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味付け海苔やないとおむすびやない!

 深夜帯のパトロール。

 駅前から風俗店が立ち並ぶ辺り、それからちょっとした路地やラブホの周りにも目を光らせる。

 ゲームセンターやコンビニ、ファーストフード店のガラス張りの壁を透かして店内にも視線を巡らせる。

 

 夏休みに入ると青少年の非行による事案がぐんとうなぎ昇りになる。

 もうちっとなぁ、自分の身体を大事にしてよ?


 駅周辺に中学生くらいの女の子がひとり立っていた。

 現在夜の22時。大きな荷物を抱え、不安そうにキョロキョロしている。


 家出か、援交か……あるいはその両方かも知れない。どちらにしても職務質問を掛けた方がいいだろう。


 行ってええですか?


 目で合図すると、係長も頷いた。


「こんばんは~。ごめんやけど、話聞かせて貰える? ……」


 

★ ★ ★


 家出少女がワンワン泣き出したんで、とりあえず落ち着かせて話を聞く。

 

 はあ……。

 親と喧嘩したくらいで家出せんといてくれる?

 なんぼ『出ていけ!』って言われたからって、ほんまに出て行くか?


 そういう女の子を喰いもんにしてる輩もいることをしっかり言い聞かせて、親に迎えに来るよう連絡を取る。

 血相変えて滋賀県から親が飛んでくることになった。


 ……お嬢ちゃん、滋賀の子やったん。

 えらい遠いとこまで家出したな。


★ ★ ★


「お疲れ様」

「お疲れ様です~」


 夏休みの生活安全課恒例、青少年非行防止月間は始まったばかり。

 朝から深夜まで東條班総出で働き詰め……ああ、お腹空いた。


「係長、おむすび食べます?」


 さっき署の近くのコンビニで買ってきたんですけど。


「貰おうかな」


 はいはい。

 たらこと梅と昆布とかつお……明太子とツナマヨもありますよ。

 ツナマヨとチキン照りマヨは私のですからね~!! と念力を送ってみる。


「あ、佐々木さんと倉敷さんもお帰りなさい。おむすび食べます?」

「ただいま~、って家かい!」

「貰うわ、さんきゅ」

「はいはい、今お茶淹れますね~」


 暑いけど、うんと熱いほうじ茶が飲みたい気分。

 

 昆布と梅をチョイスした係長がペリペリとおむすびの包装を破き、一口パクリと言ったところで硬直した。


 ……また何かあった?


「どうしたんですか?」


 湯呑をみんなに配りながら係長の様子を窺うと、一口齧ったおむすびを繁々と見つめ始めた。


「美味い……美味いけど、なんだこれは? 味付け海苔が巻いてあるぞ」

「おかしいですか? 味付け海苔やないとおむすびやないでしょ?」


 自分もコンビニの袋からおむすびを出す。

 ……ツナマヨとチキン照りマヨ奪われた!!

 たらこと明太子しか残ってへんやん。どっちもタラの子やし!! 魚卵やし!


 ああ……っと佐々木巡査部長の口に消えて行くツナマヨを見送り、たらこの包装を剥がす。


 巻きたての海苔がバリっとしてて、甘辛い味付けが美味しい。白ご飯と味付け海苔があったらおかずいらんくらいにベストカップルやわ。

 しょっぱいたらこがほろりと口の中で解けて、渾然一体となって……美味い。


 係長もようやく食べ始める……そうですか、コンビニのおむすびは3口ですか。

 男っぱい豪快な食べっぷりの割りに、表情は子どもみたいに嬉しそう。

 なんでドキッとすんねん、この心臓。


 東京は確か……焼き海苔でおむすび巻くんやっけ?

 そんなに美味しそうに食べるんやったら、係長関西人化計画を一時休止して焼き海苔と米だけのおむすび作ってきてあげてもええよ?



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