邂逅2そして神様の属性はドジっ枯
3話投下
「まず、お主をここに呼んだ理由はな」
そう言って神様は立ち上がると指をパチンと鳴らした。
その途端にちゃぶ台が消えた。
すげーなー。やっぱり便利そうだ。
俺にもできないかな。…さすがに無理か。
「はい」
「っと、そういえば、お主の名前は何と言う?」
知らなかったの!?
え?なに?じゃあ、見ず知らずの他人な俺を呼び寄せたの?
「えーと、見ず知らずの俺を呼び寄せたんですか?」
なんて迷惑な。
神様と名乗るんだから、それっぽい力で名前を把握して、それ相応の理由があるんじゃないのかよ。
なんか特別な力があるとか、俺にしか出来ないー、みたいなさあ。
「なぜ、そんな残念そうな顔をしておる?」
いや、だって、ねえ?
期待してもいいじゃん?
だから思い切ってそこら辺を聞いてみた。
「質問しますが、名前とか神様の力みたいなので分からないのですか?」
「いや、名前やそういう情報を記した名簿を…その……」
「その?」
「無くしてしまっての」
まさかのドジっ枯属性持ちだった。
字は間違えていない筈だ。だって見た目老人だし……。
「……」
「……すまん」
しまった。黙ってたら神様に謝られてしまった。
実はたいして気にしていないし……。
「あ、いえ。お気になさらず。気にしていませんから」
何か最初の印象より些か話しやすいみたいだな。
ちゃんと自分の非は認めて謝れるみたいだし。
神様ってもっと自分勝手で横暴な奴だと思ってた。
アニメや漫画の見過ぎだな。
自分の偏見だったみたいだ。反省しよう。
「そう言ってくれると助かる」
「では、改めまして、幸多岐諌と言います」
「うむ。では諌よ、よろしく頼む。ワシの名は……と言いたい所じゃが、ワシに名前はないんじゃ。じゃから、好きに呼んでくれて構わん」
名前無いのか…じゃあ、神様でいいか。
「はい。よろしくお願いします、神様」
「うむ。では、説明をして良いかな?」
「はい」
「では、まずはお主を呼んだ理由じゃがな……」
そう言って神様は真面目に話だす。
ごくり、と唾を飲み込む。
緊張するな。
「働かないか!異世界で!」
「……は?」
「じゃから、異世界じゃよ異世界」
「……異世界?」
は?いや、え?
異世界ってあの異世界?マンガやアニメで出て来る様なフィクションの?
「何じゃ。反応悪いのう」
当たり前だ。いきなり何を言い出すんだよ。
そんなのある訳……いや、あんなもの見せられたら、否定出来なくなるな。
あれ?俺の常識が遠くに……。
いやまあ、すでに今が非常識だけど……。
「異世界って、空想上の産物の…ですか?」
「そうじゃ。いや、正確には混乱が起きないようにそうしてあるという所じゃな」
どういう意味だ?
「それって?」
「つまりじゃな、うーむ。では、質問じゃが異世界という概念はどこ(・・)から来たと思う?」
だから、それは空想上の産物で誰かが考えたんじゃ……あ!まさか?
「異世界に行った人が?」
「理解できたみたいじゃな。その考えで間違っとらんよ。昔、異世界に行って帰って来たものが、異世界を題材にした物を創った。それが今まで受け継がれて今に至る訳じゃな。フィクションと云う事にしての」
そうだったのか。
知らなかった。
そんな事考えた事も無かったし、疑問にも思わなかった。
「じゃあ本当に異世界が?」
「あるぞ。それはもうたくさんな」
異世界……異世界かあ……やっぱり、わくわくするな。
俺だってもし自分が―――なんて考えた事くらいはある。
まさかそんな世界が本当にあるなんて思ってはいなかったが。
あったらいいなあ程度だ。
「そういえば、さっき働かないか云々って言ってましたよね?それはどういう?」
「それはな、ワシの管轄のある異世界が滅びそうなんじゃよ」
「はい?」
「えーと、つまりじゃな、その、恥ずかしながらある部下の神が不祥事を起こしての?その……後始末を頼みたいんじゃよ」
は?なんでそんな事を他人に任せる?
その不祥事をやらかした神様にやらせろよ。
「なぜ、その神様に後始末をやらせないんですか?しかもなぜ神様が頼むんですか?そいつを連れて来てそいつ自身が頼みこむのが筋というものなのでは?」
「それはもっともなんじゃがな。まず、部下の責任は上司の責任でもあるんじゃよ。事実ワシにも管理者代表として管理不届きの責任がある。それにあいつは今お仕置き中での。代わりに謝罪しよう。重ね重ねすまない」
そういう事か。
「神様も大変ですね」
「分かってくれるか!ワシもさっさとこんな仕事辞めて隠居したいわい」
気のせいかさっきより大分老けてみえる。
同情するよ。
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