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鎖に繋がれた英雄

 人魔大戦。

 それは50年に渡り、人類と魔族が争った、この世界の歴史で、最も重要な出来事である。

 個々の力で圧倒する魔族。それに対し、知恵と数で対抗する人類。

 永遠と拮抗し、お互いに疲弊し切り、限界を迎えても、決して“停戦”という道をとるわけにはいかなかった。

 しかし、ある日。日蝕が起こった。それは二つの惑星と太陽が重なる、数百年に一度の出来事。

 その日蝕にはある噂があった。

「日蝕の日に、魔族の心臓を異世界の人間に埋め込めば、ホムンクルスが誕生する」と。

 その日蝕の次の日、誰が生み出したのか、ホムンクルスの少年が発見される。

 そのホムンクルスが人類側についたことで、戦況は徐々に徐々に、人類側へと傾き始める。

 その後もホムンクルスによる快進撃は続き、とうとう、魔王ジャビスが討たれる。

 それにより魔族が降伏。人類の勝利という形で、幕は下ろされた。

 その後、人類を代表してある帝国の帝王によって、衝撃の内容が発表された。

『人類と魔族の共栄を目指す』と。

 これは体のいい属国を作るためである。

 戦争の規模の大小関係はなく、その勝敗のみが、その後の国や種族間の優劣を決める。

 たとえ、その世界で1番大きな大国の王様が、神様が「共栄共生を望む」と言おうとも、敗戦国の民が虐げられることは、目に見えるより明らかである。

 現に帝王はそれを見通して、これを発表した。

 無関税での輸出、低賃金の労働力、更には人間が魔族を下等な扱いをすることで、人間が人間にする犯罪は9割減った。不利益を被るのは全て魔族。


「オラぁ!死ねやゴミカス!」

 殴る。殴る。また殴る。

「ぅうう…ヤマ、やめ、やめテくだサイ」

 それに耐えかね、泣き出す。

「ブッハハァ!ダッセコイツ、しょんべん漏らしてるよ!きったねー」

「くたばれや!」

 今日も今日とて、帝都の暗い路地裏では複数人の人間が独りの魔族をリンチしている。

 これは路地裏であるから暴力が振るわれているのだ。表社会での扱いはもっと陰湿で酷いものだ。


「なぁ、この肉、不味いんだけど。テメェらの仲間の肉でも使ってるの?」

 オークが営む飲食店。そこでは時折人間が利用する。

「イエ、ちゃんト家畜用二飼育シタ牛ノ肉ですが…お口に合いませんでシタラ、申し訳ございまセン」

 厨房から、年老いたオークが申し訳なさそうに出てきて、謝罪をする。しかし、2人の人間は悪態をつき続ける。

「いや謝罪とかいらないからさぁ」

「不味かったから…このお代…タダでいいよね?」

 一口だけ残った皿を指でつつきながら言う。

「イヤ…ほぼ食べ終わっテますシ…その…お代は貰わなイ訳ニは…」

「あぁ?!なんだはっきり言えやゴラァ!」

「ヒッッ、イエ、お代ハ結構…です…」

「最初からそう言えや、下等生物が」そう言いながら店を出ていく。

 店の空気は、もはや食事ができるものではない。


 しかし、これら全てをおとなしく腹に溜めておけるほど、生き物という物は馬鹿ではない。我慢の限界は来る。


 ある晩、人間が1人で道を歩いていると。

「ゴンッ!」と背後から重いもので殴られた。

「グゥ…」とうめき声をあげる。ぼんやりとした視界で後ろを見ると、そこに立っているのはツノが生えた人型の集団だった。

「クゥ…テメェら(魔族)…」

「お前タチ人間が!父さんタチの命を奪って!それでいて僕たちノ生活も奪っタンだろ!」

「うるせぇ!お前らは戦争に負けたんだよ!」

「ッ!くっ…こォのー!」

 その手に握られた角材で頭を殴打する。何度も、何度も、何度も、骨が砕け、肉が砕かれても、その手は止まらない。

 終戦から約10年、世界は今まで以上に混沌を極め、腐敗していた。

 この事態に、人魔大戦を終わらせた英雄は今、どこにいるのか?


 帝都:ジクス。

 人魔大戦の終戦、そして共栄共生が宣言された、この世界で最も栄えている都市と言っても過言ではない。

 その地下の地下。誰も入らないような深く。そこには、大戦の戦争戦犯が収容されていた。

 魔族軍の幹部の生き残り、魔族側に寝返った物、ここはそれらを闇に葬るための地下の牢獄。

 そしてその奥。

 そこにはかつて、英雄と呼ばれたホムンクルスの青年が鎖に繋がれていた。

 ホムンクルスは禁忌の存在である。

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