11.忌み子
村に滞在することが決まった次の日の朝シン達は宿屋の食堂に朝ごはんを食べにきた
現在宿屋に泊まっている客は他にいないみたいで食堂にはシン達以外に客はいなかった
食堂についてしばらくすると、宿屋の主人が朝ごはんを持ってきてくれた
「あいよ!おまちどう!」
シン達は朝ごはんの量を見て驚愕した
宿屋の主人が持ってきた朝ごはんの量はそれは大量な量だった
山盛りの白米に卵を20は使っているだろう目玉焼きに、特大のボウルから溢れんばかりの量サラダそして味噌汁。
しかし味噌汁だけは通常の朝ごはんと大差ない量だった
「あのこれって朝ごはんですよね…」?
シンが自信なさげに聞く
「おうよ、お前ら魔界に行くんだろ急に滞在期間を1日延ばすってことは旅支度をしようとしたが必要なものが足りないってことで買おうとしたが今は切らしてて明日道具屋の仕入れ業者が来る、そんで今道具屋が切らしてんのは開門石だけだからな」
なぜ、自分たちが魔界に行くことを知っているのかと聞く前に宿屋の主人が理由を言っていた
「それとこの量のご飯がなんの関係があるんですか」
「ここら辺から魔界に行って倒れてら奴らの理由のほとんどが空腹だからな、ならここで泊まってる間にたらふく食ってもらおうって訳だ!」
「あぁー、そう言うことですか…」
それにしてもこの量は流石に多いと思うシン、だが出されたものは残さず食べると言う信念で朝ごはんを食べ始めた
なんとか朝ごはんを食べ切った一同は今日の予定について話し合っていた
「1日空いちゃった訳だど皆んなはどうする」
「俺はいつも通りの鍛錬をこなすだけだ、それ以外は特にないな」
「私はシンと一緒に行動する〜」
アスヤが自分の予定を言うとリーナが続けて言った
「俺はちょっと気になることがあるから村を見て周ってる」
「気になること、なんかあったのか?」
「ちょっと気になるガキがいてな、そういえば宿屋のおっさん、あんた忌み子って言われてる子がどんな奴か知ってたら教えてくれねーか」
ライアスが宿屋の主人に昨日会った忌み子と言われていた少女について聞いた
「あんた、あの子にあったのか」
「会ったって言っても、すぐに逃げられちったけど」
「そうか、この村はないったって普通の村だ、だが人から離れた力を異常なほどに嫌う傾向があるんだ、あんたたち規格外の人を見たことはあるか、規格外のような人の域をこえるものたちを恐れてるんだ、それは魔族や魔物も同じだ、昨日あんたが会ったあの子はその規格外なんだ、あの子は異常なほどに聴覚が優れてるそれこそ外にいたとしてもこの会話が聞こえるほどに」
ライアスは昨日の会話が聞こえたことに納得をした
「おっさんもあのガキを忌み子だって言って恐れてんのか」
「いや、俺は別にあの子を忌み子だと思ってなんかいないよ、だけど関わらないのが一番だな、それじゃあ俺は宿の仕事があるから」
宿屋の主人はそう言ってテーブルにのっている空いた皿を下げて食堂の奥へと入ていった
「ん?どーしたのシン少しパッとしないなって顔してるわよー」
「なんかあの人本当のことを言ってない気がするだよね、でも人を差別するような人にも思えないんだよ」
「シンの言う通りあのおっさん嘘ついてるぜ」
ライアスは虚実のちからにより宿屋の主人の嘘を感じ取ったようだ
朝食のあと各々は自分たちの予定通り別行動を取りライアスは村を見て周っていた
宿屋を出ると、宿屋の主人が洗濯物を干しており、その中には小さな女の子用の服もあった
宿屋を出てしばらくすると昨夜と同じように小さな視線を感じ、ライアスは物陰に隠れ少女はまたライアスにひかかった
「よう、またあったな」
「んっ!?」
「逃げんなよ気になってるからまた追ってきたんだろ」
逃げようとする少女をライアスが引き留める
「せっかくなんだ何か話そうぜ」
そう言ってライアスは少女を連れて村の外れにあるベンチに腰掛けた
「お前、名前は?」
「シャルル…」
