少女との出会い
目の前に少女がいた。
全裸で。
「「え……」」
突然の事で少女は驚いているのだろう。当然少年の方も驚いているため、目を逸らすという紳士的な対応を出来ずに、思わずまじまじと、少女を見つめる。
歳はおそらく、十五、六。
身長は、少年より少し低い。おそらくは、百六十前後。すらりとした体つきで、残念ながら、女性特有の美しい凸は見られない。
しかしながら、綺麗に伸びた手足や、くびれたウエストは、それを補うだけの美しさだった。
髪は綺麗な黒髪で、白い肌によく映えている。
そこまで少女を観察して、少年は初めて周りの景色を見た。
少女の後ろには大きな湖あり、周りは木々に囲まれ、目の前にある湖と相俟って、大自然を思わせる。
耳を傾ければ鳥の鳴き声や魚の跳ねる音。
この時点で、少年の心の中では、諦めに近い心境に至っていた。
なぜならば、目の前の少女は顔を真っ赤にし、握りこぶしを作っていたから。
「この変態があああっっ!!」
少年は綺麗な放物線を描き吹っ飛んでいった。
目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
「何だろう。素敵な夢を見ていた気がする」
「それはよかったわね。もう一発、殴ってあげようか?」
彼女の顔は笑っていたが目は笑っていなかった。
「すみません。ごめんなさい。もう忘れたので許して下さい」
そう言う少年に、少女はまだ何か言いたそうだったが、こちらの情けない表情見て、言葉を飲み込む。
「ま、取り敢えずは、目が覚めてよかったわ」
「あははは……本当に申し訳ありませんでした。」
笑った瞬間、目の前の彼女から、殺気の様なものを感じ、お礼も合わせて謝る。
「ところでここは?」
「え? 私の家だけど……」
「……よく自分の裸を見た、知らない男を家の中に入れましたね。こちらとしては、ありがたいですけど」
「うん。少し迷ったけど……なんか痙攣し始めちゃったし……」
「なんか知らない間に、生死を彷徨ってた!?」
「大げさよ。そんなのよくある事じゃん」
「初めてだよ! 痙攣すことなんて、僕の人生の中で!!」
なんとも危険な少女だった。
「ところでアナタは何者? 私の目の前に突然現れたみたいだけど」
「ああ……そういえば、あなたは僕が見えるんですよね?」
「?? ええ。当たり前でしょ」
そう。この少女と会ったと時、最初はその光景に驚いた、が、それ以上にこの少女は、死神が見えたのだ。
通常なら、人間に死神を見ることはできない。ましてや、触れることなんて以ての外なのだ。
それをこの少女は当たり前のようにやって見せた。
「うん? どうしたの?」
「いえ……」
この少女は普通じゃない。なら、何者?
「僕の名前は……」
だから、少年はこのとき決めたのである。
この少女が何者なのか見極めようと。
「僕の名前は、ディン。ディン・アズラールです」
「そう。私の名前は、キューレ・ネルガル。とりあえずよろしくね」
これが、死神見習いディンと少女キューレの出会いだった。
またも短め……次こそは長めに書いてみようかな。