自己紹介そして神様の気遣い
自己紹介の話です。そして、遂にセリーヌさんも会話に参戦!
「じゃあ、私から。幸多岐恣意です。好きなものは「お兄ちゃんよね?」そうそう私がすきなものはお兄ちゃ―――って違うわよ!何言わせようとしてんの!?お母さん!!」
家の天然母が恣意の自己紹介に被せて何か言ってる。
ていうか俺かよ。
さすがにそれはねえよ。
しかし断言された……。
兄としては少し寂しいな。
「あらあら、諌ちゃんが落ち込んでいるわよ?」
「え?ちっ違っ、そういう意味じゃなくて!いや、べっ別に嫌いって訳じゃ―――あああああもう!とにかくそういう訳じゃないから!」
正直俺としては、慌てている理由が分からない。
…ああ、嫌いって言ったように聞こえるのか。
でも、そうやって必死に弁解しようとしてくれる妹。
まったく、本当に良く出来た妹だよ。兄冥利に尽きるね!
「ごほん!では仕切りなおして、私の好きな食べ物!は甘い物全般です。特に和菓子の練りきりが大好きです!」
そんなに強調しなくても大丈夫だって。
しかも食べ物に言い直したし。
そんなに警戒すんなよ。
「じゃあ次は兄さんね!」
「おう。えー俺は幸多岐諌です。このお転婆娘の兄をしています。好きな―――「お転婆って何!?ねえお転婆って―――」「もう、ダメでしょ~?今は諌ちゃんの自己紹介中よ?めっ!」「私が悪いの!?だって、兄さんが―――ていうか年頃の娘にめっ!て!めっ!て―――」二人ともうるさい!」
全く……俺が自己紹介中だってのに外野がうるさいな。
「ちょっと!?なんでそんな自分は全く関係ありませんよーって顔してんの?!」
いやだって、ねえ?
「あら~。自己紹介中だったのにごめんなさいね~」
「ほら、母さんはちゃんと謝ったぞ?恣意は?悪いことしたらなんて言うんだっけ?」
「うう~~~、邪魔してごめんなさい。……なんか釈然としないんだけど!」
まったく……。まあ言ってる事は分からんでもない。
邪魔した理由も分かってはいる。
ただ、昔のお前は確かにお転婆だったぞ?最近直って来ただけだろ?
言ったら怒るから言わないけどな。
「冗談だ。このお……恣意の兄です。好きな食べ物はカレーかな。じゃあ次は母さんで」
「今またお転婆って言おうとしたよね!?」
今度は自己紹介が終わるまで我慢したみたいだ。
ちゃんと学習しているな。偉いぞ。
「なんで頭を撫でるの!?」
あれ?駄目だったか?
「嫌だったか?」
「別に…嫌、じゃないけど……」
「そうか。なら良かった。」
そのまま俺は頭を撫でる。
撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で。
「………」
「………」
「……あの~、そろそろ良いかしら~?」
「っ!?」
あ、恣意が逃げてしまった。
恣意の淡い茶髪の髪の毛はさらさらしていて、触り心地は最高だ。
ずっと撫でていても飽きない。
昔は恣意の髪の毛の手入れをよくしていたな。
本人曰く何でも、母さんより上手いらしい。
そうやって言ってくれたのは素直に嬉しいよ?
だけど、それを母さんが知った時は、その後が大変だった。
「うわーん。恣意ちゃんを諌ちゃんに取られた~~~~!!!」とか叫んで、拗ねて部屋に引き籠り―――鍵を閉められて親父が部屋に入れなかったり―――まあその話は置いといて。
とにかく、最近はしばらく触ってなかったからな。
恣意が部活だったり俺がバイトだったりといろいろ忙しかったのもあるし。
久しぶりに触ったからつい夢中で撫でてしまった。逃げられたけど。
まったく、照れるなよ思春期め。
ただまあ、今十分撫でられたから問題ないが。
「こほん。次は私ですね~。幸多岐静と申します。宜しくお願いします。死んでますけど~。好きな食べ物~というより食べちゃいたいくらい諌ちゃんと恣意ちゃんと夫が大好きで~す。とにかく私は家族が何よりも大事なものです!」
こっ恥ずかしいことをよくも平然と言う。
というか食べちゃいたいくらいとか……この人が言うと冗談に聞こえない。
本当にやりそうだ。
だけど……今はそんな事よりも言葉にしたい事がある。
「俺も(私も)家族は大事だ(よ)愛している(います)」
俺達家族3人の声が自然と重なる。
母さん何か、「うぅ~、みんな~、ありがどう~。私も愛じでいばず~」とか言って泣き始めてしまった。
それを親父が、無言で肩を抱き寄せ、抱きしめている。
ここに完全な4人の空間が出来上がっていた。
そのままの状態がしばらく続いたがふと我に返る。
そういえば神様は?そう思い部屋を見渡すと少し離れた所でセリーヌさんと一緒に温かい目で見守っていた。
心なしかセリーヌさんも目が潤んでいる。
ちょっと恥ずかしいな。
「えーと。すみません続けましょうか」
そういって話を戻す。
「そうだったな。じゃあ次は俺かな?幸多岐嵩だ。家族は勿論愛している。何より、お前たちの健やかな成長を何よりも願っている」
なんか、親父が今もの凄くカッコイイと感じた。
母さんも「あなた~♥」とか言ってポーっとしてるし。
家の母はなんとなく、こういう親父の男気に惚れたのかなあと思った。
さあて次は、いよいよセリーヌさんか?
「では次はワシかな?」
と思いきやじ……老神の方からだった。
「ワシはこの地球の管理人を任されておる神じゃ。
ワシには名前など無い。じゃから、呼び方はそなた達に任せる。
宜しく頼む。では次は、ほれセリーヌ、お主の番じゃ」
おお~遂に来たか。少し興奮して来たぞ。
気になっていたからな。
無理もない。
「はっはい!えと、セリーヌ・フォン・バルシュタットです。えと、ここでお手伝いをさせて頂いてます。好きな食べ物は和菓子です!宜しくお願いします…うぅ……」
そう言ってセリーヌさんは涙目になる。
注目される事に慣れていないのか?
でも、涙目になったセリーヌさんも可愛い。
保護欲をそそるな。
抱きしめたくなる。
現に家の母さんも手をワキワキとさせながら今にも襲い掛かりそうだ。
……もしかしてこの人が原因なんじゃないか?
「とりあえず、これで自己紹介も済んだな。では、一端ワシらは席を外そう。それと……」
そう言って神様は、もうお馴染みに成りつつあるパチンと指を鳴らす動作をする。
一瞬の光の後、そこには見慣れた空間、幸多岐家のリビングがあった。
「サービスじゃ。お主達の最後の団欒をこの場所でしなさい。見慣れた場所の方が落ち着くじゃろう?」
そう言って神様はパチンとウインクを残してセリーヌさんと共に消えた。
どうやらまた気を遣われたらしい。
まったく…。
そんな神様に言いたい。
ありがとう、神様……。お気遣い感謝します。
セリーヌさん。良いですね。そして神様ちょっとカッコイイ。
自己紹介もやっぱりグダグダ。でもそれが幸多岐家クオリティ!
次回は家族最後の団欒です。
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