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斜罪 【仮】
序章
何故なのだろう。
人生というものは、これほどまでに不平等なのだろうか。
かの福沢諭吉は「天は人の上に人を造らず」と説いた。ならば、この格差は何だ。
日が落ちるにつれ、私の罪は黒く、重くなっていく。
それは底なしの沼のように、私の足を取り、静かに深淵へと引きずり込んでいく。
これは、永遠の罪。
そして、償うことさえ許されない。
一
一週間、雨が降り続いている。
湿った空気は重く、気分を沈ませるには十分すぎた。私はコーヒーを淹れ、逃げ場のない溜息と一緒にベランダの外を眺める。
高速道路では大型トラックが激しい水飛沫を上げて走り去り、歩道では霞んだ色の傘が忙しなく交差していく。
世界はもう、始まっているようだ。
おもむろにリモコンへ手を伸ばすと、テレビの中では見覚えのない俳優が、耳障りなハイテンションで何かを叫んでいた。このキンキン響く声を聞いて、元気が湧いてくる人間が果たしているのだろうか。
私は冷めかけたコーヒーを飲み干し、淡々と支度を始めた。
白米と目玉焼きを吸い込むように食べると、壁にかけたままのスーツに、メッキが剥がれたひまわりのバッチをつける。
今日は午後から弁護の依頼が入っているのだ。




