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お祝いのお返事

わたしは目の前に届いた便箋を見ながら

頭を抱えていて

苛立ちも感じ

途方にも感じていた。


遡ること1週間前

新年の挨拶と共に近況を送る習慣があり


わたしの手元にも何通かそれらが届いていた。

その中に

学園時代の先輩からのものを見つけた。


「結婚しました。」


と先輩と奥さんの名前が書かれていた。

すぐに胸踊る気持ちと共に


「おめでとうございます。末長くお幸せに」


と送る。


先輩の幸せは2度目であった。


1度目の結婚後

2年たたぬうちに奥様の浮気

しかも

先輩主催の簡単なパーティーへわたしも呼ばれていたが

その日は

仕事関係の方の送別会があったため

わたしは先輩主催のパーティーを欠席し、送別会へ出席。


先輩主催のパーティーはわたしを含め何人かが欠席したため

早々にお開きになり


早めに帰宅した先輩が

奥様の事後浮気現場に遭遇した。


1年も経たぬうちに離婚し

先輩も心を病み

体調を崩した


先輩とご両親との関係に圧迫感を感じているようでもあったし

新しくご自分で事業をされるときには人間関係で悩んでいるようでもあったし


1度離婚をしている自分は再婚はできない

一人でこの先生きていくしかない。

と嘆いてもおられた。


幾度となく先輩の姿を目にした

幾度となく励まし

幾度となく声をかけたが


伝わっていないかもしれないと思うこともあったり

聞いてほしいだけなのかもしれない。

と感じることもあった


聞いてくれる人を求めているだけなのかもしれない。

わたしもお世話になったし。

という付き合いをしていた。


その後すぐに届いた先輩からの手紙は


「あなたも早く結婚をして、幸せな家庭を築いてください」


この返事に頭を抱えていた。


わたしは30代にもなる女性で

結婚相談を請け負う業者にも声をかけたが

いい縁にはつながらなかった。


つまり

結婚したいけどできない。

という状況であったし


結婚という言葉に

圧迫感も圧力もストレスも感じる状態でもあった。


この精神的に敏感になっている気持ちはわたしの問題であるのもわかっていた。


なので

少し時間を空けて冷静になれるように準備し

送る言葉に

何に抵抗を感じているのかを考えていた。


まず、「早く」結婚するように言われることはない。と思っていた。

これは先輩自身が「早く」結婚したかったから

先輩はそのままわたしの状態と同化しているのかもしれない。


先輩の一文も定型文だとして使っているのかもしれない。

わたしも、末長くお幸せに。は巷に溢れていて、良かれと思って使った定型文だけれど

末長くは先輩にとってストレスだったかもしれない。


知らないうちにわたしも傷つけることもあるし

人からわたしも許されている。


と感じて少し苛立ちが薄くなった。


わたしの定型文も人を傷つけた?


と別の不安が昇ったが、それは相手にしかわからないことだから。と置いて置くことにした。


大きく振りかぶって


自分の状況を主張するのか?


と思っても

主張して争うことで何を得るのか

考えても浮かばないからやめた。


『自分の心地よいと思う部分を選んだらどうでしょう』


ふわっと頭の中を通ったきがした


確かに

わたしにとって先輩は

わたしをわかってほしい相手でもないし

関わりをもつこともない相手である

気にする必要がない相手である


ただ、

先輩は先輩の中にあるわたしへ声をかけてくれて

先輩の中にはわたしの思い出があるのかもしれない。


わたしが心地よいと感じる部分を切り取り

お返しするのがいいのかもしれない。


手紙に向かい

一文だけ


「気にかけていただき、ありがとうございます。」


お読み頂き

ありがとうございます

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