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納豆でブランチを。

今回もちょっとオトナ向けです。

「えっと、昨夜はベッドをお借りしてすみませんでした」


 ペコリと頭を下げて謝ると、係長はそれを見て面白そうに笑みを浮かべた。


「いえいえ」

「あ……の、ベッドを使わせて貰っちゃって、係長は大丈夫でした?」

「うん?」

「もう秋やし、いくらなんでも夜は寒い……」


 クスッと係長が笑う。

 なんやねん、感じ悪いなぁ。


「安西さんに暖めて貰ったから大丈夫」


 え?  


「え、あ、え??」


 言葉の意味がようやく理解 出来て、係長に二度聞き返した。

 コーヒーをテーブルに置いた係長が真っ直ぐにウチを見る。


「酔いつぶれて先に寝てしまうから昨夜は寂しかったよ」


 じりじりと距離を詰めてくる係長から距離を取るためにお尻で後ずさりをする。

 

「えっと、あ~、すみません……?」


 とうとう壁際まで追い詰められたところに、顔の横で壁に手をついて囲まれてしまった。

 これが痴漢やったら蹴り上げて逃げるとこやけど……。どないしよ。


「安西さん、可愛いね」


 ひょえ! 顔の距離が10センチも離れてない。

 ち、近いっ!

 か、可愛いて。もうすぐ25の大台乗りますけどっ!

 


「か、係長、いつもそんな風に口説いてるんですか?」


 上目遣いに睨み付けると、クスッと小さく笑われた。


「いつもじゃないよ、祥子にだけ」


 ず、ずるい!

 いきなり名前呼びやなんて。


「う……」


 ろくに抵抗しないままに、唇で唇を塞がれた。



★★★



 はあ……。


 


 めっちゃ好きやって言わされてしもたけど……とんだ羊の皮を被ったオオカミやで。


 スマホで時間を確めたらもう10時やし。

 のそりと起き上がって、フローリングに散らばった服を集めて着ると、冷めたコーヒーを啜った。

 冷めたコーヒーって苦いな。


 グゥとお腹が鳴った。


「そう言えば朝ごはんまだだったね」

「係長起きてたんですか?」

「納豆とチンするご飯しかないけどいい?」

「ええ~! 納豆……」


 思わず顔をしかめた。


「嫌い?」

「いや、食べれますけど……臭いが苦手っていうか。その……」

「関西の食べ物はどれも美味しいけど、祥子にも俺の育った関東の味を知って欲しいな」


 う……、そんな事言われたら納豆嫌いですって、言えへんやん。



 テーブルにパックの納豆とチンするご飯と瓶入り佃煮海苔とインスタントの味噌汁が並べられた。

 係長、マグカップで味噌汁って……。


 納豆は佃煮海苔を大量に混ぜ混ぜして、何とかご馳走さまをした。これでもう納豆は1ヶ月は食べんでも大丈夫や。


「係長、こんなお茶碗もお皿もフライパンもない部屋、不便やないですか? ご飯もちゃんとしたの食べやな」


 調理器具が電子レンジとやかんだけって。せっかくの卓上IHコンロが泣きますやん。

 それにお昼もいっつもコンビニやし。


「男の一人暮らしってこんなもんだろ? 祥子が見繕ってくれるなら、食器買ってもいいよ」

「え? ほんまですか」

「うん、祥子がまた部屋に来てくれるなら、ご飯もきちんととしたの食べるよ」


 クスクスと愉快そうに係長が笑った。

 

「あー、はい……分かりました」


 何だか昨日から係長のペースに乗せられて調子出えへんわ。

 ウチ、うまいこと乗せられたん?


 なあ、誰か教えて!

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