「シャルルか俺はライアスだよろしくな」
「ライ…アス…」
「お前、忌み子って言われて村の人から恐れられてるんだろ、中には化け物だって言ってるやつもあるんだってな」
「うっ…」
ライアスがそう言うとシャルルは怯えたように俯いた。
「ならよ、俺も化け物になっちゃうな」
「えっ…?ライアス…も?」
「規格外じゃねーけど、俺は魔族なんだぜそれも魔族の頂点の一人魔王だったりするんだぜ」
「魔族…魔王…」
「そうだ魔王だ、お前は俺が怖いか化け物に見えるか?」
ライアスはシャルルに質問する
「見えない…ライアスは…普通の人」
「だろ、そう見えんだろ、お前だってどっからどう見たってただのガキだ、そうにしか見えない」
「違う…私は化け物…」
「じゃあ俺も化け物か?」
「ライアスは違う…」
「ならお前も違う、結局どう思うかってのは他人が決めるんだ自分のことを化け物だって考えてたら本当にそうなっちゃうぜ」
「私は…」
シャルルは沈黙した
「よっし、なんか話でもするか、俺が父親から生まれた時から一緒にいるゲーゴってやつがいんだけどこいつがまたすごい過保護でな普段はすごく紳士的なオヤジな見た目なのにちょっとした擦り傷とかで大騒ぎするやなんやでよ」
「過保護って何…?」
「あーうん、別の話にしよう」
ライアスは話すことを間違えたと思い、他の話をし出した
その後もライアスがシャルルに魔界のことや昔兄から聞いた地上界のことなどを色々と話、時折シャルルからも笑顔が出るようになった
「私…一回家に戻らないといけない…また夜も会える?」
「当たり前だ、じゃあ陽が沈む頃にまたここでな」
「うん」
そしてシャルルは家に戻っていき、ライアスも宿屋に戻ることにした
宿屋戻る途中村人たちの話し声が耳に入った
「そう言えば村から西の森の方でハインドウルフがナワバリをはってるらしいぜ」
「らしいな、噂になってるのを聞いたよ近寄らないようにしないとな」
(ハインドウルフって言ったら魔物のはずだけどそんなに焦ってないみたいだな)
魔物のハインドウルフが出たと言うのに平然としてる村人たちの話を聞いてライアスは不思議に思った
宿屋に戻るとシンとリーナが部屋にいたのでライアスが先ほどの村人たちの話しているの内容をシンとリーナに言った
「それは、人に与える危険性が少ない魔物だからだね、大開門石の扉から出てきたハインドウルフが地上界で繁殖してるんだけど、ハインドウルフたちは自分達の縄張りに入っても荒らしたりしなければ基本放置、そう言った危害をほとんど出さない魔物は討伐されないでそのままのことが多いんだ、流石にドラゴンとかは討伐隊が組まれるけど」
「でもハインドウルフって幼体に近づく奴は容赦ないんじゃないか」
「うん、だから基本的に縄張りに近寄らず放置する、そうすれば人間に危害はないからね、無駄に討伐隊を出して被害を出すより何もないのが一番」
「なるほどな、だからハインドウルフが出ても慌てないわけだ」
シンと話した後しばらくしてアスヤが戻ってきたので夕食を取ることにした
夕食も案の定、大量に用意されむしろ朝食よりも重い食べ物ばかりだ、山盛りのカレーライス、大きな皿が見えなくなるほどの大量の唐揚げ、そして朝食と同じように特大のボウルにサラダが出された
夕食も何とか食べ終わり、ライアスは陽が沈みかけているのでシャルルと向かうことにした
ライアスは宿屋を出る前に宿屋の主人に一つだけ質問をした
「そう言えばおっさんって小さい娘とかいんのか朝小さい子供用の服を干してただろ」
「いや、あれは前の客の忘れもんだよ、忘れたまま放置するのもアレだから洗濯しておいたんだ」
「あっ、忘れ物かてっきりむすめでもいんのかとおもったは」
宿屋に質問をした後ライアスはシャルルと約束をしていた場所まで行った
しかし陽が沈んでもシャルルは来なかった、ライアスはシャルルを探そうとした時主婦たちが話しているのを耳にした、話の内容から一人はシャルルの母親だと分かった