25.歓喜の魔王
地上界からのルートではなく魔界から哀愁の魔王の城へと向かい2日が経ちシン達は周りには何もない荒野にいた
この2日間、魔物や魔獣との戦闘が数回ほどあったがなんの問題なくシン達は今いる荒野まで進んでいた
「思ったより魔物や魔獣に出会ってないけど実際にこんなものなの?」
シンはもう少し魔物や魔獣と遭遇、戦闘になると予想していたのでこれぐらいの出現率なのかと聞いた
「いや、少ない方だぜ理由としたら俺があるからだ魔物や魔獣の中には魔力を感知することのできるものがいくつかいる、今俺は魔力を抑えていないからそれを感知した魔物や魔獣は俺を避けるようにするのもいるから通常より少し少なめだ勝てるようなのが来るとしてもできるだけシャルルを危ない目には合わせたくないからな」
そう言ってライアス隣にいるシャルルの頭を軽く二度叩いた
「と言っても、魔界のルートを提案したのは俺だけどな」
ライアスは少し軽い感じで言った
何もない荒野を進み1時間ほどが経つと左右に崖が見え始めてきた
「そろそろ哀愁の魔王の城に繋がる琉脈の地点に辿り着く」
「ようやく目的の場所か、問題なく進めて良かったよ、ん?」
シンが喋っていると立っている場所が揺れ始め地響きが起こった
「なに、地震でも起こってるのか」
地響きはだんだんと大きくなっていく
「いや、これは地震じゃないなみんな急いで崖に登るんだ」
「崖に登るってなんで?」
「この地響きはラッシュヌーの群れが原因だ、ラッシュヌーは1体だけだったら大した脅威にならない魔物だ、けど移動をする時は大量の群れとなって移動する、群れの仲間が倒されてもお構いなしに突進してくるから倒すのも追いつかないで轢かれちまう、だから群れに遭遇する前に群れの通れない崖の隙間か上に登るのが安全だ」
そうしてライアスはシャルルを抱え崖を上りシン達も後について崖を登った
そして地響きはさらに大きくなり崖を登ったシン達はラッシュヌーの群れが目に入ったその数は1万は超えているのはパッと見ただけでもわかり、数え切ることが出来ぬほどの大量のラッシュヌーが群れをなしていた
「確かにあの群れに巻き込まれたらただじゃ済まないね」
シンはあの群れに巻き込まれたらどうなるか想像するとひとたまりもないと思い少し鳥肌がたった
ラッシュヌーの群れがライアス達が登った崖の近くまで来るとシャルルが何かに気づいたようだ
「群れの先に、人がいる」
シャルルがそう言って群れの進む先を見ると男が群れの進行先に立っていた
「んっ?アイツは」
「大変だすぐに助けないと魔物にあの人が轢き殺される!」
シンが群れの先にいる人を助けに行こうとするとライアスがシンの肩を掴み止める
「待てアイツは大丈夫だ」
「離してライアス!大丈夫って!すぐそこまで群れが来てるんだよ早く助けないと!」
しかし、シンが助けに行こうとしたがもう遅く魔物の群れは男の目の前まで進んでおりそのすぐに男を巻き込んでしまった
「そんな…」
目の前で魔物の群れに巻き込まれた男を見てシンは落胆した、だが次の瞬間男を巻き込んだ箇所の魔物が上へと吹き飛んだ
ラッシュヌー達は群れの一部が吹き飛んでいるのなどお構いなしに進行を続ける、それと一緒に男がいた箇所は群れの進行と並行するようにラッシュヌーが吹き飛び続けている
しばらくの間それが続き10分ほどが経ちついに群れの最後尾が過ぎ去っていった
群れが過ぎ去るとそこに残ったのは吹き飛ばされ倒れた大量のラッシュヌーと群れの先にいた男が立っていた
「あの、群れに巻き込まれたのに無事だなんて」
シンが男の無事に唖然としている中ライアスがその男の方に向かって崖を降りていた
「よう!久しぶりだなルイーマス!」
「おや、キサマは虚実ではないか!」
二人の口ぶりからして知り合いだとわかりそして、ライアスに対してあの態度からおそらくあの男は魔王だとシンは思った
「おい、ライアスその人は誰なんだ?まさかその人は魔王なのか?」
「そうだともワレはキサマの言う通り魔王であるぞ」
ライアスが答える前にルイーマスと呼ばれた男がシンの問いかけに答えるとその後にライアスが付け加えって言った
「あぁ、こいつは歓喜の魔王ルイーマスだ」
遠くから見ていたから気づかなかったがその魔王は目の前で見るとかなり強靭な肉体をしておりそれは肩周りだけで通常の成人男性の太ももよりも大きく背も高く、食欲の城を出た後に出会った野良魔族に大柄の魔族がいたがそれとは比べ物にならない純粋な筋肉の鎧を纏っている魔王だった
「あなたは、群れの前で何をしてたんですか?」
「ワレはただ修行と食料調達にきたのじゃ」
単純な答えにシンは少し口を開いたままになっていた
「修行と食料調達ですか」
「そうだともラッシュヌーの群れを捌き、自分の体の動きを鍛えついでに食料ゲットと一石二鳥ダ」
「ラッシュヌーで修行なんてオマエくらいしか思いつかねーよ」
「ハッハハハ、確かにワレの配下を誘っても皆遠慮して付き合ってくれぬのじゃ」
ルイーマスは高笑いした後シン達を見るとニヤリとしアスヤの方を見た
「じゃが虚実と一緒におるキサマらも相当鍛えておるのだろう、特にオヌシ相当な手練とみた」
「試してみるか?」
「イキがええのー久々に楽しめそうじゃい」
「待った待った、確かにアスヤならお前の力についていけるだろうが、オマエ手加減ってもんをしねーだろ、アスヤもこいつとやるなら落ち着いたタイミングでだ、もうそろそろ哀愁の魔王の城に繋がる琉脈に着くからよ」
手合わせをしようとする二人をライアスが止めた
「なんじゃヌシら哀愁のところに行くんか、用があるならまた今度じゃな、いつかワレの城に来るがいいその時に是非とも手合わせをしようでわないか」
そう言ってルイーマスは倒れているラッシュヌーを積み重ねるとそれを持ち上げた
「では、ワレはこれで失礼するぞ、ヌシが城に来たときの手合わせ楽しみにしとるぞ、必ずワレの城訪れるのじゃぞ、クッハハハハ」
そしてルイーマスは荒野の奥へと倒したラッシュヌーを担ぎ上げながら消えていった
「ライアスとベーゼとも違った魔王だったね」
「ルイーマスも地上人と魔族の違いを気にしてねぇと言うか天族すらも同じ括りで見てる、アイツは強いやつに出会うのに喜びを感じてるんだ、強ければ誰でも興味を持つ、単純なやつだけど、アイツの城にいる魔族は強くないのが大半で、アイツが面倒を見てやってんだ」
ルイーマスが見えなくなった後シン達は目的の場所へと向かい始めた
そして荒野を抜け、木々の生えた場所まで来るとライアスは足を止めた。この場所が哀愁の魔王の城へと繋がる場所のようだ