散歩してみませんか。
春side
朝食を食べ終わり、のんびり過ごすのもなんだから、
久しぶりに冬と散歩行こうかなと思い、今は暖かい日の下でゆっくり歩いています。
でも、理由はそれだけではなくて...。
「ねえ冬。」
「ん?」
「もしも、だよ。もしも、お母さんからの遺書があったらどうする?」
冬は、着々と目的の無い所へ、と進んでいた足を止めました。
そう。このことを話すために、誘ったのもありますね。
しばしの沈黙の中。
「......僕はどうでもいい。春は気になるだろうけど、もういいんだ。」
...だよね。亡くなった人の事なんて...はは...
「うん。ごめんね、何言ってんだろ私...」
薄く笑みを浮かべ、また歩き出した。
「でも、その遺書が本当にあるのならば、読んだ方がいいと思うよ。」
私が歩き出してもなお、ずっと立ち止まっていた冬は、こんな言葉を言ってくれました。
「...っ」
「あるんだろ?無理しないでいいよ。」
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久しぶりに、祖母から電話がかかってきた。
せっかくなので部屋を借りてくれたお礼を言わなくては。
「あのねおばあちゃんっ「貴方たちのお母さんの遺書があったのよ」」
「えっ...?」
さすがにあの言葉には頭が真っ白になりました。
「ちょっとね、葬儀の方が渡してくださって...。
読むのは貴方たちじゃないとって思って、まだ封も
こんな状況で内容を伝えるのもあれだし、今度、冬君と一緒に、こっちに来てみないかしら?もちろん、冬君が了承したらでいいわよ。」
「そ、うなんだ...。」
何で今さらでてきたの?どんな事書かれてるの...?
私への暴力に謝罪?綺麗事並べてるだけ?
「また、相談したら連絡するね。あと、この部屋借りてくれてありがと」
「無理しないでね?部屋なんて、貴方たちの事考えたら当然の事よ。」
...私たちのことを考えれば当然の事......
そんなこと言われたの初めてだな...。
今まで、色んな友達に出会ってきた。
でも、誰にも私のことを考えればなんて言ってくれなかった。
大きくて、優しくて、身近な見方が出来た気がしましたね。
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「おばあちゃん家...行ってみない?」
俯いてしまった冬...。
やっぱり、ダメだよね。今さら...。
「行こう。現実見なきゃ、変わらないよ?」
「...いいの?」「うん。ずっとため込んでたら、それこそ疲れるよ。」
そういうと、ニッコリと微笑んでくれました。
...なんでそんなに優しいの。なんでそんなに笑ってくれるの。
「春.........?」
なんでだろう。なんでだろう...。
ボロボロと、拭いきれないほどの涙が出てくる。
「っ...ごめんね...いっつも冬に迷惑かけて...」
in家
私ったら、外で泣いてしまいましたよ...
冬に迷惑かけただろうな...。
「ねえ春。明日...夕方ごろ、いこうか...?」
優しく声をかけてくれる...。
私はその”質問”に、ただひたすら頷くことしかできなかった。