳴くまで、弁当のことを忘れてお喋りしてしまう日もありました。

 そんな日々が、一月ほど続きました……。


****


 ある日のこと、平介はいつものように、海の真ん中に顔を出した岩に腰掛けながら、魚釣りをしていました。シズと一緒にたくさん食べるために、しっかり働かなければと思うと、腕が鳴ります。生け簀代わりに使っている岩の穴には、手のひらより大きい魚が、二十匹か三十匹ほど、にぎやかに泳いでいました。もちろん、あっと言う間には、これほどの魚は釣れません。海の向こうのお日様と共に家から出た平介でしたが、いまお日様は、平介の頭上にありました。


「さて、今日は何の話をしようかな」


 新たな魚を一匹釣り上げた平介は、海を見やって、昨日までのことを振り返り、考えていました。

 元々、平介は武士たちの忠義や戦いを描いた本が好きでした。しかし、その手の話はシズにとって難しいようでした。分からないところをシズに教えるのも楽しいのですが、今日はシズの好きそうな、単純で愉快な御伽噺でもしてやろうと考えていました。

 そんなことを考えている内に、波が揺れること、四度、五度……。


「……あれ?」


 平介は独り首を傾げました。

 一刻……二刻……。

 待てども待てども、シズは来ません。


「シズー? 先に食べるぞー?」


 と、海に向かって箸を片手に呼びかけましたが、波の打つ音が返ってくるだけ……。ここ一月、こんなことはありませんでした。むしろ、弁当の時間より早くシズが現れて、 話し込んでしまう日があったぐらいなのです。

 平介は少し迷いましたが……昼からの仕事のためには、食べない訳にもいきません。


「……いただきます」


 二人分の弁当を前に、感謝の言葉は一人分でした。今日の弁当は、魚のふりかけご飯と、豆腐とほうれん草の和え物です。


「……美味しい」


 平介は独りでそう呟きます。美味しいという感覚はわかります。しかし、それをはっきりとした言葉にしないと、海のさざ波のように、消えてしまいます。

 それっきり、平介は「シズならどんなことを言いながら食べただろうか」などと考えながら、黙々と一人分を食べきりました。

 シズの分の弁当には手を付けませんでした。シズが遅れて来るかもしれない、と考えましたし、自分が働くために食べる分には十分だったからです。

 しかし、日が南方からずれて、日差しが弱くなり、空が紅みを帯びても……。

 シズが来ることはありませんでした――。


****


 あれから三日、平介はシズに会っていません。

 平介はいつものように、海の真ん中に顔を出した岩に腰掛けながら、魚釣りをしていました。なぜこんなことを毎日するのか、自分でも理由が分からなくなってきています。生け簀代わりに使っている岩の穴には、手のひらより小さい魚が、五匹か十匹かほど、弱々しく泳いでいました。なぜか、たったこれだけの魚を釣るのに、随分と時間がかかりました。海の向こうのお日様と共に家から出た平介でしたが、いまお日様は、平介の頭上にありました。


「……昼飯、どうしようかな」


 二人分の弁当は持ってきているのです。今日の弁当は、おかかのおにぎりと山菜の味噌炒めです。


「……シズ。いないのか……?」


 そう呟きながら海を見ても、濁った水より他に、何も見えませんでした。艶やかな黒髪も、キラキラ光る赤い貝の髪飾りも、青竹色の鱗も……。


「……いただきます」


 そう言って手を合わせ、平介はおにぎりをつかみました。つかんだおにぎりを、じっと見つめていましたが……口に入れず、海に放り投げてしまいました。おにぎりは、泡のように、桜のように、塊が砕けたあと、米の一粒一粒に分かれ、消えていきました。


「……もういい」


 平介は、弁当箱を閉ざしました。

 働くために食べるというのなら、心と感覚を無にすれば、空腹も寂しさも感じはしないのです。

 そのために、深く考えもせず、海に釣り糸を下ろしました。

 すると、釣り針に何かが引っかかった感じがしました。海のゴミか何かでしょうか。

 平介が陸に揚げてみると、その小さいものを、無にしたはずの心でも無視することが出来ませんでした。


「シ、ズ……?」


 それは、赤い貝に星を散りばめたような髪飾りでした。いつも、シズが頭に付けていたはずのものです。


 何故そんなものが自分の釣り針にかかったのか……。理由を考えていると、嫌な話を思い出しました。


――魚を飼う時、餌をやりすぎると、死ぬ。


「まさ、か……」


 シズは平介が持ってきた弁当を、いつも楽しそうに、全て食べていました。もしそれが――。

 人魚としては食べ過ぎな量であったとしたら……?

