第1話:決意
2060年、人類の宇宙開発技術は、20世紀と比べ飛躍的に向上し、国家レベルでの宇宙船ではなく、今では個人所有の宇宙船も珍しいものではなくなった。
次々と新しい惑星が発見され、太陽系外にも定期的に宇宙船が出るようになった。
また、宇宙を飛び回り新しい惑星を発見し、探査し、新しい資源や鉱脈を探し求めるスペースハンターも増えてきた。
世はまさに、大宇宙開拓時代を迎えている。
アメリカケネディ宇宙開発技術者養成学校。
4年間宇宙開発技術について学ぶ、世界で最もレベルの高い宇宙開発技術者養成学校である。
学生は、世界中から集まった有志5000人以上。
しかし、この中からWSAに入れるのは僅か100人にも満たない程度なのだ。
WSAというのは、アメリカのNASAを解散し、国連で新たに組織したワールドスペースアソシエーションという国際宇宙開発組織の略称である。
全ての宇宙開発技術者は、この機関に入り、宇宙開発の最前線で働くことに憧れている。
この機関に入れなかった者は、民間の旅客宇宙船会社や、宇宙船組みたて業者に入社する者がほとんどである。
22歳の勇治も、WSAの宇宙開発技術者を夢見て、日本からアメリカに留学してきた1人である。
そして、遂に今年が卒業の年。
ケネディ宇宙学校で成績優秀な勇治は、自信を持ってWSAの試験に臨んだ。
しかし、結果は不合格。
小さい頃から人一倍宇宙への想いが強かった男にとって、あまりにも辛い結果だった。
そのため、他の学生が次々と民間企業への就職を決めていく中にいても、全く就職活動さえ行える精神状態には無かった。
そして、精神状態が落ち着き、就職活動を始めようと養成学校の就職支援室に行ったときには、もうほとんど求人は無かった。
自分より遥かに成績の悪い生徒でさえ、ほぼ就職が決まっている。
残っているのは、宇宙船修理技術者くらいで、勇治が希望する宇宙船操縦士の仕事は、もう既に無い。
ハァー、っと溜め息をつきながら求人リストをめくっていると、「宇宙操縦士求む」の文字を見つけた。
目を大きく見開き、かじりつくようにその詳細を一気に目で追った。
企業名の欄には「アラン宇宙開拓社」の文字。
会社設立年月日の欄には、2061年1月1日と記されている。
今日は2061年2月20日、できたばかりの会社だ。
業務内容は……スペースハンティング。
このとき、勇治は新しい宇宙技術への貢献方法を見つけた。
「そうだ、スペースハンターになろう。スペースハンターなら、常に未知の世界である宇宙の最前線、しかも安全が保証されていない本当の未知の宇宙に出る事ができる。これだ、これしかない」
勇治は、アラン開拓社への入社を決意した。
そこで、勇治の想像を上回る大冒険が、彼を待っている事も知らずに……