―僕達一行はついにその入り江へと辿り着いた。
―僕達一行はついにその入り江へと辿り着いた。辺りはもう薄暗く寂しげで、あまつさえ肌を刺すような痛みが疲労に満ちた僕たちの身体を殺しにかかっていた。既に体調の悪いカロムの息は絶え絶えに、ここを乗り切れなければもうここで旅を終えてしまいそうな体力だった-
「入るぞ」
ルーサスがそう言った。彼を始めとして一同は、ここまでの旅の目的地を目の前にして一層気を引き締めていた。
13名の隊列が入り口を通り抜ける。2名は見張りとして自主的に入り口を見張ろうかと立候補したが、このような穴の入り口に人がいてはかえって目立つだろうという事で一緒に行動することとなった。
「ボッ」
ルーイー、ノル、サスヘムが火を灯した。先の見えない真っ暗闇をより見えやすくする為であり、それでいて辺りを一面照らすような力は中の標的を無闇に刺激するだろうとの配慮であった。
そう歩いてもいない距離ではあったが、背後で音がした。地がずれるような鈍くて重い音だ。
僕の後ろ、つまり一番後ろを歩いていたサスヘムがいち早く気付いた。
「出口・・・入り口が・・閉じられてる」
その声に後半の部隊は振り返る。先ほどまで若干の月明かりを後方から提供していたその光は全く見えなくなっていた。
「閉じ込められた」
僕が不安になりそう呟く。
「罠なのでは?」
「引き返すべきだ」
そういった言葉が次々と漏れる。相手に気付かれてしまったのは確かであり、何かしらの決断をしなければいけないのは自明だった。
まだ入り口に近いところにいる(この場合は出口という表現が正しいのか?)うちにふさがれた部分を破壊して一度出るべきなのか、或いはまだ見ぬ未知へと足を進ませるのか。一行はルーサスの判断を待った。
「進む」
その声に躊躇いはなかった。僕たちは再び見えない先へと進んでいく。幸い僕は後ろの方であったから、前で緊急事態が起こったとしても真っ先に被害を受けるわけではないだろうことが安心につながっていた。しかし逆に、後から何かがで待っていた時には・・・
なかなか前に進んだ実感がしなかった。まだまだ道は終わらず、先がどれほどあるか分からないことがストレスとなって皆の心にのしかかるようになっていった。