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暖かい匂い

大都会とは掛け離れた作りをした街・レイデン。

明かりはぽつりぽつりと灯ってはいるが、栄えてるとは言い難い。馬車一台と、ギリギリ歩行者が一列で通れるぐらいのガタガタの道。その脇、左右には田畑が広がっている。

陸がイメージしていたのは、西洋風の建物だったがレイデンは、木造住宅が多い。一言で言い表すならド田舎(・・・)だろうか。

ただ、田舎だから悪いって事はない。虫の音は美しく、風が運ぶ空気は美味しい。とても心は落ち着く。


そんな事を思っていると、アイクの馬車が止まる。


「よし、着いた。リク達はちょっと待っててくれ」

「わ、分かりました」


目の前で眠るアルカナはとても気持ちよさそうだ。旅慣れをしていると言うか、警戒心がないと言うか。口をポカリとあけて口の端から涎を垂らしている。彼女を見ていると、不安に思っていたり警戒していた事自体がバカバカしいと思えるほどだ。


陸はホッと肩をなでおろし、アルカナの肩に優しく手を乗せる。


「アルカナ、アルカナ。着いたぞ、目的地だ」

「……むにゃむにゃ。ご飯ー」

「ああ、そうだ。ご飯もあるはずだ」

「本当に!?」


なんとも素晴らしい寝起き。


「えっと、ああ。多分」

「ご飯ーおっふろーご飯ーおっふろー」

「歌ってるところ悪いが、お風呂は言ってないぞ」

「えー!?お風呂ないのかなぁ」

「安心しな、ご飯も風呂もあるぞ」

「アイクさん、いつからそこに?」


アイクは、優しい雰囲気で答える。


「アルカナが、歌ってる辺りからだよ。ささ、荷馬車から降りなっ。メルディさんのご飯は絶品だぞ」

「うひゃあ!!早く行こう、リク!」

「お、おう」


見上げればボロ屋のイメージが強い建物だ。剥がれた外装。壁を這う根。

アイクが立て付けの悪い扉を開けると、さながらホラーゲームのワンシーンに出てきそうな音を鳴らした。扉の先では、一体どんな人が待っているのだろうか。


対人──所謂コミュ障が強い陸は、上手く話が出来るかどうか、拭いきれない不安を宿したまま陸はその先を一点に見つめる。


ゆっくりと開かれるドア。

隙間から射し込む淡い光が徐々に陸たちを照らし、同時に暖かい空気が包み込んだ。


「あら、いらっしゃい」


陸が初めに感じたのは懐かしさだった。優しい嗄れ声に、宿の匂い。さながら、ばあちゃんの家のようだ。


覚えていた緊張は少し吹き飛び、陸は軽く会釈をした。


「初めまして。陸です」

「ボクはアルカナ!」

「リク君にアルカナちゃんねっ。ささ、大したおもてなしは出来ないけど、座って待っててちょうだい」

「ありがとうございます」


陸とアルカナが椅子に座ると同時にアイクが口を開く。


「じゃあ、俺はこの辺で」

「おやおや。アイク坊もご飯を」

「いや。俺はまだやるべき事があるから」

「そうかい。それは、ざんねんだねぇ」

「すまない。で、リク。明日、此処に行ってみるといい。きっとお前達の力になってくれる筈だ」


そう言って、地図が書かれた紙をアイクは机の上に置いた。


「ありがとうございます。此処には何があるんですか?」

「──この街を治める領主・マルエルさん(・・)が住んでる場所だ」

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