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寿間穂波が突き進む日常  作者: 水色十色
十姉妹失踪事件
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胸ドキの初捜査(一)

 穂波は、県警本部ともなれば、絵に描いたように質実剛健で、しかも上意下達を遵守しなければならない組織だから、さぞかし高圧的で融通の利かない頑固な、いわゆる「堅物」ばかりが勢揃いしているに違いないと思っていた。

 でも実際には、その予想が大きく外れているのだと五感で知ることができ、厄介事捜査室が、存分に腕を奮える職場であると実感した。

 しかしながら、感慨に浸っていてはいけないと気づき、顔を引き締め直した。それと同時に、ヤマネ刑事が呼び掛けてくる。


「スマホ刑事」

「は、はい!」

「あなたが、この厄介事捜査二係で携わる、最初の案件をお伝えしましょう」

「はい、お願いします!」


 穂波の顔に、よりいっそう、活き活きとした表情が戻ってきた。

 晴れて刑事となれたけれど、そんな自分の初仕事は、一体どのような任務だろうかと、胸も高鳴ってくるのだった。

 次の瞬間、穂波のスマホがメールの着信音を響かせる。


「情報をお送りしましたよ」

「了解です!」


 早速、到着したばかりのメールを確認する。件名は「十姉妹失踪事件」となっている。穂波は思わず口に出す。


「ええっ、十姉妹じゅうしまい失踪事件ですって! 十人の姉妹がいなくなったのですか!? あ、それとも十組の姉妹ですか??」

「それは、十姉妹じゅうしまつと読むのです」

「ジュウシマツ?? 小鳥のこと?」

「そうです」

「へえぇ~」


 穂波は、そんな読み方もあるのかと、驚かざるを得なかった。

 それと目の前にいるヤマネ刑事の表情とメガネのレンズが、まるで「火の点いていないストーブ」のように思える。


「済みませんです。自分はもっと、大いに勉強が必要であります!」

「いいえ、違いますよ」

「えっ、違うのですか??」

「このような難読漢字を読めなくても、なんら恥じる必要などありません。どのようなことであれ、知らないのなら調べるか教えて貰うかして、その場その場で理解できれば、それでよいことですから」

「ははあ、了解しました!」


 数秒前には冷たいと感じてしまった、ヤマネ刑事の表情とメガネのレンズが、まるで「火の点けられたストーブ」のように思えてくるのだった。

 兎も角、穂波はメールの本文を読むことにした。その内容は次の通り。


 鎌倉市に在住の大学生、二十歳の三家みけ寧子ねこさんが自宅で飼っている十姉妹じゅうしまつ、愛称「ピチチ」が、今日の午前十時前後に、忽然と姿を消した。

 午後一時過ぎ、寧子さんの曾祖母で同じ家に住んでいる三家みけ虎絵とらえさん、九十二歳が、この県警本部に行方不明者届を出すために訪れたという。

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