 人魚も飼い魚も、餌の事情は同じだとしたら……?


「俺が……死なせたのか……?」


 そう考えたとき、平介は初めて、自分の心に、シズへの想いに気がつきました。

 同時に、この想いは遂げようがないということも悟りました。


「あんなに、好きだったのに! あんなに愛していたのに!! 俺のせいで……! 俺の……せいで!!」


 波の寄せる静かな音を掻き消すように、一人の男の嘆きが、海に響いていました――。


****


 沈んでいく夕陽で、紅々と染まった浜辺を、平介は足を引きずるように歩いていました。

 働くことも食べることも、ひどく無意味なものに思えました。

 何も考えたくないのです。何も感じたくないのです。

 それでも、眼は勝手に辺りの景色を平介に伝えていました。


 寄せては返す、同じことばかり繰り返す波。

 もうすぐ闇に染まるであろう、紅い砂浜。

 漆のように艶やかな黒髪。


――――――。

――――。

――黒髪?


 平介は弾かれたように走り出しました。一人の娘が、四肢を露わにして砂浜に打ち上げられていたのです。

 脚があることと髪飾りのこと以外は、それは紛れもなく平介がいま一番会いたい人でした。


「シズ……!?」


 駆け寄った平介が頭を膝に乗せて揺さぶってやると、シズは寝起きのように、ゆっくり目を開けました。


「――ヘイスケ? ……おはよう?」

「おはよう、じゃない! 3日も音沙汰なしで!人が、どれだけ……心配したと……!」


 シズのやわらかい頬に、熱い水滴が落ちました。一滴二滴……次々に降ってきます。


「ヘイスケ……? なんで泣いてるの……?」


 不安と興味が合わさったような顔で訊ねるシズを相手に、最初は「泣いてねえ! 泣いてねえよ!」と意地を張っていた平介でしたが、とうとう誤魔化せなくなって、袖からあるものを出しました。


「こんなもん釣っちまったら、泣きたくなるほど心配だってするだろうよ!」


 それは、赤い貝に星を散りばめたような髪飾りでした。


「あ!お気に入りの髪飾り! 拾ってくれてありがとう!」


 慣れた手つきで、シズは髪飾りを自分の髪に括り付けていきます。今後こそ、脚以外は平介のよく知るシズになりました。


「儀式の後、気絶しちゃったから、その時に流されたんだねー」

「……儀式?」


 そこから、シズは平介に会わなかった三日間のことを話し始めました――。


****


「シズ……。ふつう、こんなになるまで食べるかね?」

「あーうー……」


 3日前のことです。海の底にある洞穴で、身体を仰向けにしたシズは、おばあちゃんに看病してもらっていました。

 看病といっても、せいぜいお腹がいたくなった程度の話です。平介の心配は、食べ過ぎという点では当たっていましたが、何も命にかかわる話ではありませんでした。


「だって……ヘイスケのおひるごはん、おいしいんだもん」

「……それ、本気で言ってるんだったら、もう陸には行かせないよ?」

「う……ごめんなさい」


 シズは、おばあちゃんがちょっと怒っているのを察して、しゅんとしてしまいました。

 もっとも、おばあちゃんはシズをいじめたいから怒ったわけではありません。シズから話を聞いていた、ヘイスケという若者が嫌いだから怒ったわけでもありません。シズのことを大切に想っているからこそでした。


