智恵者オイディプス
怪物スフィンクス、交易路を結ぶある山にでるという怪物は通行者に謎をだす。そして謎が解けなかった者をスフィンクスは食べてしまうのだという。数々の勇気あるものが怪物に挑むのだが謎は解けず、そのことごとくが怪物の胃袋のなかにおさまることとなった。
自らの運命を試すことにしたオイディプスは怪物スフィンクスのなぞに挑む。
獣の胴体に人間の顔、異様なすがたをした怪物はオイディプスにたずねる。
「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これは何か」
思考をめぐらすオイディプス。朝、昼、夜、これは移り変わりを表している。
初め四本足、成長すれば二本足、終わるころには、三本足。まて、そもそもなぜ足がつく。そうか、足がつくものといえば「生き物」。答えは生き物、だが何の生き物なんだ。
「いつまで待たせる、とう数えるうちにこたえなければお前を食う。ひとーつ、ふたーつ・・・」
怪物が数える音がこだまする。あせるオイディプスはあたりを見渡すが目にうつるのは木だけである。頭をかかえたオイディプスの視線の端に、血のしみ付いた杖が映り込んだ。
誰にも告げず旅に出た。だからほんの少ししかもってこられなかった。その杖は故郷の祖父が使っていたもので、祖父の葬儀のさいにいっしょに墓に埋めるはずだったのだが、オイディプスが父に頼んで譲ってもらったものだった。父から直接あたえられた杖。二度と返れぬ故郷だが、親とのつながりを感じられるそれはどうしても手放せなかったのだ。
「答えは人間だ。人は生まれたときは四つ足で、成人すれば二つの足で歩き、老ずれば杖をつく。つまり三つ足だ」
謎を解かれたスフィンクスは暗やみへときえてゆく。
「自らの人生は自らで決める。そうか、やはり運命とは与えられるものではなく、己が独力で切り拓くものなのだ」
去り際、怪物が発した は木々をゆらす風の音でオイディプスには届かない。
「正解だ。だがなひとの子よ、お前にだけはもうひとつの答えが当てはまるのだ。のがれられぬさだめ、いずれたどりつく真実は、お前は呪い殺すだろう」