国の闇・一端に触れて
詳しくはマルエルに聞くとして。それでも、無言でいる時間が惜しいと考える陸は、ウトウトとするアルカナを真正面に、会話を続けた。
「この地を治める王──とは、どんな人物なんですか?」
「グランバレル王か。端的に言えば、色んな意味で凄い方だよ」
「色んな意味?」
アイクは、数秒間黙ってから決心ついたかのように言った。
「大人数を救う為に少人数を切り捨てる事を簡単に出来てしまうんだよ」
憎悪と悲しみが宿った様な声音を聞いて、過去に何かがあったのだと悟る。が、これに関して陸が掘り下げる事は必要性がない。故に、アイクが言った内容だけに思考を向ける。
だが、ざっくりしすぎていてイメージができない。アイクが言いたいのは、王なら大小構わず民を救うものだ。とか、言いたいのだろうか。
「リクは、魔封石をしっているな?」
魔封石なんざ、知るはずがない。
「えっと……分かるよ」
此処は、後で調べるにして話を合わせておこう。
「ふむ。魔獣を倒しても極小量の魔封石を手に入れる事が出来る。──が」
なるほど。アルカナが倒してくれた魔獣が遺して行った魔石の事を魔封石と呼ぶのか。
「人と比べたら少ないんだ」
「え?魔封石って人からも出るの?」
てっきり魔獣のドロップアイテムかと思っていたが、違うらしい。だが、人間にもとなると。魔封石とは、一体──。
車輪の音が静寂を許さない中で、陸は一つ一つ。アイクが言った言葉を記憶する事に励む。
「……出るさ。魔獣だって、人が産み出した膿みたいなものだからな」
──膿。どういう事だろうか。
「寧ろ、人からの方が大量に得られる」
嫌な予感がした。まるでその発言は。アイクが覇気もない声で言ったそれは、得た事のあるような言いぶりだ。
「話を戻そう。この国から奴隷制度が無くならない理由の一つ。それは、彼等から魔封石を取り出す為だ」
「ま、まってくれ。魔封石を取りだした人間はどうなるんだ?」
魔獣は死んで、光の玉となった後に現れた。なら、人は。
「…………死ぬさ。苦しみと怨嗟を抱きながら、地位と言う名の運命に殺される」
「なんの為に魔封石を……殺してまで」
「……それは──もうすぐ着くぞ、あそこがレイデン。俺達の目的地だ」