「まったく……。いつまでもガキんちょなじいさんや、他の若いもんにならともかく、こんな枯れたばあさんに隠す意味があるのかね?」

「……隠してないもん」


 おばあさんのいない、壁のほうを向いて言っても、説得力はまったくありません。

 呆れたおばあさんが、優しく背中を押すかのように呟きました。


「……陸上がりの儀式」

「えっ……?」


 名前は知っていましたが、シズひとりの知恵ではどうにもならなかった儀式。シズは驚いて、おばあさんのほうに顔を向きました。


「人魚の身体を捨ててでもやりたいことがあるんなら、手伝ってやるよ。お前はとうとう白状しなかったが、芝居の下手くそさに免じて、聞かないでおいてやるよ」

「でも……」


 後ろめたいところがあるのか、シズの大きな目が泳ぎます。しかしおばあさんは、シズの思うところを察していました。


「別にお前が人魚のままだろうと、人間に生まれ変わろうと、わたしらの孫には違いないよ。色恋に夢中になるあたりも含めてさ。わたしとじいさんのときは、親たちが猛反対してね……。ちぎっては投げ、ちぎっては投げの大喧嘩の末に結ばれたもんさ。それに比べりゃ、海と陸の違いなんて小さいもんだ」

「でも……おばあちゃんと、おじいちゃん……」


 なおも一歩踏み出せないシズでしたが、おばあさんは何でもお見通しでした。


「わたしらは今でもあつあつだよ。お前がいなくなったらせいせいするぐらいさ。まあひ孫が生まれたら、海に向かって声ぐらい聞かせとくれ。それで十分さ」


 そこまで言われて、やっとシズも悟りました。おばあさんにはもう、ゆずる気などないのです。それに、このまま海で暮らしていても、ひ孫の声を聞かせてあげることは出来ない気がしました。


「うん……。長生きしてね、おばあちゃん」

「ひ孫の声を聞くまでは、殺されたって死ぬ気はないさ」


 その後、おじいさん、おばあさんとの別れもそこそこに、『陸上がりの儀式』を行い、シズは人間の姿になって、砂浜まで流されてきた、というわけです――。


****


「そんなことがあったのか……」


 平介は、おばあさんの心遣いと、シズが心に秘めていたものをしみじみと感じていました。ついでに言えば、シズに宛がった膝枕にけりがついたかと思うと、ホッとしたような、名残惜しいような気持ちになりました。


「うん。だからヘイスケ。いっしょに……ごはん……。じゃなくて……。あの……えっとね……?」


 舌足らずなシズの言葉を、最初は真剣な表情で聞いていた平介でしたが、やがて微笑を隠せなくなりました。伏し目がちになったり、上目遣いになったり。モジモジしたり、夕日に負けないぐらい赤くなったり。普段、表裏なく話したり笑ったりするシズからは、あまり想像できないような表情が、かわいくて楽しくて仕方なかったのです。しかし、シズの言葉を待っているうちに、平介は我慢できなくなってしまいました。3日もお預けをくらい、2度も泣いた彼にとって、今のかわいいシズは、空腹の自分に差し出されたご馳走同然だったのです。

 平介はシズを大事に横抱きして言いました。


「今日の夕ごはんは、お赤飯だな」

「えっ……。でも……わたしっ、まだちゃんと、言えてない……」

「お赤飯食べてからで、いいじゃないか。お腹減ったろ? そうと決まれば、さっさと行くぞ。俺の家まで!」


 シズが頷く代わりに、彼女のお腹の虫が声を上げました。


「……うん」


 茹であがったようにさらに赤くなったシズを抱え、平介は、力強く走り出しました――。


****


 こうして、平介とシズは夫婦になりました。

 シズは相変わらずよく食べましたが、それ以上によく働きました。人魚から人間になっても泳ぎの上手さは変わらず、素潜りで魚や貝などを集めるのが、シズの仕事でした。

 平介は相変わらず、海の真ん中に顔を出した岩に腰掛けながら、魚釣りをしていました。夫婦で楽しくたくさん食べるために、しっかり働かなければと思うと、いくらでもがんばれます。生け簀代わりに使っている岩の穴は溢れ返りそうで、最近は籠にも魚を入れるようになりました。


「ヘイスケー! そろそろおひるごはん食べよ!」

「ああ!」


 海から顔を出した可愛い家内に、平介は明るく返事をします。

 こうして平介とシズは、たくさん食べて、たくさん働いて、たくさん子宝に恵まれて……幸せに暮らしましたとさ。

 めでたし、めでたし……。



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[気になる点] 読みにくい漢字がありました。
[一言] 優しいお話で、とてもおだやかな気持ちになれました。
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