1.魔王、勇者のパーティに入る
「クックク、よくぞここまで来た勇者よお前たちに提案がある、俺をお前たちのパーティに入れてくれないか」
「はぁっ?」
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ようやくここまで辿り着いた、勇者の一人であるシンは魔王城の最深部の王の間の扉の前でそう思った。
「この先は魔王のある王の部屋だ何が起こるかわからない心して行こう」
シンは一緒にここまで来たパーティのメンバー幼馴染で魔術師のリーナと一緒に育った義理の兄のアスヤに言った。
そうしてシンたちは扉を開けるとそこは、数十人が入ってもまるで狭くは感じないであろう部屋の先ある玉座に堂々と座っている者とその両翼にはおそらくこの城の最高幹部であろう、威厳のある老人の見た目の魔族と、紳士のような姿勢正しい青年の姿の魔族がいた。
魔王の見た目は服装こそ自分達が着るような者とは違えどぱっと見は自分より上いや、アスヤより少し上くらいの年齢の青年というイメージだ、ただ違うのはその青年のような姿からは考えられない圧を感じる。
玉座に座る魔王と、その配下であろう二人の魔族の重圧に押しつぶされそうになりながらもシンは力を振り絞り口を開いた。
「虚実の魔王ライアス、お前たちに話があってここまで来た」
「クックク、よくぞここまで来た勇者よお前たちに提案がある、俺をお前たちのパーティに入れてくれないか」
「はっぁ?」
魔王が言った言葉は自分が予想していた言葉の中には何一つない言葉だったので頭が一瞬停止してしまった。
「パーティに入れてくれってなにをふざけたこと言ってるんだ!」
「ふざけてなんかないさ、俺はただお前たちのパーティに入れて欲しいだけさ」
「本当にそうなのかお前は虚実の魔王だろ嘘が生きているような者じゃないのか」
そう、相手は虚実の魔王だ、僕たちを騙して何か企んでいるに違いない。
「嘘なんかじゃないぜ俺はただ世界を見てみたいんだ、魔族たちの住む魔界だけじゃなく、地上人たちが住む地上界はどういうところなのか知りたいんだよ」
シンは、何故か魔王が言ったこの言葉に嘘はないと思った。しかし相手は虚実の魔王だそういうふうに嘘を思わせるのが魔王の持つ能力なのかもしれない。だが何故かシンは魔王を信じてもいいと思った。
「それにお前も話があるって言ってただろ別に俺と闘いに来たわけじゃないんだろ」
魔王の提案に呆気に取られていたせいでシンは、自分の目的のことを忘れていた。
「僕は、お前たち魔族のことを全く知らないだから魔族がどういう存在なのか知りたくここまで来た。それに他の魔王に挑んだ者たちと違ってお前のところは被害がないだからお前なら話ができるんじゃないかって」
そう、この魔王城では勇者たちの被害が何もないのだ、正確には魔王城まで辿り着いてもこの今いる部屋まで辿り着くことが出来ずに諦めて帰ってしまう、魔王城に辿り着く前までの道中で魔物での被害はあれど魔王城での被害はないのだ。
シンたちも、魔王城に辿り着くまでは道中の魔物との戦闘はあったものの魔王城についてからは不思議なくらいスムーズに進んだ、他の勇者たちが言っていたことがまるで嘘かのように。
「まさか、お前がここに辿り着くために何かしたのか」
「さて、何のことやら俺は別に『何もしてないけど』」
魔王の言葉は明らかに嘘とわかった、考えてみればこいつは虚実の魔王だ、他の勇者たちは嘘は言ってわいないただ見えていた道が嘘だったんだ、ここまで辿り着くみちを虚実で隠していたんだ。そして僕たちにはそれをしなかった。
「嘘つくな何もしてない訳ないだろでも、お前が本当に世界を知りたくて俺たちのパーティに入りたいってのは信じてやる」
魔王の言ったその言葉には嘘を感じなかった、本当はわざと「何もしていない」という嘘を見抜かせて信じさせようとしてるだけかもしれない、けどシンは信じてみようと思った。
「二人ともそれでいいか?」
「俺はシンがそう言うなら問題はない、それにもし裏切るようなことがあれば俺がこいつを潰すだけだ」
「私もシンが決めたことならなんだってオッケーだよ〜」
二人はそう言ってシンの決定を快く受け入れてくれた。
「1つ聞いておきたいお前は良い魔王なのか」
シンは魔王に聞いた。
「さあな、別に俺は自分を良い魔王だと思ったことはないでも別に悪い魔王と思ったこともない、そもそも人の良し悪しなんてのは他人が決めることで自分が決めることじゃない、決めるやつによって善にも悪にもなる、だから俺が言えるのは俺は普通の魔王だ、他の魔王達もそう考えてると思うぜ」
シンは魔王、ライアスの言葉を聞いて自分達が一番最初に目指した魔王城がここでよかったと思った。
「わかった、それじゃあ僕たちはお前を地上界の世界を見せて回る、お前は僕たちに他の魔王城を案内する、そういことなら、僕たちのパーティ入ることを許す。」
「おう、よろしくな!!」
そうしてここに勇者のパーティに魔王が入った。